見ていた者
翌朝。
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学園には妙な空気が流れていた。
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誰かが見た。
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何かがいた。
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そんな噂。
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証拠はない。
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だが。
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噂は広がる。
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「旧校舎の窓だったらしい」
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「やっぱり誰かいるんじゃないか?」
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「教師じゃないの?」
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「だったら隠れる必要ないだろ」
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生徒たちは好き勝手に話している。
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いつも通り。
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学園の日常。
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しかし。
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セシリアは違った。
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昨夜。
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彼女も見ていた。
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寮の窓から。
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旧校舎。
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一瞬だけ光った青白い灯りを。
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距離が遠かった。
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だから確信はない。
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だが。
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見た。
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確かに。
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昼休み。
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生徒会室。
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セシリアは考えていた。
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最近起きていること。
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禁書。
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消えた記録。
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結界異常。
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旧校舎。
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そして。
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誰かが何かを隠している。
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「……」
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机を見つめる。
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すると。
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コンコン。
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扉が開く。
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アルフォンスだった。
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「少し話がある」
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珍しい。
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セシリアは頷く。
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数分後。
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二人は向かい合って座っていた。
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「昨夜、旧校舎へ行った」
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いきなりだった。
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セシリアは眉をひそめる。
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「規則違反ですよ」
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「分かっている」
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アルフォンスは即答した。
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珍しく真面目な顔をしている。
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「灯りを見た」
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沈黙。
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セシリアの表情が変わる。
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「……本当に?」
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「見間違いじゃない」
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断言だった。
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そして続ける。
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「バルト教官も見ている」
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その瞬間。
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セシリアの背筋が冷える。
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教師まで見ている。
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なら。
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ただの噂ではない。
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二人はしばらく話し合った。
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だが。
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結論は出ない。
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情報が少なすぎる。
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分かるのは。
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旧校舎で何かが起きていることだけ。
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放課後。
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セシリアは一人で校舎を歩いていた。
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窓の外。
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雨上がりの空。
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生徒たちが帰っていく。
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その中に。
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レオンがいた。
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一人で。
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いつも通り。
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誰とも話さない。
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誰とも目を合わせない。
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ただ帰っていく。
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その姿を見て。
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ふと思う。
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レオンは。
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この件を知っているのだろうか。
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最近。
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何かあると真っ先に頭へ浮かぶ。
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嫌なことだ。
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最初はただ嫌いだった。
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それだけだった。
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なのに。
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今は違う。
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気になる。
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理解できない。
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分からない。
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だから。
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余計に気になる。
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その夜。
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旧校舎。
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誰もいないはずの廊下。
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静寂。
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風もない。
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そして。
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奥の暗闇で。
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何かが動いた。
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人影。
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ゆっくりと。
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誰にも気付かれず。
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暗闇の奥へ消えていく。
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その姿を見ていた者は、
誰もいなかった。




