読まれなかった本
翌日。
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旧校舎の調査結果は公表されなかった。
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教師たちも口を閉ざしている。
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そのせいで。
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噂だけが大きくなっていた。
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「絶対何か隠してるだろ」
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「だから言ったじゃん」
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「幽霊だって」
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「それはない」
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笑い声。
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だが誰も本気ではない。
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本気になりたくないだけかもしれない。
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放課後。
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図書館。
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セシリアは調査資料を返却していた。
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禁書。
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二十年前の事件。
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旧校舎。
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調べるほど分からなくなる。
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そんな感覚だった。
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「すみません」
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司書へ声を掛ける。
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「何かありましたか?」
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「古い封印術の資料を探しているんですが」
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司書は少し考える。
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そして首を傾げた。
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「封印術ですか……」
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「何か気になることでも?」
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「いえ」
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少し迷った後、
司書は棚の奥を見る。
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「最近なんです」
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「最近?」
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「誰かが古い専門書を読んでいるんです」
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セシリアは反応する。
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「専門書?」
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「はい」
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司書は頷く。
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「古代結界理論」
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「封印術概論」
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「失われた術式」
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どれも。
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普通の生徒は読まない。
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いや。
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教師でも読まない。
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そんな本ばかり。
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「誰が読んでいるんですか」
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司書は困った顔をした。
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「分からないんです」
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「貸出記録は?」
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「残っていません」
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「え?」
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普通は残る。
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誰が借りたか。
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いつ借りたか。
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全て記録される。
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だが。
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その本だけ。
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なぜか記録がない。
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セシリアは嫌な予感を覚えた。
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まただ。
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記録。
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今回も記録がない。
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禁書と同じ。
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二十年前の事件と同じ。
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その頃。
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中庭。
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アルフォンスは自主訓練を終えていた。
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汗を拭く。
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そしてベンチへ座る。
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ふと。
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近くの机に視線が向く。
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そこには本が置かれていた。
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誰かの忘れ物らしい。
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題名が見える。
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『失われた術式』
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聞いたこともない本。
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興味本位で手に取る。
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ページをめくる。
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難しい。
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理解できない。
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だが。
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途中で目が止まった。
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古代封印術は学園地下へ応用された形跡がある
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「学園地下?」
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思わず呟く。
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次のページをめくる。
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だが。
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そこだけ破られていた。
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綺麗に。
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意図的に。
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アルフォンスは眉をひそめる。
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最近こういうことが多すぎる。
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破られた記録。
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消えた資料。
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存在しない図面。
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そして。
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学園地下。
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その時だった。
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風が吹く。
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ページがめくれる。
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最後のページ。
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そこには誰かの書き込みがあった。
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古い文字。
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かすれている。
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だが読めた。
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開いてはならない
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たったそれだけ。
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アルフォンスは本を閉じた。
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空を見上げる。
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夕日が沈み始めている。
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最近。
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知れば知るほど。
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学園が分からなくなっていく。
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そんな気がしていた。




