嘘
校舎裏。
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風が吹く。
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木々が揺れる。
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静かな場所だった。
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だが。
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空気は張り詰めていた。
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レオン。
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エルナ。
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向かい合う。
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「あなたは何を知っているの?」
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エルナの問い。
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真っ直ぐだった。
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レオンは少しだけ考える。
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そして。
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「何の話だ」
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エルナの眉が動く。
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「地下」
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即答だった。
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「昨夜」
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「あなたはいた」
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沈黙。
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レオンは否定しない。
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だが。
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肯定もしない。
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「見間違いだろ」
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エルナの目が細くなる。
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嘘。
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分かる。
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今まで多くの人間を見てきた。
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だから分かる。
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この男は嘘をついている。
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だが。
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理由は分からない。
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「あなたは何を隠している」
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レオンは答えない。
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風。
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沈黙。
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そして。
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レオンが立ち上がる。
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「授業が始まる」
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それだけ。
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エルナの横を通り過ぎる。
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「逃げるの?」
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初めて。
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少しだけ感情が混ざる。
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レオンは足を止めない。
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ただ。
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一言だけ。
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「知る必要はない」
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去っていく。
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エルナはその背中を見つめる。
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怒りではない。
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違和感。
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そして。
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僅かな不安。
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まるで。
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レオンは秘密を守っているのではなく。
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何かから守ろうとしているように見えた。
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その日の夜。
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女子寮。
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セシリアは机に向かっていた。
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紙。
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資料。
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記録。
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並べる。
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地下封印。
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アーヴェル。
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七十二人。
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黒ローブ。
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そして。
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レオン。
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全部を紙へ書き出す。
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すると。
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奇妙なことに気付く。
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レオンだけ。
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何も残らない。
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事件の中心にいる。
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だが。
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証拠がない。
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記録もない。
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目撃証言も曖昧。
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まるで。
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存在そのものが輪郭を持たない。
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「なんなの……」
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小さな呟き。
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その頃。
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学園地下。
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誰もいないはずの封印区画。
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静寂。
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しかし。
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封印陣の亀裂。
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そこから。
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黒い靄が漏れ始めていた。
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少しずつ。
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確実に。
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そして。
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広間の奥。
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誰もいないはずの場所で、
何かが笑った。
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人間の声ではない。
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低く。
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不気味に。
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長い眠りから目覚めるものの笑い声だった。




