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俺に『死ね』って言ってんの?

テレビを付けるとニュースでネットカフェの立てこもり事件がやっていた。容疑者の男は「俺はイル・ディラストだ」と供述しており、今回のネットカフェ店員に行った強姦致傷罪の犯行を認めている。


「イル・ディラストは裏社会では愛のある死神として有名で、強姦致死傷を繰り返し、一部の若者からは崇拝的に支持されているんです。今回の事件は、イル・ディラストに強い憧れを抱いた犯人が、イル・ディラストと自分を同一視して犯行に及んでいて、このような犯罪はこれからもイル・ディラストがいる限り、繰り返されるんじゃないかと不安に思いますね」


コメンテーターが社会悪をわかったように語るのが鼻につく。


「俺に『死ね』って言ってんの?」


馬鹿らしくて笑えてきた。だって、悪いのはこんな腐った世界だから。


「イル・ディラストは何故、まだ捕まらないのでしょうか?」


「俺が愛をあげるから。みんな俺を逃がしてくれる」


俺しか知らない真実。憶測で話されるのは好きじゃない。


「警察は何をやっているの!?」


怒り狂って愚痴をこぼすように警察の無能さを嘆いたテレビの中の女性に、俺は俺の飼い主を一瞥してから


「ふふっ、俺のことを飼い慣らしてるね」


と嘲笑った。


「イル、珈琲入ったよ」


彼がマグカップ二つ、両手に持ちながら、俺の方に向かってくる。ソファ近くのローテーブルにそれらを徐に置いた。


「ありがとう、ご主人様」


ソファに座る俺の隣に座ってきた彼に、俺は感謝の言葉を述べながら、その頬にキスをした。


「ふふっ、イルはこんなにも良い子なのに、何でこんなにも悪く言われなきゃいけないんだろうね」


彼は盲目的に俺に惚れているような甘ったるい発言をして、その甘さを中和するようにブラックコーヒーを啜った。


「本当の俺は、ご主人様だけが知ってればいいよ」


俺はほんのり苦味がする甘いカフェラテを飲み込んだ。


「じゃあ、僕だけのイルだ!」


そう、俺と見つめ合ってキラキラとした微笑みを見せる。


「もうご主人様、可愛すぎるよ!」


俺は我慢できなくなって、彼にぎゅーっと抱きついていた。俺が抱き締めていると、彼は俺に身をゆだねて、頭を俺の肩に乗せてくる。


「イルに抱き締められてると安心する」


そう言って、気持ちよさそうに目を細めている。その無気力な表情に俺はどうしようもなく欲情してしまう。


「レイラ、好きだよ。どうしようもなく好き。レイラが俺のことを利用してるだけだとしても、好きだから」


俺は溢れる想いが止められなくて、ぎゅっと彼のことを掴んで、当たって砕ける告白をしていた。


「そっか。ふふっ、嬉しいね」


彼は俺の腕の中で眠りに落ちそうになりながら、当たり障りのない返答をした。こうなることは頭ではわかっていた。でも、感情が追い付かなくて、彼の方からも「好き」って言って欲しくて、俺は彼の唇にキスをした。


「……ごめん。されるの嫌だったよね?」


キスした瞬間、拒まれた時の記憶がフラッシュバックしてきて、自信なさげに後悔混じりにそう聞いた。俺がここまで恋愛において奥手になるとは思わなくて笑えたが、でも彼に対してそこまで本気なんだと思えると嬉しかった。


「ううん、イルだから大丈夫だよ」


そうやってまた、俺を惚れさせるようなことを言う。そうやってまた、俺を優しく包み込む。それがとてつもなく嬉しくもあり、胸の奥でジリジリと痛んだ。

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