夜の巡回
夜。
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アークレイス魔法学園。
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生徒たちが眠る時間。
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校舎には静寂だけが広がっていた。
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だが。
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最近の学園は静かではない。
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禁書紛失。
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結界異常。
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原因不明の魔力反応。
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教師たちの警戒は強まっていた。
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「じゃあ東側を頼む」
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「了解」
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巡回担当の教師たちが散っていく。
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バルト教官は一人で外周へ向かった。
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夜風が冷たい。
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結界塔の灯りだけが周囲を照らしている。
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「何もなければいいがな……」
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最近は妙な予感ばかり当たる。
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だから困る。
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数十分後。
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異常なし。
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問題なし。
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そう思った時だった。
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ピシッ。
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小さな音。
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バルトが立ち止まる。
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結界。
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何かが触れた。
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ほんの一瞬。
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だが確かに。
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「誰だ!」
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魔法を展開する。
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周囲を警戒。
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森。
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木々。
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闇。
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何も見えない。
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だが。
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気配だけはある。
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人ではない何か。
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その瞬間。
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ドンッ!!
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遠くで爆発音。
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バルトが駆け出す。
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結界塔裏。
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到着した時には終わっていた。
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静寂。
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何もない。
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誰もいない。
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だが。
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地面だけが荒れている。
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戦闘の跡。
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それもかなり激しい。
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「……なんだこれは」
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バルトはしゃがみ込む。
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土が抉れている。
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木も折れている。
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しかし。
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相手の姿がない。
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血痕もない。
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その時。
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何かが目に入った。
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地面。
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端の方。
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小さな白い布。
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バルトは拾い上げる。
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包帯だった。
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汚れている。
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そして。
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少しだけ血が付いている。
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「……」
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見覚えがあった。
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最近。
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どこかで見た。
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思い出せない。
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だが気になる。
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妙に。
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翌朝。
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訓練場。
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生徒たちはいつも通りだった。
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「聞いたか?」
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「昨夜また警報鳴ったらしいぞ」
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「最近多いな」
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「怖いよな」
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雑談。
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だが大半の生徒は本気で心配していない。
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学園は安全だと思っている。
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当然だ。
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そう教えられてきた。
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その中で。
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バルトだけが周囲を見ていた。
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生徒たち。
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教師たち。
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そして。
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訓練場の隅。
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本を読んでいる少年。
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レオン・クロイツ。
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腕。
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制服の袖から少しだけ包帯が見えていた。
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バルトの視線が止まる。
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昨夜拾った包帯。
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似ている。
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いや。
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ただの偶然だ。
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そう考える。
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だが。
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胸の奥に小さな違和感が残る。
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レオンは本を読んでいる。
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いつも通り。
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何も知らない顔で。
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その姿が。
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なぜか少しだけ不自然に見えた。




