消えた日誌
地下から戻った翌日。
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学園は変わらない。
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生徒たちは笑う。
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授業もある。
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食堂も騒がしい。
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平和だった。
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だが。
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セシリアたちは知っている。
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地下には何かがある。
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そして。
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何かが目覚めている。
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職員室。
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エドガー学園長を交え、
昨夜の報告が行われていた。
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机の上。
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例の日誌。
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封印管理記録。
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そして議事録。
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学園長は静かに目を通していた。
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表情は変わらない。
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だが。
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どこか険しい。
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「本物だと思いますか」
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バルトが聞く。
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「分からん」
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学園長は答えた。
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「だが偽物とも思えん」
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静かな声。
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そして。
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最後のページ。
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【元教員アーヴェル・グランツ】
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その文字を見つめる。
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「聞いたことがある」
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三人が顔を上げる。
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「本当ですか!?」
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セシリアが身を乗り出す。
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学園長は頷く。
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「かなり昔の話だ」
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「私も名前しか知らん」
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「優秀な教師だったらしい」
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「らしい?」
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アルフォンスが眉をひそめる。
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「記録が残っておらん」
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まただった。
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記録がない。
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禁書。
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図面。
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封印記録。
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全て消えている。
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学園長はため息を吐く。
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「今夜、正式調査を行う」
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「それまでは誰にも話すな」
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三人は頷いた。
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その日の夜。
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職員室。
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調査準備が進められていた。
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しかし。
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異変はそこで起きた。
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「ない」
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教師の一人が呟く。
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「どうした」
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「日誌がない」
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空気が止まる。
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机の上。
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確かに置いてあった。
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封印管理日誌。
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だが。
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消えていた。
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誰も触っていない。
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誰も部屋を出ていない。
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なのに。
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なくなっている。
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「馬鹿な……」
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バルトが立ち上がる。
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部屋を探す。
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棚。
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机。
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引き出し。
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どこにもない。
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完全に消えていた。
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その時。
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窓が揺れた。
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カタッ。
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全員が振り向く。
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窓の外。
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校庭。
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そこに。
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誰かが立っていた。
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黒いローブ。
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顔は見えない。
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一瞬。
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こちらを見た気がした。
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そして。
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消えた。
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教師たちは慌てて外へ向かう。
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だが。
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誰もいない。
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足跡すらない。
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静かな夜。
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ただ一つ。
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校庭の地面に落ちていたものがある。
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古い紙切れ。
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バルトが拾う。
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そこには短く書かれていた。
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【封印は守られるべきだった】
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誰が書いたのか。
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誰が持ち去ったのか。
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誰も分からない。
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だが。
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地下の秘密を知る者が、
学園の中にいる。
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その事だけは、
はっきりしていた。




