深夜の足音
夜。
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実技試験が終わった学園は静かだった。
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昼間の熱気はない。
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風だけが校舎の間を抜けていく。
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旧校舎。
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誰も近付かない場所。
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そこへ向かう人影があった。
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黒髪。
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レオン。
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無言。
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足音も小さい。
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慣れている。
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何度も歩いた道だった。
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その頃。
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別の場所。
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渡り廊下。
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エルナ・ノクスが立っていた。
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視線は一点。
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旧校舎。
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最近。
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何かがおかしい。
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地下。
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封印。
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黒ローブ。
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そして。
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レオン。
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全部が繋がっている気がする。
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「……」
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エルナは歩き出した。
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静かに。
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誰にも気付かれず。
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旧校舎。
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レオンが扉を開く。
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地下への階段。
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冷たい空気。
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いつもと違う。
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レオンは立ち止まった。
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誰かいる。
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地下の奥。
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魔力。
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微かだが感じる。
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レオンは進む。
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石造りの通路。
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そして。
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封印広間。
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中央の魔法陣。
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その前に。
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人影。
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黒ローブ。
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老人だった。
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例の人物。
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老人は振り返らない。
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「来ると思っていた」
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初めて聞く声。
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低い。
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静かな声。
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レオンは無言。
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老人も振り返らない。
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「時間がない」
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「封印は持たない」
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沈黙。
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レオンは魔法陣を見る。
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以前より。
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明らかに亀裂が増えていた。
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老人が続ける。
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「もう始まっている」
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「止められない」
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レオンの表情は変わらない。
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だが。
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少しだけ目が細くなる。
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その時だった。
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カラン。
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小さな音。
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広間入口。
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老人の視線が動く。
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レオンも振り向く。
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そこにいたのは。
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エルナ・ノクス。
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しまった。
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気付かれた。
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エルナも予想していなかった。
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地下。
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レオン。
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黒ローブ。
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全部が同じ場所にいる。
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数秒。
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誰も動かない。
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そして。
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老人が初めて振り返った。
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その瞬間。
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レオンの目が僅かに変わる。
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まずい。
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次の瞬間。
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老人の周囲に巨大な魔法陣。
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転移魔法。
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光。
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老人が消える。
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同時に。
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地下全体が揺れた。
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ゴォォォォォッ!!
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封印陣。
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巨大な亀裂。
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今までで最大。
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エルナが剣を抜く。
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レオンは魔法陣を見る。
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そして。
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初めて。
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焦ったような表情を浮かべた。
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エルナは見逃さなかった。
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今まで何が起きても動かなかった男。
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そのレオンが。
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初めて感情を見せた。
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封印の奥で、
何かが目を開こうとしていた。




