目覚めの前兆
翌日。
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空は曇っていた。
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太陽は見えない。
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学園を覆う空気も重い。
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理由は誰にも分からない。
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だが。
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生徒たちは無意識に感じていた。
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何かがおかしい。
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訓練場。
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実技試験本戦。
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朝から多くの生徒が集まっている。
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だが。
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例年より静かだった。
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「なんか寒くないか?」
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「分かる」
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「天気のせいかな」
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誰も知らない。
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地下から漏れ出した魔力が、
少しずつ学園全体へ広がっていることを。
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観客席。
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セシリアは資料を閉じる。
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昨夜ほとんど眠れていない。
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レオン。
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地下。
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封印。
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全部が頭の中を回っていた。
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その時。
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アルフォンスが現れる。
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「顔色が悪いな」
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「あなたもでしょ」
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短く笑う。
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だが。
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笑顔は続かなかった。
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二人とも感じている。
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何かが近い。
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その頃。
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訓練場最上段。
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カイルが欠伸をしていた。
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「眠い」
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「いつもでしょう」
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隣のリヒトが苦笑する。
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しかし。
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カイルは珍しく空を見ていた。
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「先輩」
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「なんです?」
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「今日なんか変じゃない?」
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リヒトも空を見る。
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確かに。
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妙だった。
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空気。
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風。
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魔力。
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全てが少しずつ狂っている。
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「気のせいじゃなさそうですね」
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カイルは珍しく真面目な顔になる。
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「だよね」
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その一言で、
リヒトの表情も引き締まる。
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カイルが真面目になる時。
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大抵ろくなことが起きない。
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その頃。
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地下封印区画。
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誰もいない。
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はずだった。
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広間。
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亀裂。
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そこから漏れる黒い靄。
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昨日より濃い。
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そして。
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封印陣中央。
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バキッ。
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また一部が砕ける。
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その奥。
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闇の中。
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何かが立ち上がった。
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人影。
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長い髪。
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痩せた体。
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しかし。
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人間ではない。
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目だけが異様に光っていた。
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そして。
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口元が歪む。
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「……懐かしい」
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数百年ぶりの声。
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低く。
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乾いていた。
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「まだ続いていたか」
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笑う。
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静かに。
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不気味に。
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その瞬間。
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学園全体の魔力が震えた。
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訓練場。
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全員が空を見上げる。
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何かが起きた。
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理由は分からない。
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ただ一人。
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レオンだけが目を閉じた。
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そして。
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小さく呟く。
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「間に合わなかったか」
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その声を。
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すぐ近くにいたエルナだけが聞いていた。




