問題児の試験
訓練場。
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歓声が響く。
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予選は終盤へ入っていた。
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そして。
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ついにその名前が呼ばれる。
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「レオン・クロイツ!」
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一瞬。
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会場がざわつく。
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「あいつ出るのか」
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「棄権じゃないの?」
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「久しぶりに見たな」
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笑い声。
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レオンはゆっくり立ち上がる。
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いつも通り。
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無表情。
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対戦相手は一年生。
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特別強くはない。
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だが。
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レオンより上位だった。
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「よろしく」
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相手が頭を下げる。
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レオンは軽く頷く。
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試合開始。
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開始直後。
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相手が魔法陣を展開。
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風属性。
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鋭い風刃が飛ぶ。
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観客が見守る。
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しかし。
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レオンは避けるだけ。
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一歩。
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また一歩。
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攻撃しない。
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「なんだあいつ」
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「逃げてるだけじゃね?」
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観客席から笑い声。
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ダリウスが眉をひそめる。
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「……」
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気に入らない。
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戦う気が見えない。
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その時。
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相手が焦れる。
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「なめるな!」
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風魔法を強化。
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一気に距離を詰める。
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そして。
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剣を振る。
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次の瞬間。
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レオンが半歩動いた。
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カン。
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相手の剣が弾かれる。
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静寂。
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誰も見えなかった。
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何をした。
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レオン自身も驚いているように見えない。
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ただ。
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自然に。
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当然のように。
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相手は体勢を崩す。
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バルトが即座に判定する。
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「勝者、レオン・クロイツ!」
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数秒の沈黙。
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そして。
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「え?」
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観客席がざわめく。
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何が起きた。
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誰も分からない。
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アルフォンスだけが目を細める。
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今の動き。
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速かった。
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だが。
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魔法ではない。
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純粋な技術。
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ダリウスも見ていた。
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しかし。
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理解できない。
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「偶然だ」
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自分に言い聞かせる。
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観客席最上段。
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カイルは寝転がったまま空を見ていた。
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「へぇ」
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初めて。
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少しだけ笑う。
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「なるほど」
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誰にも聞こえない声。
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そして。
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再び目を閉じる。
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その頃。
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レオンは試合場を後にしていた。
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周囲の視線。
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笑い声。
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噂話。
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全部変わらない。
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それでよかった。
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目立つ必要はない。
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知られる必要もない。
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だが。
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誰もいない通路を歩くレオンは、
気付いていなかった。
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二階の渡り廊下。
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黒髪の少女が一人。
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無言でこちらを見ていることに。
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長い黒髪。
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冷たい瞳。
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エルナ・ノクス。
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彼女だけは、
今の試合で違うものを見ていた。
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「……隠してる」
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小さな呟きは、
誰にも届かなかった。




