失われたページ
禁書の調査は続いていた。
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だが進展はない。
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犯人不明。
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侵入経路不明。
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目的も不明。
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教師たちの表情は日に日に険しくなっていた。
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放課後。
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図書館。
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セシリアは禁書庫の調査資料を見直していた。
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何か見落としている気がする。
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そんな感覚だけが残っている。
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「おかしいのよね……」
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報告書をめくる。
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そして手が止まった。
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「……あれ?」
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禁書の管理記録。
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違和感。
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冊数が合わない。
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消えたのは一冊。
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そう報告されている。
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だが。
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半年前の管理記録。
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一年前の管理記録。
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さらに古い記録。
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比較すると、
微妙に記載内容が違う。
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まるで。
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途中で誰かが書き換えたように。
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「そんなはず……」
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背筋が冷える。
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その時だった。
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「何してるんですか」
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突然の声。
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セシリアが振り返る。
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レオンだった。
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本を抱えて立っている。
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いつの間に。
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全く気付かなかった。
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「驚かせないでください」
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「すみません」
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感情のない声。
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レオンは資料を見る。
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数秒。
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視線が止まる。
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ほんの一瞬だけ。
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何かを考えたように見えた。
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だが。
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すぐに本へ視線を戻した。
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「禁書の件ですか」
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「ええ」
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「そうですか」
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会話終了。
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セシリアは少し苛立つ。
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「あなた、何か知ってるんじゃないですか」
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レオンが止まる。
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沈黙。
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図書館の時計だけが鳴る。
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数秒後。
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「知りません」
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それだけだった。
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嘘か本当か。
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分からない。
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ただ。
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いつものように表情が読めない。
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その夜。
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アルフォンスは自主訓練をしていた。
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最近集中できない。
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原因は分かっている。
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レオン。
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あの男だ。
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負けた訳じゃない。
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実際に勝った。
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なのに。
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妙な違和感だけが残る。
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「馬鹿らしい」
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剣を振る。
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その時。
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視界の端。
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何かが動いた。
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学園外周。
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森の方角。
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黒い影。
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人影にも見える。
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アルフォンスは眉をひそめた。
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こんな時間に誰だ。
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警備担当か。
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いや違う。
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距離が遠い。
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だが。
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一瞬だけ見えた横顔。
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黒髪。
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「……レオン?」
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次の瞬間。
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影は消えた。
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森の闇の中へ。
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翌朝。
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学園。
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禁書調査に進展があった。
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図書館司書が血相を変えて走ってくる。
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「た、大変です!」
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教師たちが振り返る。
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「どうした」
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「禁書庫の資料が……」
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息を切らしながら言う。
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「一ページだけ消えています!」
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空気が凍った。
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禁書だけではない。
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管理資料まで改ざんされている。
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誰かが。
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何かを隠そうとしている。
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そしてその何かは、
教師たちが思っている以上に深い場所へ繋がっていた。
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誰もまだ気付いていない。
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学園の地下で。
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数十年前から眠っていた秘密が、
少しずつ目を覚まし始めていることに。




