43話:【空の欠片】
出てきたのは、茶髪の長い髪で顔すらほとんど隠れてしまっている少女。だぼだぼの服を着ている所為で、体型は、確認できない。
「あ~っと。篠宮刃奈っす」
「そう、篠宮さん、ね。あたしは、勇音透」
「透の姉の明よ」
「友だちの三日月弓月です」
「あ~。まっ、俺は置いとく」
俺たちの自己紹介に、刃奈は、
「ああ、っと、そっちの二人は、【空色透明】っすか~。あれ、やっぱり発動してるん?」
「やっぱりって、おい。まあ、俺らは、ヒントを求めて、ここに来た」
俺の言葉に、
「あ~、でもっすね~。確かに、その異能の中核、【空の欠片】は、ここにあるっすけど、壊せる人がいねぇっす」
「その壊せる奴ってのは、噂の『一羽の鳥』だろ?」
それを聞いて、
「お~、私のメッセージ、ちゃんと届いてったっすか?でも、おかしいっすね。そこまで簡単なメッセージじゃねぇっすけど」
「まあ、な。色々とあった」
暫し考え込む刃奈。
「あの文は、簡単に訳すとこうなるんす。【触れぬもの、唄姫の子が空の欠片を壊すとき、触れなかったものは、元に戻る】。つまり、今から、【唄姫】の子を探してもらわないといけないっす」
【唄姫】の子、ね。
「いや、心配ない。その【唄姫】の子とやらは、俺だ」
黒羽が前に言っていたしな。
「……ホントっすか?お名前、聞かせてもらえるっすよね?」
「雨月謳」
ただ、この名は、沙綾に貰ったもの。本名かどうか分からない。
「本人っすね。驚いたっす。あの、謳雨さんの子が、こういう形で関わってくるとは思ってなかったっすから。姫夜には、会ったっすか?遠縁の親戚なんすけど」
「気味悪かったな」
刃奈は笑う。
「まあ、そうでしょね。類似の力は、反発しあうもんすから。さて、立ち話もなんですから、はいるっすか?」
今更な気がするが、入るしかないな。
黙りこくっていた三人を連れ、篠宮家へ足を踏み入れた。
それなりに広い家だ。俺たちは、玄関を入ってすぐのリビングに通された。
「それでっすけど。早速、【空の欠片】を持ってくるっす」
そう言って刃奈は、部屋を出て行った。
「それにしても、普通の家、ね」
そう、普通の家。異能の原因や中核があるとは思えないほどの普通の家だ。
「正確には、二人のそれは異能じゃねぇっす」
戻ってきた刃奈が言った。
「これが【空の欠片】っす」
持ってきたのは、空の塊だった。
「なんだよ、これ。これも異能?」
俺の疑問を刃奈が否定する。
「これは、異能と呼ばれるものとは違うプロセスで動いてるっす。私ら【機関】には、これと同じような【欠片】を集める仕事も任されてるんす」
そう言って、俺に【空の欠片】を差し出す刃奈。
「さ、これを壊して欲しいっす」
「どうやって?」
刃奈は笑った。
「そんなの【血染眼】で、に決まってるっす」
「まっ、そうだよな」
俺の言葉に被せるように透が、
「でも、いいの?確か、集めてるんじゃないの?」
「【空の欠片】は、もう二十年前くらいからあるらしいんでデータも取り終えてるっす」
なるほど。データを取ってあるからいらないってことか?
「それに、それは、レプリカにすぎないっす。本来は、誰にも認識されることがなくなるっすから」
「つまり、レプリカの【空の欠片】が偶然発動しちまって、こいつらが、疑似【空色透明】になったってことか?」
「そういうことっす」
俺は、「眼」を開く。
【空の欠片】は消えた。




