3日前の記録
地下広間。
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誰も動かなかった。
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三日前。
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その言葉だけが頭の中を回る。
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【第七封印の状態 正常】
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記録は古い。
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紙も古い。
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だが。
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日付だけが新しかった。
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「あり得ないだろ……」
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アルフォンスが呟く。
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誰かがいた。
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三日前。
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この場所に。
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セシリアは紙を見つめる。
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何度見ても変わらない。
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三日前。
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間違いなくそう書かれている。
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「教師でしょうか」
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小さく言う。
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バルトは首を振った。
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「違う」
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即答。
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「少なくとも俺は知らん」
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教師全員が知らないとは言えない。
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だが。
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こんな施設を管理しているなら、
何かしら話は聞くはずだ。
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「つまり」
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アルフォンスが言う。
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「誰かが勝手に出入りしている」
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誰も否定しない。
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その時。
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セシリアの視線が止まる。
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魔法陣。
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中央。
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壊れた封印陣。
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「待ってください」
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二人が振り向く。
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「正常って書いてありますよね」
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「そうだな」
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「でも封印は壊れています」
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沈黙。
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確かにそうだった。
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目の前にある。
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巨大な亀裂。
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破損。
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封印陣は正常には見えない。
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バルトが眉をひそめる。
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「正常だったのか」
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「正常じゃなかったのか」
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どちらだ。
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紙を見つめる。
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記録を見つめる。
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答えは出ない。
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その時だった。
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ピタッ。
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空気が止まる。
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全員が顔を上げる。
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何かいる。
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そんな感覚。
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誰かに見られている。
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広間の奥。
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暗闇。
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アルフォンスが剣を抜く。
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「誰だ!」
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声が響く。
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返事はない。
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静寂。
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しかし。
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気配だけはある。
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確かに。
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バルトが一歩前へ出る。
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魔法を展開。
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光球。
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広間の奥を照らす。
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だが。
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誰もいない。
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壁。
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床。
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天井。
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何もない。
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「気のせいか……」
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そう言いかけた時。
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セシリアが固まった。
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壁。
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光に照らされた石壁。
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そこに。
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何かが刻まれている。
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文字。
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古代文字ではない。
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新しい。
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最近刻まれたもの。
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三人は近付く。
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そして。
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そこに書かれていた内容を見て、
言葉を失った。
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【封印は既に破られている】
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たった一文。
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だが。
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それだけで十分だった。
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セシリアの背筋が冷える。
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アルフォンスも黙る。
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バルトの表情も消える。
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もし本当なら。
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彼らは今。
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封印施設の調査をしているのではない。
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封印が失敗した後の場所にいる。
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誰も喋らない。
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地下の空気だけが、
重く沈んでいた。




