26.敵?見方?ただの興味本位なのですね・・・
地下倉庫に向かって降りてくる足音・・・誰だろう。お迎えならいいなぁ・・・なんて、お気楽な事をちょっとは考えたけど、そんな事あるわけない。足音一つなんてありえないもん。
「ギギッ・・・」と扉を開けたのは、やっぱりCだった。手には布?をもっていた。
「---ごめんね。心細かっただろう・・・」
そう言って、身をかがめて私に視線を合わせ、布?を差し出した。
差し出された布?を受け取る事にした。・・・だって下着姿じゃあ外に出られない。そう思って渡された布を広げると・・・ただの布ではなく、とっても質素でかなり使い込んである洋服だった。しかもズボン。
---これは男の子用ですね。
そうですよ・・・私の今の髪はベリーショートヘア。ワンピース着るのはちょっと・・・似合わないかも。
女の子で、この髪型の子供はまずいないのに、ワンピースを着るとかなり目立つ。Cとしては当然の選択だと思う。
私は、渡された洋服をギュッと引き寄せ、心を込めてCに告げた。
「・・・洋服をありがとう。それと・・・戻ってきてくれて」
うまく笑えていただろうか・・・絶対に弱いところは見せたくない!
---・・・でも、私の気持ちとは裏腹に、ポロリと雫が目から零れ落ちた。
「---泣かないでおくれ」
Cは、そう告げると私を抱きしめた。
-----・・・やっぱり。心音は、いつも変わらない。馬車で一緒に移動した時も、さっきBに投げられ抱きとめられた時も、・・・そして今も。・・・この人は何なんだろう。
AもBとも仲間じゃない雰囲気だったし、人手が足りかかったと言っていたから、Cは何をやるか知らずにこんな誘拐とかするのは嫌なのに手伝わされているんだと思っていた。・・・でも、なんだか違う。だっていつも同じ心音って---。状況によって少しは早くなったりするよね。
「---ありがとう。でも大丈夫です」
Cの胸の音を聞いてから、そっと身を起こす。---もう、涙は出ない。このまま縋る事の出来ない相手なのだから。
先ずはどんな人なのか判断しないとね。
「他の人達はどうしたのですか?」
AとBは何処に行ったのか・・・Cはなぜ戻ってきたのだろう。
「・・・あぁ、あの二人は君の服と髪を売りに行って、どこかに他の街に逃げるらしいよ」
---それで、あなたはどうして戻ってきたのですか?
私は、そう問いかけたかったのだが・・・違う言葉を選ぶ。
「---お家に帰りたい・・・です。---助けてください」
そう、私の頼りは貴方だけなのだと・・・心に訴えかけるのだ。
「・・・俺は、何も出来ない臆病者なんだ・・・だから---」
「でも---・・・貴方は、ともて強い方ですよね。あの二人よりも腕が立つはずです・・・違いますか?」
私は、ジッとCの瞳を覗き込む・・・目を逸らす事はしない。
「---何故そう思うんだい?」
ちょっと口元がつりあがり、瞳の奥が深く濃くなった気がした。
・・・あっ、なんか捕獲された気分。精一杯の虚勢を張るのだ・・・と思っている時点で負けているよね。うん、体力的にも色々負けているから、負けを認めるしかないのかな。
「貴方は・・・馬車の中でも、先程投げ飛ばされて受け止めてくれた時も、少しも心音が乱れてなかったのです。普通の人は、不意の出来事や不安になったりすると、心音が乱れたり、早くなったりするものではないですか?」
そっと、Cの腕から逃れ、後ろを向き、心を整え、私は何事も無かったように振り返りながらCに告げた。
「----っつくっ。はははははっ!お嬢さんは、思ったより気が強くてしっかりしている。---でも、一番興味があるのは、お前じゃない!・・・そこにいる妖精にだ」
Cが指を差した場所に、ランセイが居た。
??・・・ランセイは妖精なのか?---他に見える人が居るなんて!!
「エ---!!見えるんですか!?本当になんで!どうして!!」
一度離れたのに、詰め寄ってしまった・・・。
でも仕方ないよね!だって、ランセイ見える人に初めて会ったのだよ!ここは一つお話を聞かなければ!!
「紹介しておこう、こいつに一番興味があるのは---・・・」
と、Cが口を開くと、フワリと私の目の前にクルクルと舞い降りてきた少女---いた。
Cは・・・ガイという名前らしい。そして少女は風の妖精リーン・・・やっぱり見た目小人。という事は・・・ランセイって妖精なんだね~。石の妖精?水晶の妖精?鋼の妖精?やっぱり謎ですね。
ガイの話によると妖精というのは、その人のもって生まれた素質と触れ合った自然の物もしくは精霊とが共鳴して生まれる存在なんだって。
だから、素質を持っていても共鳴する精霊と出会わなければ妖精は生まれない、との事です。
・・・そして妖精はその共鳴した人に名前をつけてもらわないと、精霊に逆戻り・・・もともと精霊じゃない物から妖精になった場合は、消滅してしまうらしいです。
・・・ランセイはどうだったんだろう?何も知らないって事は、消滅するところだったって事?!---そりゃあせるわ。
妖精は、元々の属性と名前をつけるとつけた人の能力やイメージによって形成され、個々の能力に変化が起きる。そして、妖精とつながりのある者は他の妖精を見る事が出来るらしい。
あ~・・・なるほど。ちょっと納得。
「---でも、ガイのリーンを私、今始めて見えたんだよ?ずっと側に居たんだよね?」
「---あのなぁ・・・姿を見せないようにするとか、姿を消すとか意識したら出来るもんじゃないのか?・・・妖精だしな」
と呆れられた。
そうか?そんなものか?誰にも見えてないみたいだから、そんな事意識して無かったよ。
妖精と契約を結んだ事は、同じ様に妖精と契約した者以外の人に知られないようにだって。
「変なのに狙われて、相手に脅かされて使われるなんて嫌だろう?妖精使いは自分が妖精使いだとは言わないんだよ。だから普通は、妖精使いに、会っても何も接触しないし、互いにわからないままなのだがな・・・。たまにお前みたいなのがいるのは例外だ!」
と、また悪い笑みを浮かべて言われた。
だからなのか?!職業に妖精使いってのがない理由は!?
「俺もたまたま出会った妖精使いにいろいろ指導してもらったからな。・・・今度は俺の番だと思った」
でも、私も契約したばかりの、妖精使いに出会ったら、手を差し伸べないとね。まあ、ガイが今一緒にいてくれているのだから、結果オーライという事で。
最初の印象は優男だったのに、今はちょっとワイルドなお兄ちゃんになっております。25歳くらいの印象が、今では20歳くらいかな?多分これが素なんだろうね。
うん、今のほうがいいなぁ・・・話し易いし。
リーンが、たまたま誘拐された私と一緒にランセイが居たのを見て、興味を持ったんだってさっ!!リーンがランセイ見つけてくれなかったら、私もっと大変な事になっていた?
あれ?そうなると、ランセイがいなかったらこのままポイされていたって事?・・・ちょっとドキドキしながらガイに聞いてみる。
すると、睨みつけられたが、フイッと視線を逸らされた。---マジですか。
「言っておくが!街の騎士団に通報して終わりにするつもりだったんだがな・・・予定が狂った」
---えっと、ちょっと待って。それって私としては困る展開ではないか?!・・・だって、誘拐されたってだけで私の、強いては家の汚名なのだ。ここはコッソリと何事もなく帰らなければならないのではないのか!?
急に黙りこんだ私の顔をガイが覗きこんできたので、今思った事をそのまま告げたら呆れたように言われた。
「そりゃそうだろう・・・元々この誘拐は、王子の婚約者第一候補の誘拐を目的としているが、候補になりそうな令嬢であれば報酬がでる約束になっている。---そして、そのまま一晩経ってから開放する。つまり、誘拐されたという事実でその家に汚名を着せて、その令嬢が誘拐先で何かされたのではないか?と周囲の貴族に思わせ、噂させる事が目的なんだよ。まぁ、俺に言わせれば---誘拐だけして、危ない橋を渡ることをしなくて済む簡単な仕事なんだよ」
---なるほど、おっしゃるとおりですが、腹が立ちます!!
「---で、ガイは誘拐とかする卑劣で卑怯な仕事をする人だという事ですか!!」
と・・・思わず食って掛かってしまったが、反対に怒鳴り返されてしまった。
「---はぁ?・・・何言っていんだ!たまたま顔だけ知っている奴に馬車に乗せられたらこんな事に巻き込まれたんだ!!---お前は俺の不運に感謝しろ!!」
---という事は、私は運が良いという事ですか?誘拐されたのに??・・・誘拐犯にガイが居た事は幸運だって事?う~ん、それはこれからオイオイ考えさせてもらいます。
でもガイとの出会いは幸運だったらいいなぁ。
「今は・・・---お前にも興味が沸いた、俺がな---」
ニヤリと、口元をゆがめ捕獲対象を見つけた獣のにギラリと瞳が光ったような気がした。
---なにそれ?今の言葉は聞こえなかった事にしたい。ヒクッと頬が引きつった。・・・ガイとの出会いは幸運だったのかな?!




