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32.我儘お嬢様に出会ってしまいました

「遅いですわ!何故わたくしを早く助けないの!全くどういう事なのかしら!!」


 ガイにお姫様抱っこされ、川から救出されている最中のお嬢様は、やはりというか、予想通りというか、お決まりと言うのか、我儘なお嬢様だった。


 イヤイヤまだ、救出途中ですから。耳元でそんな大きな声出していたら煩くてたまらないよ。


 もちろんガイは、膝下まで水に浸かりながら、もの凄い作り笑顔を浮かべている---・・・あーなんていえばいいのかなぁ、素を知ってしまった私としては、胡散臭い事この上ない。


「---お怪我はございませんか?お嬢様をお助けできるとは、なんと幸運なのでしょう」


 なんだそりゃ・・・どこのゴマすりマンだよ。欠片も思ってないくせに。しかも話し方微妙。


 はぁ~・・・この後どうなるんだろう。


「ドレスが水に濡れなくようございました」


 ガイは、そおっとお嬢様を私の目の前に立たせ、静かに洋服を調える。お嬢様はさも当然かのように、ふぅ~と体と首をひねり、自分の姿を確認する。


「---で、迎えの馬車はどこなのかしら?」


 馬車??・・・ここでなんで馬車?馬車は入ってこられないでしょう?!これだけ木が生えているんだから無理でしょうよ!


「申し訳ありませんが、私達は歩いてここまでやってきましたので、馬車はございません」


 少し頭を下げガイはお嬢様に、告げた。


「わたくしに歩けというの?」


「申し訳ございませんが、次の町までは歩いていただきます」


 あ~、以外にハッキリ言ったね。すんなり歩きてくれれば良いんだけど。


「全く、準備がなってないわね。・・・で、あなた方は?」

「私達兄弟は、王都に住む親類を訪ねにいく最中です。幼い弟が歩き疲れたので道を外れ、川に足を休めに来たのですが、難儀されておられたお嬢様をお助け出来てようございました」


 ガイはそっと私の側により、私の頭を撫で回す。


 ---痛いよ~いつもより乱暴なんですけど。苛つきを、私の頭で表さなくていいから!


 私は、頭に置かれたガイの手から逃れる為に、ぺこりと頭を下げた。



「あら、わたくしを助けに来た者ではなかったのね。では、手助けできた事を、幸運に思いなさい」


 マジ、何処のお嬢様だよ。これはアレですか・・・リアルご令嬢?!って感じか?もう少し大きくなったら、悪役令嬢にレベルアップするのか?!って、思うフラグが、立っている気がします。王子の婚約者だったら、悪役令嬢フラグ確実に立っている気がします。


 言っとくけど、悪役令嬢は求めてないし、乙女ゲーム要素とかもいらないんだけどね~。


 なんだろうね?このお嬢様からは助けてもらった感謝の気持ちは感じないけど、手助けできた事を喜べ的な・・・何様?!イヤイヤ、いいトコのお嬢様なんだろうけどね。


 とりあえず、喉を潤す為に、水を受け取りお嬢様は一息つく。


 ガイが、何とか歩いて貰えるよう話をしているが難しそうなんだよね。私はランセイにお願いしてある物を作る事にした。とりあえず、必要な物は、直径10cmくらいの太さの枝と蔓か縄が欲しい・・・縄は確かガイが持っていたと思うのだけど・・・多分長さが足りないと思うので、蔓も出来るだけ集めてもらう。私は、コッソリ木の影に隠れて、ランセイが集めてきた材料を確認し、完成イメージをランセイに伝える。


 ・・・そうイメージは、某アニメのおじいさんが足の悪いお嬢様を背負って、山を登る時に使っていた背負子だ。座り心地は悪そうだけど、この際我慢してもらうとしよう。



 ガイとお嬢様がすったもんだしている間に、蔓と枝で背負子を作り、ガイの元に持っていった。

「・・・これで、お嬢様を背負っていくのはどうかな?」


 ガイは、ものすごく嫌な顔をお嬢様の後ろでしていたけど・・・最後はあきらめた顔をして荷物の中からロープを取り出して背負子を補強するようにくくり付け、背負えるように紐を取り付ける。


「・・・これに、わたくしに乗れというのですか?!」

 と汚い物をでも見るように私を一瞥するが・・・歩いて町で行く事と背負われて行く事を天秤にかけたようで・・・。


「折角用意してくださったのですもの、使って差し上げます」


 と、のたまった。


 ・・・貴方の為じゃないから!!ガイの為なんだからね!!






「ふ~・・・」

 森の中とはいえ、夏の日差しが容赦なく葉の隙間から差し込んでくるので容赦なく体力を奪っていく。強い日差しを恨めしく思いながら歩く事30分・・・そんなに奥じゃなかったけど、色々疲れたよ。


 ガイの背中に背負われたお嬢様は、のんびり景色を眺めながら、虫に騒いだり、喉が渇いたと言ったり、静かに歩けと言ってみたりと、注文が多いので、顔を見られないのをいい事にもの凄く眉間に皺を寄せながらもくもくと歩いている。


 そうそう、私もガイも一応名乗ったのだけど、お嬢様の名前は教えてもらえませんでした。なんでも、教えてもわたくしの名前を呼べる身分ではないだから知る必要はないそうです!


 ・・・マジ、もう一度川の真ん中に置いてきて、他の誰かに助ける役目をお願いしたい。


 道すがら、なんであんな所に?って、聞いてみたよ、私が!

お子様は思ったことを口にしてもいいんだよ~罪はない、興味本位だから、疑問に思ったことは聞いてもいいんだよ~。



 返答拒否でした。まぁ、答えてくれないと思ってはいたけどね。多分私と同じように誘拐されて連れ去られて来たんじゃないかと想像がつくけど、一応ね。でもさぁ、あんな所に放置されるなんて・・・余程イライラしたんじゃないかなぁ、誘拐犯。



 そんな、不機嫌マックスな二人と空気の読めない我儘お嬢様の一行は、街道・・・私達が馬車から降りた場所に戻ってきました。そして、次の町に向かって歩き始め、そろそろ休憩したいなぁ~と思い始めた頃、後ろから馬車の音が聞こえた。


「---!!あら!!まあぁ~!!」


 後ろを常に向き、高いところから後方を見ていたお嬢様が、歓喜の声を上げた!!・・・なんだろう、歓喜というか、アイドルに出会ってしまったファン!!と言った歓声のような声だった。---アイドル?!


 お嬢様は、イソイソとガイの背中から降り、身なりを整え始めた。


 そんな疑問は、直ぐに解けた・・・。私達の真横に停車した馬車の中からゆっくりと金髪の少年が出てきた。


 イヤ~!と叫び声をあげなかった私を褒めて欲しいものだ。思わず、斜め下に視線を落とし、見てみぬ振りをしてしまいたかったのだが、それは無理というものだ。なんでこんな所に・・・。


「---こんなところでめぐり合うなんて!わたくしたちは、赤い糸で結ばれているのですね!!」


 と言って、馬車から降りてきた金髪の男の子に駆け寄り、寄り添った。


 ・・・私は、そんなものが見えたら、ハサミでちょん切っちゃうけどね。


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