75話:狂った聖女と蒼き少女
狂った聖女のお話。
「貴方、マリアさんよね?」
突如かけられた声に、マリアは、驚き、声を上げた。
「きゃっ」
それはそうだろう。自分の部屋に入ってきたら、突如暗い部屋の中から声をかけられたのだから。ドアの鍵は掛かっていたし、窓の鍵も掛けていたはずだ。
「慌てなくてもいいわ。私の名前は、蒼刃聖」
聖と名乗る少女は、笑う。鮮やかに淡く発光しだす蒼い髪にマリアは、目を惹かれていた。
「緋奏の娘さんである貴方に話があってきたわ」
母の名前を呼び捨てにするこの少女は、いったいどこの誰だろう、と疑問に思うマリア。
「気にしないでいいわ。緋奏とは、数十年、下手したら数百年来の友だもの」
少女にしか見えないのに、彼女は何を言っているのだろう、と思う反面、嘘をついているようには見えない、とも思った。
「あの、聖、さん。私になに用ですか?」
「ふふっ、私は、今回、貴方に重要なことを知らせに来たのだけど、一つ、その前にいいかしら」
首を傾げるマリア。
「なんでしょう?」
「貴方、雨月謳のことが、好き?」
その言葉に、思わず噴出しそうになったマリア。いや、何かを口に含んでいたら、確実に噴出していただろう。
「なっ、ななっ、何で、それをっ!」
その反応が如実に物語る通り、彼女、狂ヶ夜マリアは、雨月謳と言う少年に好意を抱いている。それは、一目ぼれに始まり、教室で、彼を視線で追ってしまうほどの好意。だが、
「でも、謳さんの周りには、綺麗な人がたくさん居ますし」
「ああ、気にしないほうがいいわよ。と言うか、たぶん、一番貴方がタイプだと思うわよ。お似合いだし。それにね、周りにいくら美少女美女がウヨウヨしていても、アッタクしないと気づかない、朴念仁って割といるのよね~」
何か、思い出すように遠くを見る聖。
「聖さんの好きな人もそうだったんですか?」
その問いに、笑う。
「私は、いないの。好きな人が。でも、大事な人はいたわ。お兄ちゃんや白羅、雷璃、黒霞……。皆、大事な人だった。特にお兄ちゃんは」
何か思い雰囲気になった、それをマリアが吹き飛ばす。
「で、では、お兄さんが、朴念仁だったのですか?」
「ええ。まあ。五、六人の女が好意を寄せているのに、まったく気づかな……、いえ、気づいていても放置するのよ」
意味が分からなかったマリア。
「なぜ、放置をするのですか?」
「さあ。お兄ちゃんは、無駄に頭の回転がよかったから、好意を寄せられていることには気づいていたはずだけど。たぶん、関係を崩したくなかったんだと思うわ。ああ、あと、皆巨乳だったのと」
最後のは関係あるのだろうか、と思うマリア。
「お兄ちゃんは、貧乳派だから。ロリコンでなくて、貧乳派よ!重要だから、ここ」
どうでもいいなぁ~と、マリアは、溜息をつく。
「それで、重要なこととは?」




