閉ざされた地下
禁書が消えた。
その話題は翌日になっても収まらなかった。
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「犯人捕まったのか?」
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「まだらしい」
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「やばくないか?」
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廊下を歩けばその話ばかり。
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学園中が落ち着かない空気に包まれていた。
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生徒会室。
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セシリアは机に向かっていた。
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昨夜からずっと考えている。
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禁書。
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消えた理由。
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犯人。
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だが答えは出ない。
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「はぁ……」
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小さくため息を吐く。
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その時。
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コンコン。
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扉が開いた。
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バルト教官だった。
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「調査は進んでるか?」
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「全然です」
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正直に答える。
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「そうか」
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バルトも難しい顔をしていた。
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今回の件は教師たちも相当警戒しているらしい。
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「旧校舎周辺には近付くなと生徒へ伝えておけ」
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「旧校舎?」
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セシリアが首を傾げる。
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旧校舎は現在使われていない。
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立入禁止区域。
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「何かあったんですか?」
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「いや」
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バルトは少しだけ言葉を選んだ。
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「念のためだ」
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昼休み。
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セシリアは旧校舎へ向かっていた。
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もちろん興味本位ではない。
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生徒会長として確認するためだ。
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たぶん。
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石畳の道。
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人通りは少ない。
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古びた建物が見えてくる。
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その時だった。
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足元。
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何かが光った。
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「……?」
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しゃがみ込む。
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そこには小さな魔法陣の痕跡があった。
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既に消えかけている。
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だが確かに残っている。
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見たことがない術式だった。
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教師でもなければ解析は難しい。
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「なんでこんな場所に……」
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その瞬間。
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ガサッ。
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物音。
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セシリアが振り返る。
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誰もいない。
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風。
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木々が揺れているだけ。
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だが。
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誰かに見られている気がした。
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一方その頃。
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旧校舎地下。
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レオンは歩いていた。
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薄暗い通路。
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壁には古代文字。
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学園創設以前の遺跡。
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一般生徒どころか、
教師ですら存在を知らない。
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レオンは奥へ進む。
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やがて。
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重い鉄扉が見えた。
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開いている。
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昨日は閉じていたはずだった。
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「……」
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嫌な予感がした。
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扉の向こう。
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石造りの広間。
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中央に台座。
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本来なら。
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そこにあるはずだった。
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封印の書。
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禁書庫から消えた本。
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だが。
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ない。
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既に持ち去られていた。
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レオンは静かに目を閉じる。
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そして床へ視線を落とす。
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足跡。
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一人分。
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新しい。
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「学園の人間じゃないな」
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小さく呟く。
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その時。
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広間の奥から声が聞こえた。
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『遅かったな』
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低い声。
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人ではない。
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レオンは振り返らない。
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「逃げたか」
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『逃げた』
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「そう」
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まるで世間話だった。
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暗闇の中。
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何かが笑う。
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『追わないのか?』
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レオンは少し考えた。
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そして。
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「今はまだいい」
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『優しいな』
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レオンは答えない。
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ただ広間の天井を見上げる。
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ひび割れ。
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封印の劣化。
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禁書。
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結界異常。
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全部繋がり始めている。
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まだ形は見えない。
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だが。
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確実に何かが動いていた。
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学園の奥深くで。
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誰にも知られずに。




