旧校舎の灯り
旧校舎の噂は広がり続けていた。
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夜になると灯りが見える。
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誰かが歩いている。
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人の声が聞こえる。
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どれも証拠はない。
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だが。
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噂だけは増えていく。
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「また旧校舎か」
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昼休み。
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食堂。
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男子生徒が苦笑する。
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「今度は灯りらしいぞ」
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「幽霊も大変だな」
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笑い声。
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周囲は半分冗談。
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半分本気。
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最近の学園は不気味だった。
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禁書事件。
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夜間警報。
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結界異常。
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誰も原因を知らない。
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だから噂が広がる。
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アルフォンスは黙って食事をしていた。
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以前なら相手にしなかった。
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だが今は違う。
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妙な違和感が積み重なっている。
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気付けば。
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噂を無視できなくなっていた。
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その日の夜。
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アルフォンスは寮を抜け出した。
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確認するため。
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ただそれだけ。
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旧校舎へ向かう。
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夜風が吹く。
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人の気配はない。
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当然だ。
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立入禁止区域。
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こんな時間に来る者などいない。
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本来なら。
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旧校舎が見えてくる。
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暗い。
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静かだ。
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何もない。
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やはり噂か。
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そう思った。
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その時。
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ピタッ。
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アルフォンスが足を止める。
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窓。
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二階。
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一瞬だけ。
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灯りが見えた。
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青白い光。
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ほんの数秒。
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そして消えた。
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「……!」
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見間違いではない。
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確かに。
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今。
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何かがいた。
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アルフォンスは校舎へ近付く。
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慎重に。
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剣へ手を添える。
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そして。
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旧校舎の入口へ到着する。
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鍵は閉まっている。
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封印結界も正常。
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侵入できるはずがない。
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なのに。
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灯りはあった。
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「どうなっている……」
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その時だった。
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ガサッ。
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物音。
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アルフォンスが振り返る。
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木々の奥。
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人影。
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黒い影。
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誰かいる。
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距離は遠い。
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顔は見えない。
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だが。
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相手もこちらに気付いたらしい。
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影が動く。
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森の奥へ。
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消えた。
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アルフォンスは追いかける。
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全力で。
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だが。
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見失った。
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早すぎる。
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人間とは思えない。
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数分後。
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諦めて戻ろうとした時。
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前方から足音が聞こえた。
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バルト教官だった。
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「アルフォンス!?」
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「教官……」
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気まずい沈黙。
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完全に規則違反だった。
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だが。
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バルトは怒らなかった。
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代わりに聞く。
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「お前も見たのか」
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アルフォンスは顔を上げる。
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「灯りですか」
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バルトは頷いた。
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そして。
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二人とも旧校舎を見る。
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暗闇。
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何もない。
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だが。
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確かに見た。
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見間違いではない。
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「……」
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「……」
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二人とも黙る。
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嫌な予感だけが残る。
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その夜。
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旧校舎の灯りを見た者が、
もう一人いたことを。
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二人は知らない。




