40話:繋がる過去
俺は、外での喋り声で起きた。
「眠い」
そして、勇音の部屋を出た。
その場にいた全員の視線が俺に向く。
「なんだ?」
俺の声に、勇音が口を開く。
「ねえ、これ、どう言うこと?」
そう言って、写真を差し出した。
「なんだ、この写真……」
そこには、俺と【弓月】が写っていた。
「そういえば、無理矢理撮らされたな、これ。それで、何で、これを勇音が持ってんだ?」
これは、【弓月】の奴が、ニヤニヤしながら肌身離さず持っていたはずだ。あいつの死後、どうなったかは、知らないが。
「兄ちゃんの遺品よ」
「兄ちゃん?」
は?まて、ってことは、勇音の兄貴が【弓月】だってのか?
「【弓月】……」
「えっ、私の名前を何で……」
そういうことか。あの野郎。最後まで色々嘘ついてやがったか。名前も、身分も、能力名も、妹がいないってのも、全部嘘かよ。
「俺が、コイツに会った時、名乗られた名前だ。【弓月】、コイツはそう、名乗っていた」
「え、と言うことは、やっぱり、写真の男の子」
勇音に顔立ちが似た黒髪の女性が聞いてくる。
「あ~、そうッスね。これは、俺です。正確には、大規模殺戮能力保持者育成軍、特殊施設暗殺部隊【遥かなる天鈴】に所属していたころの俺です」
俺の言葉が良く分かっていないようで、勇音を除く二人が首をかしげている。
「軍の存在は聞いていたけど、暗殺部隊まであるなんて」
勇音の言葉に、
「正確には、軍も複数あるけどな。俺がいたのは、特殊能力軍隊と大規模殺戮能力保持者育成軍の二つだけどな」
「それで兄ちゃんは、何で、そんなところに入隊しているわけ?」
「あいつ曰く、『僕は、ね。この力が何かを知るために、ここに来たんだ』とのことだ。まあ、その後、殺されちまったがな。俺は、あいつに言われたとおり、軍を抜けた」
俺の言葉に、三人とも言葉が出ないようだった。
「透夜さん……貴方の言う【弓月】さんは、どんな人だったの?」
茶髪の綺麗な髪の女性が、俺に聞いてくる。
「あいつは、人を小馬鹿して、開いてんだか開いてないんだか分からない目でニヤニヤしながら見てくるし、無駄にテンション高いし。色んな地方の言い回しを必要もなく使ってくるし、鬱陶しい奴だった。けど、良い奴だった。満月の夜の夜空が何よりも好きな、馬鹿みたいな奴だった」
「間違いないわね、兄さんよ」
これで確認が取れるって、あいつ、家族の前でもああだったのか。
「でも、この『鳥』と『影』ってなんなのかしらね」
「鳥蜥蜴?」
なんだ、そのドラゴン見たいなの。
「ちげぇよ」
勇音のチョップが、俺の頭に落ちる。
「鳥蜥蜴じゃなくて、鳥、と、影!」
ああ、鳥と影、ね。……?どっかで聞いたな。ああ、ええと、あれか。
「【青空の噂】か」
「ええっと、確か、」
「【いと蒼き空、一羽の鳥が羽を広げ、天を突くとき、透明な影に色が戻る】」
そして、この写真の裏の文字を見る限り、俺が「鳥」。弓月が「影」だ。
「まさか、ね」
「勇音、どうした?」
勇音と言ったときに、勇音ともう一人、黒髪の女性も反応した。
「ああ、そっか、勇音姉もいるのか。透、それでどうした?」
――ゴスッ
何故か蹴り上げられた。
「何すんだよ」
「急に名前で呼ぶからだっつーの!」
顔を何故か赤くしている。
「それで?」
「ああ、じゃあ、お前が透って呼ぶなら、あたしは謳って呼ぶ」
いや、
「そういうことじゃなく、『まさか、ね』のまさかについてだ」
「だっ、だったらそうと、早くいいなさい!」
何故か起こっている透。
「それで、そのまさか、についてだけど……」




