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狂った世界で  作者: 桃姫
蒼空編
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43/82

43話:【空の欠片】

 出てきたのは、茶髪の長い髪で顔すらほとんど隠れてしまっている少女。だぼだぼの服を着ている所為で、体型は、確認できない。

「あ~っと。篠宮刃奈っす」

「そう、篠宮さん、ね。あたしは、勇音透」

「透の姉の明よ」

「友だちの三日月弓月です」

「あ~。まっ、俺は置いとく」

 俺たちの自己紹介に、刃奈は、

「ああ、っと、そっちの二人は、【空色透明(さわれぬもの)】っすか~。あれ、やっぱり発動してるん?」

「やっぱりって、おい。まあ、俺らは、ヒントを求めて、ここに来た」

 俺の言葉に、

「あ~、でもっすね~。確かに、その異能の中核、【空の欠片(だんぺん)】は、ここにあるっすけど、壊せる人がいねぇっす」

「その壊せる奴ってのは、噂の『一羽の鳥』だろ?」

 それを聞いて、

「お~、私のメッセージ、ちゃんと届いてったっすか?でも、おかしいっすね。そこまで簡単なメッセージじゃねぇっすけど」

「まあ、な。色々とあった」

 暫し考え込む刃奈。

「あの文は、簡単に訳すとこうなるんす。【触れぬもの、唄姫の子が空の欠片を壊すとき、触れなかったものは、元に戻る】。つまり、今から、【唄姫】の子を探してもらわないといけないっす」

 【唄姫】の子、ね。

「いや、心配ない。その【唄姫】の子とやらは、俺だ」

 黒羽が前に言っていたしな。

「……ホントっすか?お名前、聞かせてもらえるっすよね?」

「雨月謳」

 ただ、この名は、沙綾に貰ったもの。本名かどうか分からない。

「本人っすね。驚いたっす。あの、謳雨さんの子が、こういう形で関わってくるとは思ってなかったっすから。姫夜には、会ったっすか?遠縁の親戚なんすけど」

「気味悪かったな」

 刃奈は笑う。

「まあ、そうでしょね。類似の力は、反発しあうもんすから。さて、立ち話もなんですから、はいるっすか?」

 今更な気がするが、入るしかないな。

 黙りこくっていた三人を連れ、篠宮家へ足を踏み入れた。


 それなりに広い家だ。俺たちは、玄関を入ってすぐのリビングに通された。

「それでっすけど。早速、【空の欠片】を持ってくるっす」

 そう言って刃奈は、部屋を出て行った。

「それにしても、普通の家、ね」

 そう、普通の家。異能の原因や中核があるとは思えないほどの普通の家だ。

「正確には、二人のそれは異能じゃねぇっす」

 戻ってきた刃奈が言った。

「これが【空の欠片】っす」

 持ってきたのは、空の塊だった。

「なんだよ、これ。これも異能?」

 俺の疑問を刃奈が否定する。

「これは、異能と呼ばれるものとは違うプロセスで動いてるっす。私ら【機関】には、これと同じような【欠片】を集める仕事も任されてるんす」

 そう言って、俺に【空の欠片】を差し出す刃奈。

「さ、これを壊して欲しいっす」

「どうやって?」

 刃奈は笑った。

「そんなの【血染眼】で、に決まってるっす」

「まっ、そうだよな」

 俺の言葉に被せるように透が、

「でも、いいの?確か、集めてるんじゃないの?」

「【空の欠片】は、もう二十年前くらいからあるらしいんでデータも取り終えてるっす」

 なるほど。データを取ってあるからいらないってことか?

「それに、それは、レプリカにすぎないっす。本来は、誰にも認識されることがなくなるっすから」

「つまり、レプリカの【空の欠片】が偶然発動しちまって、こいつらが、疑似【空色透明】になったってことか?」

「そういうことっす」

 俺は、「眼」を開く。

 【空の欠片】は消えた。


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