白銀の封鎖
白い。
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何も見えない。
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光。
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銀色の光。
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エルナの視界は完全に埋め尽くされていた。
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耳も聞こえない。
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感覚も曖昧。
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ただ。
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一つだけ分かる。
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レオンが戦っている。
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今まで見たこともない相手と。
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やがて。
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少しずつ視界が戻る。
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地下広間。
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いや。
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違う。
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広間だった場所。
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半壊している。
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壁もない。
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天井も崩れている。
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封印陣は完全に消滅していた。
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エルナは息を呑む。
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レオンは立っていた。
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中央。
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銀色の魔法陣の中。
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しかし。
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その表情は険しい。
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そして。
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闇の底。
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先ほどまで見えていた無数の目が消えている。
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静寂。
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アーヴェルが呟く。
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「押し戻したのか」
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信じられないものを見る目。
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レオンは答えない。
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だが。
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その肩から血が流れていた。
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エルナの目が見開かれる。
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傷。
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レオンが傷付いた。
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初めてだった。
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今までどんな状況でも。
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余裕を失わなかった男。
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そのレオンが。
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傷を負っている。
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アーヴェルは笑う。
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「なるほど」
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「一人では足りないか」
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レオンの瞳が鋭くなる。
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アーヴェルは続ける。
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「安心しろ」
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「私はもう戦う気はない」
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意外な言葉だった。
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エルナも驚く。
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アーヴェル自身も地下の闇を見ている。
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その顔には恐怖すらあった。
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「私も死にたくないのでな」
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乾いた笑い。
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その時。
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遠くから鐘の音が響く。
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学園警報。
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異常事態発生。
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バルトたちが動き始めたのだろう。
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レオンは上を見る。
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時間がない。
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そして。
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エルナへ視線を向ける。
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数秒。
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初めて。
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レオンは迷ったような顔をした。
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エルナは固まる。
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何を言われる。
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何を隠される。
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そう思った。
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しかし。
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レオンが言ったのは。
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「見たことは忘れろ」
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それだけだった。
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エルナの眉が動く。
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「無理」
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即答。
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レオンは少しだけ目を閉じた。
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当然だった。
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忘れられるはずがない。
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だが。
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これ以上知られる訳にはいかない。
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その時。
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アーヴェルが笑う。
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「面白い」
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「昔もそうだった」
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レオンが振り向く。
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アーヴェルは口元を歪める。
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「継承者はいつも一人だ」
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その言葉。
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エルナは聞き逃さなかった。
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継承者。
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まただ。
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地下の存在も言っていた。
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アーヴェルも言った。
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継承者。
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レオンの正体に繋がる言葉。
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しかし。
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その意味を聞く前に。
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轟音。
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地下通路が完全に崩れた。
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砂煙。
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視界が消える。
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そして。
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その混乱の中。
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アーヴェル・グランツの姿は消えていた。
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ただ一つ。
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崩れた床の上に、
古びた教師章だけを残して。




