無口な少女②
訓練場。
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風が吹き荒れる。
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ジルの魔力。
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今までとは桁が違う。
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観客席の制服が揺れる。
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髪がなびく。
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一年生達が目を見開く。
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「おいおい……」
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「まだ隠してたのか」
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ジルは笑っていた。
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代表候補。
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その名に恥じない実力。
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風が渦を巻く。
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ジルの周囲を高速で回転する。
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「なら見せてやる」
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「俺の本気を」
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魔法陣展開。
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巨大。
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今までで最大。
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観客席がざわつく。
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そして。
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風が消えた。
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一瞬。
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静寂。
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次の瞬間。
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轟音。
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竜巻。
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訓練場中央に巨大な風の柱が出現する。
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観客席総立ち。
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「うおおおお!!」
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「すげぇ!!」
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圧巻だった。
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地面が削られる。
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石畳が砕ける。
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影ですら飲み込まれそうな暴風。
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だが。
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エルナは動かない。
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表情も変わらない。
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その姿が逆に不気味だった。
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ジルが手を振る。
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竜巻が動く。
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一直線。
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エルナへ迫る。
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観客席が息を呑む。
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その時。
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エルナの足元。
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影が動いた。
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広がる。
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さらに広がる。
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訓練場半分を覆うほどに。
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アルフォンスの目が細くなる。
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「おい……」
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ダリウスも気付いた。
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大きすぎる。
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今まで見せたことがない。
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そして。
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影が立ち上がる。
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人型。
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一体。
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二体。
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三体。
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観客席が静まり返る。
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影の兵士。
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黒い騎士達。
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ジルも表情を変えた。
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「召喚……?」
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違う。
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生物ではない。
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影そのもの。
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エルナが小さく呟く。
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「行け」
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影騎士達が走る。
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竜巻へ突撃。
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轟音。
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一体目が消える。
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二体目も消える。
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だが。
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三体目。
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四体目。
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五体目。
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次々現れる。
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観客席がざわめく。
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数が減らない。
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いや。
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増えている。
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ジルが舌打ちする。
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風を強める。
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竜巻がさらに巨大化する。
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しかし。
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エルナの影も広がる。
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黒。
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風。
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影。
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暴風と暗闇が激突する。
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アイリスが立ち上がった。
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完全に興奮していた。
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「いい!」
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「すごくいい!」
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レオニスが呆れる。
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「落ち着け」
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「無理」
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即答だった。
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その頃。
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ジルは気付いていた。
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まずい。
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押されている。
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風量は勝っている。
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威力も勝っている。
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なのに。
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影が減らない。
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なぜだ。
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その答えは。
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足元にあった。
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影。
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自分の影。
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竜巻が作る巨大な影。
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観客席の影。
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壁の影。
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訓練場全体の影。
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エルナは戦うほど強くなる。
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影が増えるほど。
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ジルの顔から血の気が引く。
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「まさか……」
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エルナが初めて前へ出た。
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一歩。
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そして。
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影の騎士達が一斉に剣を構える。
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観客席が静まり返る。
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決着が近い。
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誰もがそう感じていた。




