黒髪の先輩
実技試験二日目。
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学園は朝から賑わっていた。
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昨日の試合。
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その話題も少しだけ出ている。
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だが。
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主役は相変わらずアルフォンス。
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そしてダリウス。
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レオンの話などすぐ消える。
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「偶然だろ」
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「たまたま勝っただけ」
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そんな評価。
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レオン自身も気にしていない。
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訓練場。
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次々と試合が行われる。
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歓声。
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魔法。
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剣技。
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学園らしい光景だった。
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その時。
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バルトが名前を呼ぶ。
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「エルナ・ノクス!」
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空気が少し変わる。
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一年生たちがざわつく。
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「誰だ?」
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「知らないのか」
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「二年最強候補だぞ」
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訓練場へ現れた少女。
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黒髪。
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長身。
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無表情。
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どこか。
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レオンと似ていた。
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しかし。
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周囲へ与える印象は全く違う。
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冷たい。
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近寄り難い。
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そんな雰囲気。
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試合開始。
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相手は三年生。
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実力者。
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だが。
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開始から十秒。
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勝負は終わった。
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影。
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地面から伸びた黒い影が相手の動きを封じる。
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次の瞬間。
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首元へ剣。
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終了。
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観客席が静まる。
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誰も何が起きたか分からない。
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「勝者、エルナ・ノクス」
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歓声すら遅れる。
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圧倒的だった。
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観客席。
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アルフォンスが目を細める。
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強い。
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少なくとも。
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自分と同格。
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ダリウスも同じ感想だった。
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その時。
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エルナが振り返る。
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視線。
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レオン。
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会場の端。
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いつもの場所。
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数秒。
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レオンも気付く。
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視線が交わる。
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だが。
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レオンは興味なさそうに目を逸らした。
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エルナの眉が僅かに動く。
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「……」
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面白くない。
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彼女は昨日の試合を見ていた。
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誰も見ていない動き。
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誰も気付いていない技術。
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だが。
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エルナだけは見ていた。
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あれは偶然じゃない。
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隠している。
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間違いなく。
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その時。
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最上段。
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カイルがまた寝転がっていた。
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隣には長身の男。
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銀髪を後ろで束ねている。
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「また寝てるんですか」
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穏やかな声。
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カイルが目を開ける。
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「リヒト先輩」
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リヒト・アルゼイン。
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三年生。
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学園上位戦力。
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リヒトは苦笑する。
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「試験ぐらい見なさい」
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「めんどくさい」
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「後で怒られますよ」
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「先輩が何とかして」
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「嫌です」
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いつものやり取り。
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そして。
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リヒトの視線が下へ向く。
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レオン。
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無表情な一年生。
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「気になるんですか?」
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カイルは少しだけ考える。
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「んー」
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数秒。
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そして。
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「別に」
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そう言いながら。
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もう一度レオンを見る。
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「ただ」
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「なんか変」
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リヒトが首を傾げる。
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「変?」
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カイルは笑う。
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「説明できない」
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それだけだった。
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しかし。
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学園最強の直感は、
少しずつレオンへ向き始めていた。




