実技試験
地下の調査から数日。
⸻
学園は不自然なほど平穏だった。
⸻
何も起きない。
⸻
だからこそ不気味だった。
⸻
⸻
そんな中。
⸻
生徒たちは別の話題で盛り上がっていた。
⸻
実技試験。
⸻
学期末に行われる恒例行事。
⸻
順位が発表される。
⸻
成績にも大きく影響する。
⸻
⸻
訓練場。
⸻
大勢の生徒が集まっていた。
⸻
「今年もアルフォンスだろ」
⸻
「いや、今年はダリウスがやるかもしれない」
⸻
「無理だろ」
⸻
⸻
名前が挙がる。
⸻
アルフォンス。
⸻
そして。
⸻
ダリウス。
⸻
⸻
訓練場の中央。
⸻
赤銅色の髪の少年が剣を担いでいた。
⸻
ダリウス・ヴァルハルト。
⸻
同学年最上位。
⸻
アルフォンスに次ぐ実力者。
⸻
⸻
「今年こそ勝つ」
⸻
⸻
隣。
⸻
マルク・ジードが笑う。
⸻
「当然だろ」
⸻
「アルフォンス以外に勝てる奴なんていないしな」
⸻
⸻
その時。
⸻
マルクの視線が向く。
⸻
⸻
レオン。
⸻
⸻
いつものように一人。
⸻
端の方に立っている。
⸻
⸻
マルクが笑う。
⸻
「見ろよ」
⸻
「問題児様のお出ましだ」
⸻
⸻
周囲の生徒も笑う。
⸻
⸻
「今年も最下位かな」
⸻
「途中で寝るんじゃね?」
⸻
⸻
ダリウスは何も言わない。
⸻
だが。
⸻
不機嫌そうだった。
⸻
⸻
「気に入らん」
⸻
⸻
突然呟く。
⸻
⸻
マルクが首を傾げる。
⸻
「何が?」
⸻
⸻
「やる気がない奴が学園にいることだ」
⸻
⸻
視線はレオン。
⸻
⸻
「才能があろうが無かろうが関係ない」
⸻
⸻
「努力しない奴は嫌いだ」
⸻
⸻
その言葉を。
⸻
レオンは聞いていた。
⸻
⸻
だが。
⸻
何も言わない。
⸻
⸻
いつものように。
⸻
興味がない。
⸻
⸻
訓練場上段。
⸻
セシリアはその様子を見ていた。
⸻
⸻
最近。
⸻
気になる。
⸻
⸻
レオン。
⸻
⸻
地下。
⸻
封印。
⸻
禁書。
⸻
⸻
全部が繋がりそうで。
⸻
繋がらない。
⸻
⸻
その時だった。
⸻
バルト教官が前へ出る。
⸻
⸻
「静かにしろ!」
⸻
⸻
訓練場が静まる。
⸻
⸻
「本日より実技試験を開始する!」
⸻
⸻
歓声。
⸻
⸻
魔法戦。
⸻
剣技。
⸻
模擬戦。
⸻
⸻
学園最大の実力行事。
⸻
⸻
「まずは予選だ!」
⸻
⸻
生徒たちが動き出す。
⸻
その中で。
⸻
レオンだけが空を見上げていた。
⸻
⸻
青空。
⸻
⸻
その向こう。
⸻
誰にも見えない場所で。
⸻
何かが動いている気がした。
⸻
⸻
そして。
⸻
訓練場の最上段。
⸻
誰も気付かない席。
⸻
⸻
小柄な男子生徒が寝転がっていた。
⸻
⸻
「始まった?」
⸻
⸻
欠伸。
⸻
⸻
「めんどくさいなぁ」
⸻
⸻
周囲の教師が見て見ぬふりをする。
⸻
⸻
それだけで。
⸻
彼が何者か分かる者には分かった。
⸻
⸻
学園最強。
⸻
カイル。
⸻
⸻
しかし。
⸻
レオンは見上げない。
⸻
カイルも見ない。
⸻
⸻
二人の視線は交わらない。
⸻
まだ。




