表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法学園のマキャヴェリ  作者: Kk


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/28

主席の違和感

アルフォンス・レイヴンは努力家だった。


天才と呼ばれる。


首席と呼ばれる。


未来の英雄候補と期待されている。



だが。



その評価は努力の結果だ。



誰よりも早く起きる。


誰よりも訓練する。


誰よりも勉強する。



だから首席になれた。



才能だけではない。



その自負があった。



訓練場。



今日も自主練習。



炎魔法。


風魔法。


剣術。



一通り終えたところで、


バルト教官が現れた。



「朝から精が出るな」



「当然です」



アルフォンスは汗を拭く。



「強くなりたいので」



バルトは頷く。



模範的な回答だった。



だからこそ。



どうしても理解できない人間がいる。



レオン・クロイツ。



やる気がない。


努力しない。


態度も悪い。



なのに。



なぜか教師たちは退学にしない。



不思議だった。



「教官」



「ん?」



「レオンを残している理由は何ですか」



バルトは少しだけ固まった。



「急だな」



「気になっただけです」



沈黙。



「理由なんてない」



バルトは答えた。



「学園の規定を満たしているからだ」



「そうですか」



納得はできない。



だが聞いても意味はなさそうだった。




昼。



アルフォンスは図書館へ向かっていた。



途中。



中庭を通る。



そこで視線が止まる。



木陰。



レオンが座っていた。



本を読んでいる。



珍しい。



意外だった。



どうせ寝ていると思っていた。



アルフォンスは少しだけ近付く。



そして。



目に入った本の題名。



『古代結界理論』



「……」



思わず眉が動く。



難解な専門書。



教師でも読む者は少ない。



アルフォンスですら途中で投げた本だった。



レオンは静かにページをめくる。



理解しているように見える。



あり得ない。



「お前」



レオンが顔を上げる。



「何ですか」



相変わらず感情が薄い。



「その本、読めるのか」



数秒。



レオンは本を見る。



「まぁ」



それだけ。



「まぁって……」



アルフォンスは少し苛立つ。



「難しい本だぞ」



「そうですね」



「そうですねって」



会話が続かない。



レオンはまた本へ視線を戻す。



完全に興味を失っていた。



アルフォンスは舌打ちしそうになる。



だが。



ふと違和感を覚えた。



レオンの手。



紙で切ったような傷。



腕の包帯。



首筋にも薄い傷跡。



昨日はなかった。



「お前、その怪我」



レオンは本を閉じた。



「転びました」



即答。



アルフォンスは呆れた。



「お前は毎日転ぶのか」



「最近よく転びます」



真顔だった。



余計に腹が立つ。




その日の夕方。



学園外周。



警報が鳴った。



結界異常。



教師たちが慌てて集まる。



アルフォンスも駆け付けた。



だが。



到着した時には終わっていた。



結界は正常。



異常なし。



原因不明。



教師たちも首を傾げている。



「なんだったんだ」



「分からん」



「誤作動か?」



誰も答えを持っていない。



アルフォンスは周囲を見る。



そして気付く。



レオンがいない。



授業終了後から見ていない。



数十分後。



学園へ戻る途中。



中庭。



ベンチ。



そこにレオンが座っていた。



いつも通り。



何事もなかったように。



本を読んでいる。



『古代結界理論』



夕日に照らされた横顔。



アルフォンスは立ち止まる。



何かがおかしい。



だが。



何がおかしいのか分からない。



レオンは気付かない。



いや。



気付いているのかもしれない。



それでも何も言わない。



風が吹く。



本のページが揺れる。



アルフォンスはしばらくその背中を見つめていた。



初めてだった。



レオン・クロイツという存在に、


違和感を覚えたのは。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ