29.いろいろ忘れていました
「---ねぇ、今更なんだけど、ガイは私のお家の場所知っているの??私名前名乗ってないよね???」
はっ!何を今更?!って、呆れ返った様な顔で見ないでよ。
ガイ達の名前を聞いたのに、名乗って無かったよ。・・・聞いてくれたらいいのに。
「私の名前は・・・キャ「アキラだろ?」---でも・・・」
「今は、アキラでいいんじゃないか?」
「---うん、わかった。私の妖精はランセイって言うのよ。よろしくお願いします。・・・で?お家の場所知っている?家名は---あれ?私自分の家の名前知らないよ!!」
わお!すごい事、気が付いた!どうしよう!どうするの?・・・、私ってなんてうっかり屋さんなの!
うわ~と、一人パニックになっていりと、ため息とともにガシッと頭を、押さえつけられた。
「いいから落ち着け・・・」
急にオロオロし始めた私の頭をガシッと掴み上を向かせ、ガイはジッと私を見つめた。
深い海の青色をした瞳が、私を静か見下ろす。
---そうだ、私はどんな事をしてでも家に戻ると決めたのだ。
「まだ、王都にも入ってないんだぞ。そんな先の事は、後から考えるんだな」
まあ、そりゃそうなんだけどね。
私の気持ちが、前向きになったのを感じたのか、ガイはニヤリと口元を意地悪そうに上げた。
「・・・お前は、馬鹿なのか、賢いのかわからんな」
なんですと!全く聞き捨てなりません!
「何度も言っているけど、わたし4歳ですから!十分賢いと思うよ!」
プンプンだよ!
でも、覗き込まれた---ガイの色の深い青は、黒い瞳の持ち主を不意に思い出させた。
あ~ぁ、お兄ちゃま・・・みんな心配しているだろうなぁ。早く会いたいなぁ。
「---ねぇ、ガイ。ちょっとだけ寂しくなった。甘えさせて」
と言うが早いか、ガイの胸にしがみついた。
「俺は子守をするつもりはないぞ!」
と言っていたけど、今だけだからガマンして。
「---そうだな・・・家に無事に帰ったら、報酬として名前を教えてくれればいいさっ」
と、私の頭を抱え込みながら、ガイはボソッとつぶやいた。
なに?いまの---ツンとデレなの!?
時は少し遡ること・・・3日。
「ガッ!バタン!」
と、ぶつかる様にドアノブを手に取り、物凄い音を立てて扉が開いた。---この部屋には似つかわしくない音だ。
この部屋で仕事をしているのがこの屋敷の主人だと知っていてもノックも入室の許可を得る事も忘れて飛び込んできたのだ。
其れ程に、この男・・・執事の行動は緊急時なのだと、体全体で現していた。
この部屋にいた3人の目が、一斉に執事へと向けられる。
「どうしたのだ・・・」
いまだかつてない程に、屋敷の中を息を切らせて駆け込んできた執事の様子に、この部屋の主人である男が静かに声をかける。
「---お嬢様が連れ去られました」
緊急を要する自体に、早く報告をしなければと焦り、溜め込んでいた息と共に言葉を発した。
「「「---ーー・・・何を」」」
誰が言ったのかはわからないが、停止した思考が動き出し。報告された言葉が頭の中をめぐり、理解するまでに数秒の時間が、過ぎたように感じられた。
「---待ちなさい」
停止した思考が、動き出したと同日に部屋を飛び出そうとした僕の腕を掴んだのは、父であるこの屋敷で侍従をしているギルベルトだった。
「---・・・離して下さい!僕は」
「どこへ行くと言うのだ!」
と言い終わるのを待たずに言葉を遮るように咎められた。
そう、父の言う通りなのだ、だがこの持て余した激情は行き場を失った。
「くそ!なんで」
と吐き出された言葉と共に、掴まれていた腕を振り払い、壁に叩きつけた。
ジンジンと叩きつけた腕が痺れたが、今は全く気にならず、むしろこの行き場のない焦りを押さえつけられるのならば・・・と、もう一度壁に拳を叩きつけた。
「---ガッ!」
「---先ずは現状の報告を」
肘を机の上に乗せ、組んだ両手の上に額を載せたこの部屋の主人の声が低く静かな声発せられた。
シーンと、静まりかえった執務室に飛び込んできた執事の声だけが音を発する。
「馬車寄せに、お嬢様がお一人でおいでになられまして、家令の者がお声をお掛けしお庭にお連れしようとしたところ、一台の馬車に乗せられてしまったそうなのです」
「どこの家の馬車だ」
「それが・・・家紋が隠されておりまして、走り去る際に確認できませんでした。---申し訳ございません」
なっ!・・・何故そんな場所に。
馬車寄せでは、当家を訪れる者たちの身元を確認し、他家の馬車や侍従たちを待たせて置く場所である。警戒対象者が多数集まる場に
お嬢様お一人で向かわれるなど・・・誰一人気がつかなかったのか!
そんな疑問が、皆の頭に浮かんだが、直ぐに解消される。
「お嬢様は、本日奥様がお招き致しましたお子様方と鬼ごっこなる遊びをしておりました。・・・それで馬車待ちに迷い込んでしまわれたのではないかと、思われます」
「・・・・・なぜ、そんな事が、、」
と旦那様のボソリと漏らした一言だったのだが、僕に視線を向け、深いため息を吐く。
「そうか・・・」
と、納得されてしまった。
僕は何かしただろう?だが・・・今はそんな事を考えている場合じゃない。
「それで足取りはわかっているのか?」
「いえ・・・、それが屋敷の者が後を追ったのですか、見失ってしまいました」
「至急、王都の門のへ向かい出て行く者を確認しろ・・・ただし、騎士達には気付かれるな。キャロラインを発見した時のみ協力を依頼しろ」
報告に来た侍従は、飛び出すように部屋を、出て行った。
「ギルフォードは、---客が帰ったら妻に此方に来るよう伝えておくれ」
そう、旦那様は言うとガックリと項垂れ呟いた。
「---あれは一見賢いようだが・・・危機感が全くもって感じられてないのか・・・。今更なのだが、なぜギルフォードを側に置いておかなかったのか、悔やまれるな」
と長く息を吐き出した。
---夕刻、王都の門が閉じたが、怪しい馬車は通らなかった、と報告が上がってきた。
だがその後、キャロライン様付きのメイドと懇意にしていると言う町の警邏隊所属の騎士が当家を訪れた。
・・・此方のお嬢様の髪の色は銀色だったと思うのだが、お付きのメイドの姿が無かった---と、懇意にいているメイドを訪ねて来たのだ。
門の警備をしていて銀髪の幼子を見る事はこれまで無かったのだが---今日、銀髪の幼子を連れた馬車が門を通った、メイドも連れず、侍従風の男と厳つい傭兵の様な男が乗る馬車の中に居たのだと。こちらのお嬢様ではないのだろうか?何事も無ければ良いのだが、気になったので---と。
この馬車は不審な所はなく、子供はただ隣の侍従に寄り添っていただけで特に無理やりという感じではなかった。・・・---なので門番は通常通りの馬車の確認をし、通過して行ったと・・・。
旦那様は、至急馬車を追いかけるように当家で雇っている護衛数名に馬車を追いかけるように指示を出し・・・執務室にて、ただ報告を待つ・・・眠れる夜が過ぎて4日となっていた。
「---旦那様!これが・・・お嬢様を追いかけた者達が!!」
差し出されたのは・・・お嬢様の着ていたドレスと・・・綺麗に束ねられた---銀色の髪。
「---これを売った者達は捕らえたのか!!キャロラインはどうしたのだ!」
ワナワナと肩を震わせ旦那様が立ち上がった。
---そうだ!まだ、何も終わっていない・・・!!お嬢様の姿を確認するまでは、探すのだから。
ちょうどその頃、そんな事になっているとはつゆ知らず・・・というか、そんな決意をされていたなんて。
私は何をしていたかと言うと、ギルドでお手紙配達の依頼を受けた後、街道沿いを歩いておりました。
「ねえ、お家にお手紙配達頼めば、みんな安心するよね?」
「・・・で、お前のうちの家名わかったのか?」
「あっ---」
バァカと横目でみられた。そんなやり取りを、しながら王都を目指し歩いていた。
王都から一番遠くの街なので王都行きの乗り合い馬車は満席で、歩いても半日あれば隣の町のまでは行けるから歩く事になりました。
---だから、私は幼児なんですよ・・・ね。
ただひたすら歩くのは無理、体力も無理なんだけど、黙っているのも無理---だから、まあファンダジーだからのね!いろいろな事をしたいよね~ふふふ。
「では、やってみて!安心して、上手くいかなくても受け止めるから大丈夫だよ」
私は、ガイの頭の上に乗っているランセイに声をかけた。
私のイメージをランセイに伝えて作ってもらったムササビスーツもどきである。ただの長方形の布に手・足・腰に取り付けられる様にして、風圧で外れない様に工夫してある。
妖精作成の品なのだから強度・縫製には問題ないはずである!
ランセイは、このムササビスーツを着て試験飛行を行うのだ!ガイの頭の上からね~。
下から吹き上げる風は、リーンが担当します。これは成功するのではないかと!是非成功のあかつきには、ガイのムササビスーツを作成してみたい。これは風を扱う妖精と契約したガイならではの技だよね~!だって、風を操ってくれるんだから、方向転換も思いのままなのだ。
出来たら私も飛んでみたい・・・家に帰る前に出来たらいいなぁ~。
さぁ、ランセイがんばれ~。忍者みたいに飛ぶのだ!
私の一人高いテンションを呆れた顔をして見ているガイ・・・。
いいじゃん、他の人には見えないんでしょ?今はテクテク歩いて移動中なのだか大丈夫。
おっと忘れていた。人目がない所で、棘のムチも練習したほうがいいのかな。
なんだ、やる事盛りだくさんだね~。




