王都からの来訪者
交流戦代表選抜が始まってから数日。
⸻
学園は活気に満ちていた。
⸻
代表枠は限られている。
⸻
だからこそ。
⸻
誰もが本気だった。
⸻
⸻
訓練場。
⸻
アルフォンスとダリウスが模擬戦をしている。
⸻
炎。
⸻
雷。
⸻
衝撃。
⸻
以前より明らかにレベルが上がっていた。
⸻
⸻
観客席。
⸻
マルクが叫ぶ。
⸻
「行けー!」
⸻
⸻
教師達も満足そうに頷く。
⸻
⸻
そんな中。
⸻
レオンは一人で本を読んでいた。
⸻
⸻
いつも通り。
⸻
誰も気にしない。
⸻
⸻
その時。
⸻
校門付近が騒がしくなる。
⸻
⸻
馬車。
⸻
⸻
豪華な紋章。
⸻
⸻
教師達が慌てて整列する。
⸻
⸻
生徒達もざわつく。
⸻
⸻
「誰だ?」
⸻
「王都の使者か?」
⸻
⸻
馬車の扉が開く。
⸻
⸻
降りてきたのは一人の少女。
⸻
⸻
白銀の髪。
⸻
⸻
整った顔立ち。
⸻
⸻
どこか気品がある。
⸻
⸻
しかし。
⸻
その瞳だけは鋭かった。
⸻
⸻
生徒達が息を呑む。
⸻
⸻
セシリアが小さく呟く。
⸻
⸻
「まさか……」
⸻
⸻
アルフォンスも気付く。
⸻
⸻
王立中央学院。
⸻
⸻
その制服。
⸻
⸻
王国最強学園。
⸻
⸻
少女は周囲を見回す。
⸻
⸻
そして。
⸻
少しだけ退屈そうに言った。
⸻
⸻
「思ったより普通ね」
⸻
⸻
ざわめき。
⸻
⸻
教師達の顔が引きつる。
⸻
⸻
本人は気にしていない。
⸻
⸻
その時。
⸻
後ろから別の声。
⸻
⸻
「だから言っただろ」
⸻
⸻
長身の少年。
⸻
⸻
金髪。
⸻
⸻
王族特有の雰囲気。
⸻
⸻
レオニス・クラウン。
⸻
⸻
そして。
⸻
少女。
⸻
⸻
アイリス・アルディア。
⸻
⸻
王国学生ランキング上位の常連。
⸻
⸻
まだ発表されていないが、
その名は有名だった。
⸻
⸻
「交流戦の下見なんて退屈だ」
⸻
レオニスが言う。
⸻
⸻
アイリスは肩を竦める。
⸻
⸻
「なら帰る?」
⸻
⸻
「それは嫌だ」
⸻
⸻
二人の会話だけで、
周囲の空気が支配される。
⸻
⸻
本物の強者。
⸻
⸻
そう感じさせた。
⸻
⸻
その頃。
⸻
校舎屋上。
⸻
⸻
カイルが寝ていた。
⸻
⸻
リヒトが下を見ている。
⸻
⸻
「王立中央学院ですよ」
⸻
⸻
「へー」
⸻
⸻
興味なし。
⸻
⸻
「アイリスもいます」
⸻
⸻
「へー」
⸻
⸻
「レオニスも」
⸻
⸻
「へー」
⸻
⸻
リヒトがため息を吐く。
⸻
⸻
しかし。
⸻
次の言葉で、
カイルの片目が開く。
⸻
⸻
「王国学生ランキング暫定一位候補も来ているそうです」
⸻
⸻
「ガレス?」
⸻
⸻
「はい」
⸻
⸻
カイルは少しだけ考える。
⸻
⸻
そして。
⸻
「来なくていいのに」
⸻
⸻
再び寝る。
⸻
⸻
リヒトは苦笑するしかなかった。
⸻
⸻
その頃。
⸻
校門。
⸻
⸻
アイリスはふと足を止めた。
⸻
⸻
視線。
⸻
⸻
校舎の影。
⸻
⸻
そこにはレオンがいた。
⸻
⸻
本を閉じる。
⸻
⸻
ただそれだけ。
⸻
⸻
しかし。
⸻
アイリスの眉が僅かに動く。
⸻
⸻
「……?」
⸻
⸻
レオンは何も見ていない。
⸻
⸻
こちらにも気付いていない。
⸻
⸻
なのに。
⸻
違和感。
⸻
⸻
理由は分からない。
⸻
⸻
アイリスは数秒見つめる。
⸻
⸻
そして。
⸻
「変な人」
⸻
⸻
そう呟いて歩き出した。
⸻
⸻
レオンは振り返らない。
⸻
⸻
ただ一人。
⸻
何かを感じたカイルだけが、
屋上で目を閉じたまま小さく笑っていた。




