破られた記憶
朝。
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雨だった。
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窓を叩く雨音が校舎に響く。
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生徒たちは憂鬱そうな顔で登校していた。
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「最悪だな」
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「実技なくなるか?」
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「それはないだろ」
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他愛もない会話。
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学園はいつも通りだった。
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少なくとも。
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表面上は。
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生徒会室。
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セシリアは資料整理をしていた。
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禁書事件。
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結界異常。
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旧校舎。
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最近はそんな資料ばかり見ている。
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その時。
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机の上の紙が目に入る。
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二十年前の事件記録。
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昨日まで何度も見ていたもの。
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ふと。
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違和感を覚えた。
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「……あれ?」
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ページ数。
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一枚少ない。
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いや。
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元から破られていた。
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そう思っていた。
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だが違う。
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昨日と今日で破られている場所が違う。
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「そんなはず……」
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急いで確認する。
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確かに違う。
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昨日までは残っていた文章が消えている。
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新しく破られている。
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誰かが。
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最近になって。
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破った。
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セシリアは立ち上がる。
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すぐに図書館へ向かった。
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図書館。
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司書も驚いていた。
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「そんな……」
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「昨日はありましたよね?」
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「ありました」
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確信。
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誰かが侵入している。
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しかも。
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学園の記録を狙って。
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その頃。
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職員室。
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バルト教官は報告を受けていた。
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記録の改ざん。
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またか。
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最近増えている。
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異常が。
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一つ一つは小さい。
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だが。
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確実に増えている。
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まるで。
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何かが痕跡を消しているように。
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「二十年前か……」
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バルトは呟く。
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古い記録。
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そして禁書。
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偶然とは思えなかった。
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昼休み。
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学園内では別の話題が流れていた。
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「聞いたか?」
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「何を?」
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「また旧校舎だよ」
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男子生徒が声を潜める。
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「昨夜、人影を見たらしい」
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「またか」
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「今度は教師が見たって」
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女子生徒が顔をしかめる。
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「怖いこと言わないでよ」
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噂はどんどん広がっていく。
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幽霊。
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怪人。
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夜の徘徊者。
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好き勝手に。
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放課後。
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雨はまだ降っていた。
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セシリアは廊下を歩いている。
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窓の外。
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灰色の景色。
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その時だった。
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階段の踊り場。
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誰かとすれ違う。
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黒髪。
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レオン。
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いつも通り無表情。
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「……」
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「……」
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数秒。
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沈黙。
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レオンは軽く会釈した。
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そして通り過ぎる。
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ただそれだけ。
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なのに。
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セシリアは振り返った。
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なぜだろう。
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最近。
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あの背中を見ると違和感を覚える。
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問題児。
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嫌われ者。
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そう思っている。
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思っているはずなのに。
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どこか。
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無理をしているように見えた。
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雨が降る。
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静かに。
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誰にも気付かれないまま。
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学園の秘密は少しずつ姿を現し始めていた。




