26/30
エモシアン・バザール
レイが訪れたのは失感情遺跡エモシアン・バザールだった。
感情墓荒らしが掘り起こした屍者の感情を買い取った《記憶遺物商人》が非合法の闇市を開いていた。
パイプをくゆらせた記憶遺物商人が盗掘された感情遺物を並べていた。
透明な樹脂に封じ込められた一粒の純粋な悲しみ、青白い光を放つ小さな後悔、パピルスに似た素材に刻まれた名も知らぬ誰かの記憶の断片。
感情が封じられた遺物が安っぽい値札とともに陳列されている。
禁じられた感情の密売も行われているようだが、フードを目深に被ったレイはバザールの喧騒にも目もくれず、人波を掻き分けていく。
レイが探しているのは誰の感情でもなかった。
黒いベルベットの上に宝飾品や装飾具を並べている遺物商と目が合った。
片目にだけ黒曜石を埋めた商人がレイを品定めするように見つめた。
べったりと血がこびりついたネックレス、切っ先の折れた刀剣、今にも呪われそうな魔道具など、どれも曰くがありそうだが、探している物は他でもない。
「いらっしゃい。何をお探しで」
レイは周囲の遺物には目もくれず、低い声で用件を切り出した。
「――指輪を探している」




