主席の敗北
朝。
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訓練場。
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学園の生徒たちが集まっていた。
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今日は実技試験。
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学期ごとに行われる重要な評価試験だ。
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当然。
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注目は首席。
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アルフォンス・レイヴン。
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「今年も首席は確定だな」
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「アルフォンス強すぎるし」
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周囲の声。
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本人もそれを否定しない。
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事実だからだ。
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努力している。
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結果も出している。
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誰よりも強い。
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少なくとも学年では。
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試験が始まる。
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生徒たちが順番に模擬戦を行う。
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圧勝。
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圧勝。
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また圧勝。
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アルフォンスは危なげなく勝ち続ける。
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歓声が上がる。
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教師たちも満足そうだった。
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その時。
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最後の組み合わせが発表された。
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「アルフォンス・レイヴン」
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「レオン・クロイツ」
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ざわめき。
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「またか」
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「レオン終わったな」
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「前回もボコボコだったろ」
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笑い声。
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レオンは静かに前へ出る。
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いつも通り。
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無表情。
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やる気があるようにも見えない。
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アルフォンスは剣を構えた。
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「今度は逃げるなよ」
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レオンは首を傾げる。
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「逃げてません」
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「そうか」
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開始の合図。
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アルフォンスが踏み込む。
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剣撃。
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速い。
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学年トップの速度。
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だが。
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空を切る。
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レオンが半歩動いた。
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避けた。
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ギリギリ。
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偶然にも見える。
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再び斬撃。
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避ける。
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三撃。
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四撃。
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五撃。
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全部。
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当たらない。
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観客席がざわつく。
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「なんだ?」
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「避けてる?」
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「偶然だろ」
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アルフォンスも違和感を覚え始める。
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おかしい。
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タイミングが完璧すぎる。
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だが。
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あり得ない。
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レオンは魔力強化すら使っていない。
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見えるはずがない。
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「はっ!」
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炎魔法。
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剣と同時発動。
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逃げ場を潰す。
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完璧な連携。
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だが。
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レオンは一歩だけ下がった。
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炎が外れる。
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剣も外れる。
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また。
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外れる。
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その瞬間。
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アルフォンスの背筋に冷たいものが走った。
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まるで。
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試されているような感覚。
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いや。
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違う。
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見られている。
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自分の動きを。
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全部。
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レオンは何も考えていなかった。
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ただ。
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早く終わらないかな。
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と思っていた。
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昨夜から寝ていない。
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結界異常が二回。
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魔獣侵入が一回。
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少し眠い。
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「終わりだ!」
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アルフォンスが最後の魔法を放つ。
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巨大な火球。
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訓練場が熱気に包まれる。
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歓声。
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土煙。
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視界が消える。
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そして。
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数秒後。
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煙が晴れる。
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レオンは倒れていた。
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「勝者、アルフォンス!」
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歓声が上がる。
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「やっぱ首席だ!」
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「当然だな!」
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アルフォンスも剣を下ろす。
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勝った。
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はずだった。
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なのに。
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胸の中に妙な感覚が残る。
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勝った気がしない。
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なぜだ。
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レオンを見る。
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倒れている。
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負けている。
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それなのに。
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まるで。
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相手にされていなかった気がした。
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試験終了後。
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レオンはいつの間にかいなくなっていた。
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誰も気にしない。
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いつものことだから。
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だが。
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アルフォンスだけは、
しばらく訓練場に立ち尽くしていた。
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初めてだった。
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レオン・クロイツに対して、
敗北感のようなものを覚えたのは。




