開かずの扉
旧校舎。
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最近その言葉を聞かない日はない。
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幽霊。
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灯り。
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人影。
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様々な噂が飛び交っている。
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だが。
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誰も真相を知らない。
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放課後。
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セシリアは旧校舎前へ来ていた。
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もちろん一人ではない。
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隣にはアルフォンス。
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そして。
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バルト教官。
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教師公認の調査だった。
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「本当に行くんですか」
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セシリアが聞く。
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「行く」
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バルトは即答した。
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教師としても放置できない。
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最近の異常は明らかに増えている。
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三人は旧校舎へ入る。
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ギィ。
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古い扉が軋む。
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空気が重い。
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長年使われていない建物特有の匂い。
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廊下は薄暗い。
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静かだった。
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あまりにも。
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「何もないな」
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アルフォンスが呟く。
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確かにそうだ。
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灯りの痕跡もない。
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侵入者の形跡もない。
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ただの古い校舎。
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それだけ。
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しばらく歩く。
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そして。
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セシリアが立ち止まった。
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「教官」
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指差す。
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廊下の奥。
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一枚の扉。
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他の扉より大きい。
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そして。
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妙だった。
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古い建物なのに。
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その扉だけ綺麗だった。
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まるで最近まで使われていたように。
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三人は近付く。
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「資料室か……?」
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プレートは掠れて読めない。
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アルフォンスが取っ手を掴む。
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回らない。
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鍵が掛かっている。
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「開かないな」
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バルトも確認する。
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魔法による封鎖。
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普通の鍵ではない。
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セシリアは違和感を覚えた。
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誰も使っていない校舎。
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なのに。
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なぜここだけ封鎖されている。
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その時だった。
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ピシッ。
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微かな音。
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三人が顔を上げる。
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天井。
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いや。
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壁。
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何かの魔法陣が一瞬だけ光った。
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そして消える。
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「見たか」
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バルトの声。
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二人は頷く。
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見間違いではない。
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確実に。
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今。
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何かが反応した。
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アルフォンスは剣へ手を添える。
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セシリアも魔法陣を展開する。
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緊張。
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だが。
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何も起きない。
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静寂だけ。
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数分後。
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調査は打ち切られた。
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証拠がない。
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扉も開かない。
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強引に壊す許可もない。
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結局。
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何も分からなかった。
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帰り道。
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セシリアは振り返る。
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夕日に染まる旧校舎。
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窓は暗い。
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誰もいない。
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だが。
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本当にそうなのだろうか。
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そんな気がしてならなかった。
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その頃。
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学園のどこか。
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静かな図書館。
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窓際の席。
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誰かが本を閉じた。
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ページの題名。
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『古代封印術概論』
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誰も気付かない。
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その本が、
数十年間誰にも読まれていなかったことを。




