73話:未完成な歯車
Scene爛
お爺様の遺品。急にそんなことを言われても困るわけで、遺品整理には、形だけの出席となりました。
「それにしても、随分と骨董品が多いですね」
私の言葉に、いろんな人が口を揃えて、
「まあ、あの人、古いものが好きでしたから」
何て言うあたり、本当に骨董品が好きだったのだろう。
壷、皿、掛け軸、そして、穴だらけの箱。
「箱?それにしては、何かがはまりそうな形ですし……」
それにしてもこの形は、
「球体?」
そう、何か、丸いものが収まりそうな形です。そして、この辺りに複数の球状のものが転がっているので、
「赤いのと、茶色いのと、白いのと、紫のと、」
穴は五つ。球は四つ。一つ、足りない?
「ああ、それですか?それは、旦那様が、どうしても『空』だけは集まらなかったとおっしゃっていました。何でも欠片だとかで、『火』『土』『氷』そして、『始まり』。その欠片は集まったが、後は、『空』が足りない。『空』さえあれば、歯車は出来上がるのに、と」
「歯車。まさか……」
私は、未完成の歯車を持って謳くんのもとに向かいながら連絡を入れます。
「もしもし、謳くんですか?突然で申し訳ないのですが、『空の欠片』と言うものを知りませんか?」
「【空の欠片】?って、あの【空の欠片】か?でも何で?」
私は大雑把に、謳くんに、説明します。
「今、歯車と呼ばれるものを未完成の状態ですが見つけました。これを完成させるには、『空の欠片』が必要なのです」
「分かった。俺が刃奈に連絡して、【空の欠片】を持っていく」
刃奈さんと言う方が持っているのでしょう。
「お前は、学園に来てくれ。立ち入り許可は俺が取っとく!」
謳くんのもとへ向かいます。無論、車で。
「この歯車があれば、世界は……」
私も、謳くんの役に立てたのでしょうか……。
「皆さん……。【血の走狗】は……」
私と謳くん。そして、皆さんの顔が頭に浮かびます。いつも足手まといだった私。でも、あのころは楽しかった。




