学園代表選抜
地下崩落事件から三日。
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学園は落ち着きを取り戻していた。
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少なくとも表面上は。
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教師陣は地下を封鎖。
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旧校舎立入禁止。
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夜間巡回強化。
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だが。
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何も見つからなかった。
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アーヴェルの痕跡も。
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黒ローブ老人の痕跡も。
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何一つ。
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そして。
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その話題は徐々に消えていく。
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生徒というのはそういうものだ。
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新しい話題があれば、
古い話題は忘れる。
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そして今日。
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学園中の注目は別に向いていた。
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講堂。
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全校生徒が集められている。
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壇上へ上がったのは学園長エドガー。
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「来月」
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「王国学園交流戦が開催される」
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一瞬の静寂。
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そして。
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大歓声。
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交流戦。
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王国中の名門学園が集まる大会。
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優秀な騎士。
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優秀な魔導士。
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未来の英雄候補。
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全てが集まる。
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「今年の代表を選抜する」
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さらに歓声。
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ダリウスが立ち上がりそうになる。
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マルクも興奮していた。
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「来たぞ!」
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「今年こそアルフォンスを超えろ!」
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ダリウスは何も言わない。
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だが。
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その瞳は燃えていた。
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その頃。
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最後列。
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レオンは寝ていた。
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完全に。
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「おい」
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マルクが呆れる。
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「なんなんだあいつ」
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ダリウスも眉をひそめる。
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やはり気に入らない。
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一方。
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二年席。
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セシリアは学園長の話を聞いていた。
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交流戦。
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本来なら楽しみな行事。
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だが。
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地下の件が終わった気がしない。
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そして。
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エルナも同じだった。
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彼女の視線は壇上ではなく、
後方へ向いている。
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レオン。
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相変わらず。
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何も分からない。
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その時。
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講堂後方の扉が開いた。
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一人の教師。
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「学園長」
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何かを耳打ちする。
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エドガーの表情が僅かに変わった。
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ほんの一瞬。
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しかし。
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レオンだけが気付いた。
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何かあった。
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その夜。
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学園長室。
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エドガー。
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バルト。
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数名の教師。
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机の上には一通の封書。
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送り主不明。
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中には紙が一枚。
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短い文章。
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【アーヴェル・グランツ確認】
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【王都近郊】
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部屋の空気が凍る。
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生きている。
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やはり。
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バルトが拳を握る。
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「追うべきだ」
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エドガーは首を横に振る。
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「まだだ」
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「今動けば学園が空になる」
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沈黙。
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誰も反論できない。
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その頃。
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学園寮の屋上。
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カイルが寝転がっていた。
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星空。
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風が吹く。
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横にはリヒト。
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「交流戦楽しみですね」
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「んー」
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カイルは空を見たまま答える。
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「そう?」
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「出るんでしょう?」
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「めんどくさい」
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リヒトが苦笑する。
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だが。
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次の言葉で表情が変わった。
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「先輩」
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「なんです?」
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カイルは星空を見上げたまま言う。
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「まだ終わってないよ」
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静かな声。
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「地下のやつ」
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リヒトの笑顔が消える。
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学園最強の直感。
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それは今も警鐘を鳴らしていた。
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遠く。
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王都近郊の森。
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傷だらけの男が歩く。
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アーヴェル・グランツ。
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そして。
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彼の前には、
誰かが立っていた。
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顔は見えない。
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闇の中。
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ただ一つだけ。
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異様な圧力があった。
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アーヴェルが膝をつく。
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数百年ぶりに。
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敬意を示すように。
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「お久しぶりです」
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闇の人物は何も答えない。
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ただ静かに、
アーヴェルを見下ろしていた。




