閉ざされた記憶
禁書騒動から数日。
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学園は少しずつ日常を取り戻していた。
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「結局犯人分かってないんだろ?」
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「怖くないか?」
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「教師がなんとかするだろ」
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昼休み。
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生徒たちはいつものように談笑している。
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だが。
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どこか落ち着かない。
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禁書が消えた。
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その事実だけは変わらない。
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中庭。
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男子生徒たちが魔法談義をしている。
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「今度の実技試験どうだった?」
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「アルフォンスがまた首席だろ」
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「だよな」
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笑い声。
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その時。
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「レオンは?」
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空気が少し変わる。
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「あいつ?」
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「途中から見てなかったな」
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「どうせサボったんだろ」
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「ありそう」
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全員が納得する。
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その場にレオンはいない。
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放課後。
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図書館。
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セシリアは古い記録を調べていた。
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禁書。
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結界異常。
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共通点を探している。
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何時間も。
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ページをめくる。
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そして。
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一冊の記録簿が目に入った。
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学園事件記録。
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二十年前。
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セシリアはページを開く。
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そこには確かに記載されていた。
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【禁書紛失事件】
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「……あった」
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心臓が高鳴る。
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急いで続きを読む。
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しかし。
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途中で文章が途切れていた。
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ページがない。
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綺麗に破られている。
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「そんな……」
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偶然とは思えない。
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重要な部分だけ。
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消えている。
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その時。
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「まだ残っていたのか」
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後ろから声。
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バルト教官だった。
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「教官」
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セシリアは記録簿を見せる。
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バルトの表情が変わる。
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ほんの少しだけ。
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「これ……」
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「知っているんですか?」
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沈黙。
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だがバルトは首を振った。
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「いや」
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嘘だ。
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セシリアはそう思った。
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ほんの一瞬。
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教官はこの記録を知っている顔をした。
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日が暮れる。
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図書館の閉館時間。
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セシリアは渋々席を立った。
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結局。
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新しい情報は得られていない。
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いや。
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得られた。
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誰かが何かを隠している。
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それだけは確信できた。
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帰ろうとして。
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ふと視線を横へ向ける。
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机。
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誰もいない。
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だが本が置かれていた。
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開いたまま。
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まるで誰かがさっきまで読んでいたように。
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セシリアは近付く。
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題名。
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『勇者アーク伝』
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王国なら子供でも知っている英雄譚。
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だが。
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妙だった。
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その本は学園図書館でもほとんど借りられない。
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英雄譚など子供向けだからだ。
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ページをめくる。
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そこには一文だけ線が引かれていた。
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勇者アークは魔王討伐後、歴史の表舞台から姿を消した。
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セシリアは眉をひそめた。
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誰が読んでいたのだろう。
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そして。
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なぜその一文だけが気になったのだろう。
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窓の外。
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夕日が沈んでいく。
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学園のどこかで。
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また何かが動いている。
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そんな気がした。




