無口な少女①
セシリアの試合終了後。
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訓練場は異様な熱気に包まれていた。
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「やばかったな……」
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「一瞬だったぞ」
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「クラウス相手にあれかよ」
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生徒達が騒ぐ。
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セシリアは苦笑していた。
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「あそこまでやるつもりなかったんだけど」
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アルフォンスが呆れる。
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「嘘だろ」
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ダリウスも頷く。
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「あれは本気だった」
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セシリアは笑うだけだった。
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その頃。
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訓練場中央。
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バルトが次の試合を告げる。
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「第十一試合」
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歓声。
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「エルナ・ノクス」
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さらに歓声。
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黒髪の少女が立ち上がる。
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相変わらず無表情。
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だが。
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その名前が呼ばれただけで、
会場の空気が変わった。
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影魔法。
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二年最強候補。
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交流戦代表確実と言われる存在。
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そして。
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対戦相手。
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「ジル・クロフォード」
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二年生。
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風魔法使い。
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代表候補。
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かなりの実力者だった。
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観客席。
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マルクが腕を組む。
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「エルナ先輩なら余裕だろ」
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ダリウスは否定しない。
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だが。
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アルフォンスだけは少し考えていた。
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ジル。
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強い。
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風魔法の精度なら学園上位。
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簡単には終わらない。
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その時。
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試合開始。
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「始め!」
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瞬間。
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風。
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ジルが動く。
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速い。
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かなり速い。
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しかし。
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エルナは動かない。
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ただ立っている。
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観客席がざわつく。
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次の瞬間。
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ジルの足元。
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影。
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黒い手が飛び出した。
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「っ!?」
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ジルが飛び退く。
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地面。
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壁。
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柱。
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訓練場中の影が蠢いていた。
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観客席が静まり返る。
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気味が悪い。
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美しい。
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その両方。
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影魔法。
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希少属性。
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エルナの最大の武器。
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ジルは距離を取る。
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風刃。
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連射。
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無数の斬撃。
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しかし。
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影が飲み込む。
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一つ。
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二つ。
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三つ。
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全て消える。
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会場がどよめく。
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「なんだあれ……」
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「防いだ?」
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「食った?」
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説明できない。
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その時。
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王立中央学院席。
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アイリスが笑う。
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「面白い」
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レオニスも頷く。
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「相性が悪いな」
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「うん」
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風魔法。
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影魔法。
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相性最悪。
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ジルは理解していた。
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このままでは勝てない。
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だから。
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笑った。
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「そう来るか」
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そして。
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両手を広げる。
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魔力解放。
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風が渦を巻く。
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訓練場全体を包み込むほどの風。
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観客席がざわつく。
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切り札。
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来る。
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エルナは無表情。
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だが。
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その足元の影だけが、
ゆっくりと広がり始めていた。
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試合は。
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ここからだった。




