古い鍵
雨が止んだ。
⸻
久しぶりの青空。
⸻
学園にも少しだけ活気が戻っていた。
⸻
だが。
⸻
セシリアたちの中では終わっていない。
⸻
禁書。
⸻
地下。
⸻
開かない扉。
⸻
そして消えた記録。
⸻
何一つ解決していない。
⸻
⸻
放課後。
⸻
生徒会室。
⸻
セシリアは資料を整理していた。
⸻
机の上には大量の紙。
⸻
ほとんどが意味を持たない。
⸻
だが捨てるわけにもいかない。
⸻
その時。
⸻
コンコン。
⸻
扉が開く。
⸻
アルフォンスだった。
⸻
「見つかった」
⸻
開口一番だった。
⸻
セシリアが顔を上げる。
⸻
「何がですか」
⸻
アルフォンスは一枚の紙を机へ置いた。
⸻
古い資料。
⸻
かなり劣化している。
⸻
「図書館の倉庫にあった」
⸻
⸻
セシリアは目を通す。
⸻
学園備品管理台帳。
⸻
今から三十年以上前のもの。
⸻
特に変わった内容はない。
⸻
椅子。
⸻
机。
⸻
教材。
⸻
その中で。
⸻
一行だけ目が止まる。
⸻
⸻
【地下封印区画予備鍵 一個】
⸻
⸻
「……」
⸻
セシリアは黙った。
⸻
アルフォンスも黙っている。
⸻
二人とも同じことを考えた。
⸻
地下封印区画。
⸻
存在する。
⸻
少なくとも昔は。
⸻
⸻
「鍵は?」
⸻
「記録だけだ」
⸻
アルフォンスは首を振る。
⸻
「保管場所も書かれていない」
⸻
⸻
その時。
⸻
再び扉が開く。
⸻
バルト教官だった。
⸻
「何かあったか」
⸻
⸻
数分後。
⸻
三人は資料を囲んでいた。
⸻
バルトも難しい顔をしている。
⸻
「地下封印区画か……」
⸻
小さく呟く。
⸻
⸻
「教官は知っていたんですか」
⸻
セシリアの問い。
⸻
バルトは首を横に振る。
⸻
「知らん」
⸻
即答だった。
⸻
「だが」
⸻
言葉を続ける。
⸻
「昔から妙な噂はあった」
⸻
⸻
地下がある。
⸻
立入禁止区域がある。
⸻
学園創設時から存在する施設がある。
⸻
⸻
全部。
⸻
証拠はなかった。
⸻
⸻
「噂だけだと思っていた」
⸻
バルトは資料を見る。
⸻
「どうやら違うらしい」
⸻
⸻
沈黙。
⸻
部屋が静かになる。
⸻
⸻
その時だった。
⸻
ガタッ。
⸻
棚の奥。
⸻
何かが落ちた。
⸻
全員が振り向く。
⸻
⸻
古い箱。
⸻
木製。
⸻
かなり傷んでいる。
⸻
誰も触っていない。
⸻
なのに落ちた。
⸻
⸻
アルフォンスが近付く。
⸻
箱を開ける。
⸻
中には。
⸻
一本の鍵。
⸻
⸻
三人とも言葉を失った。
⸻
古い。
⸻
だが保存状態は良い。
⸻
まるで最近まで使われていたように。
⸻
⸻
鍵には小さく文字が刻まれていた。
⸻
⸻
【封印区画】
⸻
⸻
誰も喋らない。
⸻
偶然とは思えなかった。
⸻
⸻
窓の外。
⸻
夕日が差し込む。
⸻
学園のどこかで。
⸻
長い間閉ざされていた何かが、
少しずつ動き始めていた。




