42話:出会わなくてもいい出会い
俺と透と透の姉、弓月は、地図のマークのところにたどり着いた。
「それで、ここは、誰の家だよ」
一軒家だった。他人の家が完全に建っている。それも、昔からある感じだし、地図の間違いか?
「兄さんは、きっと、この家の中に侵入しているわね」
「兄ちゃんならやりかねん」
弓づ……透夜。お前ってやつは。
「とりあえずピンポン押しましょ」
弓月がそう言った。
そして、ドアが開く。
「あ~、誰ですか?」
出てきたのは、茶色っぽい髪を乱雑に切った、ボサボサの髪と細めの眼を持つ爽やかそうな好青年だった。
「あれ、紅くん?」
「あ?勇音に三日月先輩?それと女の子?そして、……誰?つーか何ですか?」
どうやら、透の姉と弓月は面識があるらしい。
「響。貴方の家?ここ」
「え、いや、俺は居候で、別のやつがここの家主ですよ。お~い、刃奈、客だ。とっとと出ろ。俺は、今から雨月と買出しだ」
ん?雨月?
「え、姫ちゃんとデート?」
「そんなんじゃないですよ。三日月先輩もからかわないでください」
今、コイツから、異常な気配が、
「紅響。【魔眼殺し】の紅響か?」
「……お前は……」
「勘違いすんな、敵じゃねぇよ。お前は黒羽の同僚だしな。ああ、黒羽とは、同学年で同じ生徒会に入ってる」
俺の言葉に半信半疑ながら、
「七夜の知り合いか。なら、心配はないか」
俺と紅のやり取りに、三人は、
「えっ、紅くんもなんか特殊なの?」
「響、貴方もそう言った類なのね」
「いや、よく分からないし……」
と三者三様だった。
「あ~もう、どうでもいいけど、勇音も三日月先輩も誰かに喋らないでくださいよ」
と、そのとき、俺たちの後から足音がした。どこか既視感のある足音。
「ちょと、響くん、遅いんだけど」
透通るような声。俺は、振り向いた。そして、戦慄する。なんだろうか、どこか見た感じの風貌。似た雰囲気。そして、何より、狂った「眼」。そう、彼女は、俺と同じ……
「お前、」
「君、」
『誰なんだ(なの)』
俺と彼女の重なった声。それに寒気を覚える。
「私は、雨月姫夜。貴方は?」
「俺は、雨月謳だ」
そして、同時に溜息をつく。
「これは、会わなかった、と言うことにしたほうがいいみたい」
「同感だな」
俺たち二人の感想は、これだった。
「響くん、買い物、行きましょ」
「えっ。ああ」
紅とあいつはその場を去った。あ~あ、嫌なもん見ちまった。
「なんだったの?」
「蒸し返すな。思い出したくないんだから」
そして、再び、家の玄関が開く。
「誰っすか~。私、自宅警備のほうが忙しいんですが?」




