偽りの封印
地下広間。
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誰も動かなかった。
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壁に刻まれた文字。
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【封印は既に破られている】
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見間違いではない。
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確かに刻まれている。
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しかも。
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最近。
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石壁の削れ方を見れば分かる。
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何十年も前のものではない。
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「誰が書いた……」
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アルフォンスが呟く。
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答える者はいない。
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だが。
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一つだけ分かることがある。
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この場所には誰かが来ている。
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三日前どころではない。
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最近まで。
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セシリアは壁へ触れる。
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冷たい。
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だが。
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微かに魔力が残っている気がした。
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「教官」
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「なんだ」
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「封印が破られているなら、何が封印されていたんですか」
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沈黙。
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バルトは首を横に振る。
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「知らん」
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本当に知らない顔だった。
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もし知っていたなら、
もっと早く動いている。
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つまり。
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教師たちですら知らない。
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学園そのものが隠している秘密。
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その可能性が強くなった。
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その時。
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アルフォンスが広間の奥を見ていた。
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「こっちだ」
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二人が振り向く。
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壁際。
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崩れた棚。
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その奥。
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小さな机。
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何かが置かれている。
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近付く。
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古い日誌だった。
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表紙は破れている。
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名前も読めない。
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だが。
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中身は残っていた。
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セシリアがページをめくる。
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文字。
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記録。
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報告。
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封印管理日誌。
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三人の呼吸が止まる。
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これだ。
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彼らが探していたもの。
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ページをめくる。
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しかし。
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途中から破られている。
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まただ。
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重要な部分だけが消えている。
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「くそっ……」
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アルフォンスが舌打ちする。
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何度目だ。
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禁書。
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記録。
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図面。
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全部そうだ。
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誰かが意図的に隠している。
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その時。
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セシリアの手が止まる。
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最後の方。
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破られていないページ。
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そこには一文だけ残っていた。
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【封印対象の覚醒を確認】
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三人が固まる。
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ページをめくる。
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次のページ。
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破られている。
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その次。
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破られている。
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さらに次。
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破られている。
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肝心な部分だけ。
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全て。
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「覚醒……?」
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セシリアが呟く。
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封印対象。
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つまり。
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何かがいた。
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そして。
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目覚めた。
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その瞬間。
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ゴォォォ……
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広間全体が揺れた。
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三人が身構える。
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魔力。
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巨大な魔力が流れた。
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一瞬だけ。
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そして消える。
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「今のは……」
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アルフォンスが剣を握る。
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バルトも周囲を警戒する。
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だが。
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何もいない。
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静寂。
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しかし。
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全員理解していた。
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気のせいではない。
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何かがいる。
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この学園のどこかに。
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そして。
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それは既に目覚めている。




