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魔法学園のマキャヴェリ  作者: Kk


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12/25

英雄の本

昼休み。



図書館。



アルフォンスは珍しく実技書ではなく歴史書の棚にいた。



理由は自分でもよく分からない。



あの日。



セシリアが見ていた本。



そして最近耳にする違和感。



禁書。



消えた記録。



誰かが隠している何か。



全てが繋がっている気がした。



「考えすぎか……」



そう呟きながら本棚へ手を伸ばす。



一冊の本。



『勇者アーク伝』



王国で最も有名な英雄譚。



子供の頃。



誰もが読んだ。



当然アルフォンスも読んでいる。



だが。



改めて読むのは初めてだった。



席へ座る。



ページを開く。



勇者アーク。



魔王を討伐した救世主。



世界を救った英雄。



何百年経っても語り継がれる伝説。



内容は知っている。



だが。



読み進めるうちに違和感を覚えた。



「……ん?」



ページを戻る。



もう一度読む。



やはりおかしい。



魔王討伐後。



記録が曖昧なのだ。



王国再建。



各地の復興。



そういった記述はある。



だが。



肝心の勇者アーク本人については、


突然記録が消える。



まるで。



そこだけ空白になっているようだった。



「なんだこれは」



アルフォンスは眉をひそめる。



英雄なのだ。



普通なら。



晩年。



弟子。



死因。



墓。



必ず記録が残る。



しかし。



何もない。




その時。



近くの席から声が聞こえた。



「勇者アーク?」



男子生徒だった。



「懐かしいな」



「子供の頃読んだわ」



女子生徒が笑う。



「実在したかも怪しいよね」



「いや実在はしただろ」



「でも昔すぎるし」



他愛もない会話。



だが。



アルフォンスは本から目を離せなかった。




ページをめくる。



最後の章。



そこに短い一文があった。



勇者アークは歴史の表舞台から姿を消した。



それだけ。



たったそれだけ。



死んだとも。



老いたとも。



書かれていない。



「まるで……」



そこまで言って止まる。



自分でも馬鹿らしいと思った。



まるで生きているみたいだ。



そんなことあるはずがない。



何百年どころではない。



千年以上前の人物だ。




本を閉じる。



窓の外を見る。



中庭。



生徒たちが笑っている。



平和な光景。



だが。



最近の学園はどこかおかしい。



禁書。



結界。



消えた記録。



そして勇者アーク。



何も関係ないはずなのに。



妙な繋がりを感じる。




その日の夕方。



図書館の司書が本棚を整理していた。



そして首を傾げる。



「おかしいな……」



本棚。



勇者関連の書籍。



一冊だけ。



貸出記録のない本がある。



何年も。



誰も借りていないはずの本。



なのに。



最近読まれた跡があった。



新しい指紋。



新しい折り目。



誰かが読んでいる。



誰にも知られず。



何度も。



『勇者アーク伝』を。


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