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12話 等級測定







「あ、おかえり~」


 日が暮れた森の中から、ボロボロになった生徒達がトボトボとした足取りで出てきた。

 それを出迎えるルイスは、焚火の前で涼し気な顔をしている。


「疲れただろうね、さぁミルクでもお飲み」


 そう言ってコップに入れたミルクを三人に手渡した。

 フリーシェとリリックはそれを震える手で受け取り、メイアは不貞腐れた表情で受け取った。


「もーやだー汗臭いし土臭い~! はやくお風呂に入りたいー!」

「お前が泥の中に頭から突っ込んだからだろ……」

「だって仕方ないじゃない!」


「僕ももうヘトヘトだよぉ……途中で穴に落ちちゃったし」

「フリーシェも髪が汗でベトベトね」

「お前らなんかマシだろ。俺なんか川に流されたんだぞ……」


 各々愚痴をこぼす三人を眺めながら、ルイスは声を殺して笑っていた。

 鬼ごっこはもう、生徒達にとって散々なものだっただろう。


 メイアの魔眼によって、ルイスの位置は三十分に一度は見つかっていた。

 しかしいざ捕らえようとすれば木が邪魔で走る事もままならず、魔弾を撃っても当たらない。


 よしんばそれを避けたとしても、ルイスの結界で前を塞がれる。

 結界を避けていれば歩くのも険しい場所に追いやられ、いつの間にか見失う。


「ガイリックはこれを一人でやったんだよ、まぁその頃の私は今より弱かったけどね」

「勇者になるような人と比べられたら、たまったもんじゃねえな」

「それはそうだね、だけど大聖祭まで三か月ある。それまでに私を捕まえられるようになろうね」


 ルイスが微笑みながらリリックにそう伝えると、彼は舌を出して首を振った。

 今言ったことがどれだけ厳しいことなのか、ある程度理解したのだろう。


「先生~おんぶして~」

「もう、仕方ないなぁ」


 ルイスは焚火を消し、フリーシェを背負って学校を目指す。

 その後ろをリリックが続き、その十メートル以上後ろをメイアがトボトボと歩く。


 年頃な女の子にはきつかっただろう。


「ねぇ先生、アイニールはどこに行ったの?」


 背負っていたフリーシェが、ルイスの背に顔を埋めながらそんな問いを投げる。


「アイニールは少し調べなきゃならない事があってね」

「病気なの?」

「いや、後遺症と言った方がいいかな?」


 アイニールは現在、クロードの屋敷にいる。

 そこでクロードからノヴァの魂が抜けた事による後遺症を調べていた。


 旅行の間は特に問題もなかったため不要かと思ったが、それでも調べておくに越したことはないという判断だ。


「まぁ来週にはアイニールも特訓に参加できるよ、だから待っててあげようね」

「…………」

「フリーシェ?」


 返答がなく首だけで後ろを振り向くと、フリーシェは背に顔を埋めたまま寝息を立てていた。

 まだ十三歳の彼にしてみれば、今日の訓練は相当疲れたのだろう。


「……ゆっくりお休み」


 小さく声をかけて、ルイスは顔を前に向けた。






  ××××







 それから二ケ月半。

 ルイスは生徒に座学と魔法の基礎、そして鬼ごっこを一日ずつ交互に教え続けた。


 途中からアイニールも参加した事により、鬼ごっこ開始から二か月が経つ頃には、ルイスが二度捕まる日も出てきた。


 メイアの魔眼による索敵でルイスの位置を絞り、フリーシェ、リリック、そしてアイニールが体術を使って距離を詰める。


 追い込み漁のように移動して、ルイスの結界に邪魔されないポジションを探してはそこで待ち伏せして魔法を放つ。


 四人一組の部隊としては、ほぼ完璧に近いものだった。

 前衛のリリック、中衛のフリーシェとアイニール、後衛のメイア。


 それぞれがバランス良くお互いを補助していた。

 モチベーション維持のため最初の数回はわざと捕まったりもしたのだが、後半は本気で逃げても捕まった。


 ルイスが体術を縛った状態で逃げている事を加味しても、予想以上の成績だ。


 ルイスが捕らえた回数は十九回。

 リリックが十一回。

 アイニールが七回。

 フリーシェが一回。

 そしてメイアはゼロ回。


 まだ幼いフリーシェと、索敵係のメイア達はほとんど達成できなかったのはルイスもある程度は予想していたが、アイニールがルイスを七回も捕らえるのは彼の想定以上だった。


 まだ基礎程度しか教えていないにも関わらず、アイニールは即順応した。

 あの成長速度にはルイスも舌を巻く。


「さて、じゃあ君達の等級測定を調べてみようか」


 ルイスと生徒達は、いつかの練兵場に集まっていた。


「ルイス先生、等級測定ってなに?」


 メイアが手を挙げてそんな事を言い、ルイスは笑顔で説明を始める。


「等級測定ってのはね、特殊な魔法により君達の力を測る事を言うのさ。王都が数年ごとに出している基準をもとに、今自分がどれだけの力を持っているのかを調べる事ができる」


 そしてルイスは持っていた四方十センチ程の、藁半紙に似た材質の紙を四人に渡す。


「測定は五項目で分けられる。魔法や体術のエネルギー源『魔力』どんな手段であれ相手へダメージを与えられるかの『攻撃』自身や他者をどれだけ援護できるかの『防御・援護』そして移動速度を測る『機動』最後にどれほど巧みかを測る『技術』この五項目さ」


 技術というのは、魔力の使用履歴によりどれほどの技術を持っているのかを測定するものだ。

 例えば魔法をどれだけ遠距離にまで打てるかも、この技術である程度判る。


「へぇ、便利な物があるのねぇ……」


 感心したように呟くメイアは、紙を引っ繰り返して観察していた。


「リリックはもう測った事があるんだっけ?」

「ああ、入隊時にやったきりだけどな」


 軍に入る者は誰であろうとこの測定を受ける。

 その際に出た数値によって、所属が決められることも多々あるのだ。


「と、いうわけで今日は一般的な兵士がどれくらいの数値をもっているのかを調べるために、ベリアル君とその部下ナッシー君に来てもらいました」


 ルイスがそう言うと、傍で待っていた二人が前に出て頭を下げた。


「ベリアル君はこの年にしてはかなり優秀でね、準二級兵士になっているんだ」

「ルイス、準二級兵士とは一体なんですか?」

「あ、アイニールには説明できてなかったね」


 王国に所属する兵士には、全員に等級が割り当てられている。


 下は六級、上は特級の七段階。

 見習いや訓練兵の等級である六級。

 一般的な兵士の等級である五級。

 平均的に優秀な四級。


 大きな規模の部隊の隊長レベルである三級。

 精鋭と呼ばれる二級。

 そして年に数えるほどしか出ない一級。


「と、こんあ風に兵士に等級が降られている。ベリアル君は三級で、ナッシー君は五級だ。大聖祭で勝ち残るためには、三級レベルの能力値は欲しい。だから彼らを連れてきたのさ」


 そう言ってルイスは二人に紙を手渡した。

 受け取った二人が紙に魔力を込めると、紙にうっすらと字が浮き出てくる。


 これが等級測定。

 紙に魔力を込めれば、それだけで数値が現れる。


「ルイス殿。できましたよ」

「うん、ありがと」


 ルイスが二枚の紙を受け取り、それを生徒達に見せた。

 ナッシーの数値。


【魔4・攻5・防3・機4・技5・総合21】


 ベリアルの数値。


【魔6・攻10・防7・機8・技6・総合37】


 その二枚の紙を見せて、ルイスは微笑んだ。


「一般的な兵士の平均的な総合地が20~25程度だと言われているんだ。だからナッシー君は平気より少し上、そしてベリアル君は相当優秀だというのが分かるね?」


 兵士のそれぞれの項目の平均値は4か5。

 7~8なら優秀、9以上ならば相当優秀な分野を持つ兵士ということだ。


「こんな風にでるんだね、凄いや」


 フリーシェが目を輝かせながらその紙を受け取り、楽しそうに眺める。

 その横からメイアとアイニールも同じように顔を覗かせていた。


「総合値が35前後なら三級レベルだと思ってくれていい。じゃあ早速はじめてみようか」


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こちらが完結したのでよければ見てください。
ビカム・ヒーロー
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