封印区画
夕暮れ。
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学園は静かだった。
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生徒たちは帰宅し始めている。
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だが。
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旧校舎へ向かう三人の姿があった。
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セシリア。
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アルフォンス。
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バルト教官。
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誰も言葉を発しない。
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理由は単純だった。
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全員緊張している。
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ポケットの中。
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一本の鍵。
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【封印区画】
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そう刻まれていた。
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偶然とは思えない。
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あまりにも出来過ぎている。
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旧校舎。
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相変わらず人気はない。
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夕日に照らされた廊下。
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足音だけが響く。
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やがて。
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例の扉へ到着する。
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以前調査した。
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開かなかった扉。
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セシリアが息を呑む。
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アルフォンスも表情を引き締める。
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バルトが鍵を取り出した。
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「開くと思うか?」
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誰も答えない。
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鍵穴へ差し込む。
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ゆっくり回す。
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カチッ。
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三人が固まる。
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開いた。
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「……」
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「……」
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「……」
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長い沈黙。
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本当に開いた。
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アルフォンスが扉へ手を掛ける。
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ゆっくり押す。
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ギギギ……
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重い音。
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長年閉ざされていた扉が開く。
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その先。
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下へ続く階段。
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暗闇。
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冷たい空気。
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地下だ。
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三人は顔を見合わせる。
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そして。
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降りる。
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石造りの通路。
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壁には古代文字。
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セシリアには読めない。
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アルフォンスにも。
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バルトにも。
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だが。
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ただならぬ場所だと分かる。
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しばらく進む。
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すると。
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大きな部屋へ辿り着いた。
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円形の広間。
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中央には巨大な魔法陣。
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しかし。
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壊れている。
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「封印……か?」
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アルフォンスが呟く。
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床には傷跡。
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壁には亀裂。
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何かが暴れたような痕跡。
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セシリアが周囲を見渡す。
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そして気付く。
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「これ……」
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壁。
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文字が刻まれている。
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古い記録。
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バルトが近付く。
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埃を払う。
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そこに書かれていたのは。
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【第七封印区画】
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三人の表情が変わる。
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第七。
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ということは。
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他にもある。
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「学園の地下だけじゃない……」
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セシリアが呟く。
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学園は封印施設だった。
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その可能性が浮かぶ。
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その時。
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ゴォッ……
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風。
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いや違う。
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魔力。
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広間の奥。
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暗闇。
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何かが揺れた。
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三人が身構える。
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だが。
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次の瞬間。
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何もなくなる。
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静寂。
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「今のは……」
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誰も答えられない。
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そして。
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広間の隅。
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一枚の古い紙が落ちていた。
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バルトが拾う。
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劣化している。
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ほとんど読めない。
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だが。
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最後の一文だけは残っていた。
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【第七封印の状態 正常】
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その記録の日付は。
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三日前だった。
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空気が凍る。
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あり得ない。
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この場所は数十年使われていないはずだ。
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誰も入れないはずだった。
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なのに。
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三日前。
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誰かがここにいた。
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地下の静寂が、
まるで三人を見つめているようだった。




