35.旅の終わりが見えてきましたが・・・
「申し訳ございませんが、シシリア様の現状を考えますと急ぎ王都に向かう必要がございます。また、シシリア様から何か礼をしたいと申し出がございまして、御同行をして頂きたい。何かとご不便とは存じますが、このままご同乗の上、王都までご一緒していただきます」
隣町に着き馬車を降りた後、そう宣言し、そっと頭を下げたのはレッドの従者の方だった。
えーっ!!だって、隣町に着いたら別行動だって思っていたのに・・・何でこんな事になったの!?
ジトッ・・・と今後を話し合っているガイと従者さん---断固として拒否してよ!!
「そんな、不便だなんて・・・、むしろ助かります。ありがとうございます」
とガイは、静かに頭をさげる。
なんて私の心の叫びは、綺麗にムシされ、にこやかに話が進み、王都まで同じ馬車で行動する事になってしまった。どうしてなの~!!
「なんで一緒に行く事にしたの!!このまま、さよならじゃ駄目だったの!!」
王子一行ととりあえず別れ、長旅に備えて買出しする事になり、ひと時の間ガイと二人になりました。
・・・正確には、妖精二人も居るのだが、姿を隠しての行動という事で彼らの事は空気として扱う事とします。
そんなこんなで、私の不満は爆発しています。
「そんなに居心地が悪かったか!?」
ニヤニヤしながらガイが聞いてくるが、居心地悪いに決まっている!って、分かっていていっているのがムカつく。
ギロッと睨みつけると、訳分からんな・・・?という顔をされた。
「乗り心地も、出される菓子も高級品ばかりだったと思うのだがな・・・お子様の不機嫌な理由がわからん」
「---そんなの、普通だし・・・興味ない」
馬車の揺れは、どちらかといえば乗り心地が悪いし・・・別にお菓子はいつも食べていたのと大差ない。・・・昔食べていたお菓子が食べたいよ~。イチゴ大福が出てきたら、泣いて喜ぶかも知れないけど・・・。
「・・・・・」
あれ??ガイが無言で、私をジッと見つめている??何かやらかしたか?
『ひめさま~・・・ガイが「貴族以外は、口に出来ない菓子ばかりだ!よく考えろ!!」って苛立っている』
あ~、口真似つきでありがとうございます・・・よく考えます。
そんなこんなで、買い物を済ませ、私達は集合場所に戻る事にした。
馬車で食べる自分が食べるお菓子と、水を持ち、ガイの服をしっかりと握りしめ、馬車の外で待つ従者さんの前に立った。
「もう、よろしいのですか?暫くしたらこちらも準備が終わりますので・・・」
そう言って、従者さんが馬車の扉を開け、私に中に入るように促した。
「----・・・出発までここにいる」
私は、掴んでいた袖を離し、ガイの腰にしがみつき、わき腹に顔を埋める。今のお題は、我がままは言わないけど、時間が来るまで傍に居て欲しい!!だ。
イヤイヤと首をフリフリしながら、声も出さずに縋りつく幼子を演出中だ。
ガイは・・・はぁ~・・・と溜息をつき、私の頭をグリグリと撫でる。---痛いからそっとお願いします。
演技が乗ってくると、瞳に涙が溜まるよね。感情移住しすぎて!!・・・断じてグリグリとされた頭が痛いわけではないよ。
「---ガイにぃ、ちょっとだけギュってして」
周りに聞こえるか、聞こえないかくらいの声のトーンで、少し顔を上に向け、そう訴えた。
そんなこんなの茶番劇を行い、私は再び馬車の中・・・。王都までは、立ち寄る街で休憩や食事を挟みながら、明日の昼には着く予定なのだとか。
・・・私とガイ、お嬢様で二日かけて移動する苦痛を考えたら、馬車に揺られながらの一晩なんてたいした事ないね。
自分の悲劇を嘆くお嬢様の愚痴は、ほんと・・・疲れます。
町で急遽護衛を増やし移動していく事になったのだが、・・・この護衛さんたち、旅人に似せた騎士さん達だよね。---ご苦労さまです。
馬車の中は、相変わらずの状況で、レッドとシシリア様の歓談しているのを、私はジッとして外の景色を眺めている。
時折、従者さんが私にお茶とお菓子を勧めてくれるので、おいしい~!!と大げさに喜び、いくつか頂いたお菓子の一つを広げた布の上に乗せてしまう。
「---?食べないのですか?」
「---だって、こんな美味しい物食べた事ない・・・ガイにぃにも食べさせたいから」
そう言って、私は大切な宝物を仕舞うようにお菓子を包む。
ジーッと、6つの瞳が私の手の中のお菓子に手中した・・・。ふふふっ、兄思いの幼子演出大成功ですか!!
「---後で沢山やる、お前の分は自分で食べろ」
レッドはそういうと、手元にある菓子を食べるように私に言う。
・・・レッドは悪い人じゃないんだね---ちょっと不器用なだけなのかも。・・・でも、フォードおにぃちゃまにした事は忘れてないから~ふふふふふっ。
さてさて、道中は順調で、一応シシリア様というご令嬢が乗っているので一気に王都を目指すといいながらも、緩やかに馬車を走らせて生きます。
馬車の中は、息が詰まるので、途中湖の傍を通れば、食事を行ったりし、しばしの休息をとった。ズーッと座りっぱなしはお尻が痛くなるし、私の精神安定を図るにもガイの傍でボーっとする事も必要だった。
---もちろん、お菓子は食べてって、渡したよ。みんなの前で。
3人の生暖かなまなざしがとても居心地が悪かったのか、大げさに喜んだ振りをして、私を抱き上げた。
「一緒に食べよう・・・」
まぁ、そんなこんなを繰り返し、ほのぼのとした馬車の旅が続いたのだが・・・そんな都合よく事が運ぶ訳がなかったのだ。
「---おーい!とまれ、止まってくれ!」
えーっ、この馬車を止める人って何者?!
後、数刻で馬車は王都につくという頃、・・・斜めに傾いた馬車とその傍で周りを警戒している者たちの集団に出くわした。
馬車の窓から外を覗く・・・---あれって、私を誘拐した犯人乗せた馬車だ。
まず、この馬車の護衛の人が話を聞き、その後従者さんに話通る。
「・・・申し訳ございませんが、暫くこちらでおまちください」
そう言って、馬車を降りていった。
---どうしよう。
『ひ~め~さ~ま~、落ち着いて。ガイが、大丈夫だって言っているよ』
---本当に大丈夫なのかなぁ。犯人さんにガイが顔を見られなければ、問題ないと思うけど・・・。
・・・嫌な予感は当たるものなのだ。




