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決勝戦



フィオナの魔法により肉体的な治癒を終えたアレクティスは、決勝の舞台でスフィアと対峙する。


「決勝はガリューと戦うだろうと思っていたが、お前と戦うのも想定の範囲内だ。」


「正々堂々勝負致しましょう。」


試合開始の合図に、二人は剣を構える。

既にスフィアの剣には魔力が付与されているのを感じる。

アレクティスもペンダントの力で魔力を感知しているのだろう。

普段より間合いを開けて様子を見ているようだ。


「スフィア王子の表情、油断が見えませんね。」


「そうね。魔法付与がなくても、純粋に戦士として実力の高い方だわ。」


だからこそ、アレクティスの実力を正確に見抜いているのだろう。

しかし、スフィア同様、アレクティスにも一切の隙がなく、両者の探り合いが続いた。

実力で言えば五分だが、魔法付与でどう転ぶかは分からない。


「フッ!」


息を吐くと同時にアレクティスが踏み込む。

鋭い剣先が腕を狙うが、それを紙一重で回避したスフィアのカウンターの突きが繰り出された。

キィンと肩当てを掠った剣先が、方向を変えて首を狙う。

それを手甲で弾き、剣を振り下ろすが、スフィアの魔法付与された剣はそれを容易く受け止めた。


ギリギリと剣を押しあいながら、スフィアの狼の様な瞳がギラギラとアレクティスを見据える。


「ハッ‼︎」


互いに弾かれるように間合いをとり、間髪入れずに一閃が走る。


この戦いに、会場は次第と静かになっていった。


「凄いな…これが学生同士の戦いかよ…」


服装からして軍の関係者だろう男の呟きに、周囲が息を飲む。


多分、彼らではあの二人には勝てない。

それだけの実力を見せつける戦いだ。


生まれ持ったセンスに加え、鍛錬された身体。

実践を意識しての訓練を積んだであろう体捌き。

並みの騎士や軍人では、まず相手にならない。


(さすがは一国の王子ね。)


そしてアレクティスも…


代々、法と秩序を守る一族であるロクレーヌ家は、当主が司法長官か騎士団総長を務めてきた。

現当主は司法長官。

アレクティスは剣武の才を持つことから、騎士団総長となる可能性が高い。


「しかし、皮肉なものですね。どちらが勝っても、誰にも祝福されないなんて。」


ミシルの言葉には苦笑するしかない。

スフィア王子が勝てば、魔力の強い私を他国に嫁がせる事になり、戦争の道具にされる可能性が高い。

アレクティスが勝てば…いや、勝っても、ロクレーヌ家は私を受け入れはしないだろう。


代々、宰相を務めるランフォート家。

代々、法と秩序を守るロクレーヌ家。

代々、外交を担ってきたトニトルース家。


フェリス三大貴族である三家は、絶妙なバランスで成り立ってきた。

が、近年、ランフォートの直系に生まれる子どもは皆愛し子という、まるで王族並みの加護が与えられている。

しかも、軍の最高司令官であるグリフィス家と姻戚関係を結んだ事により、ランフォート家は武力を手に入れ、三大貴族から抜きん出たと噂されてもいる。


(しかも、現騎士団団長も、新しく国王様が設立された聖騎士団団長にも、ランフォートが就いている。ロクレーヌ家がランフォート家を良く思ってないのは間違いない…)


万が一ロクレーヌ家が私を受け入れたとしても、それをトニトルース家が黙ってはいないだろう。


三大貴族は精霊王に愛された一族の繁栄が元になっている。

けれど、近年、トニトルース家に愛し子は一人だけ。

これ以上三大貴族のパワーバランスを壊すわけにはいかないのだ。


「心配いらないわ。スフィア王子が勝って、私が他国に嫁いでも、戦争の道具になったりしない自信があるもの。それに、アレクティスが勝てば、きっと婚約の放棄をするでしょうしね。」


はっきり言葉にされた訳ではないが、五人の誰が勝っていても、勝者の権利として婚約者の地位を放棄するだろう。

貴族の結婚は政治だと理解しているが、それでもこんな景品にされる様なやり方で婚約者を決める事を非難していたからだ。


「ハァッ‼︎」


一撃一撃に火花を散らし、激しい攻防には息をつく暇もない。

アレクティスの腕には血が滲み、スフィアの頬からは血が伝う。

それでも互いに急所を狙う命のやり取りに、審判席からは動揺の声が上がっていた。


(当然ね。王位継承権一位のスフィア王子と、跡継ぎの男子が一人しかいないロクレーヌの後継に万が一があれば、ただじゃ済まない。)


学生の剣術大会ごときで深手を負わせる事自体が問題になる。

しかし、その危惧を体現するかの様に、スフィアの剣がアレクティスの脇を深く裂いた。


「グッ‼︎」


スフィアの剣は、ガリューの物とは比べ物にならない程精密に魔法付与が施されている分威力が高い。


傷口からボトボトと流れる血が白銀の鎧を赤く濡らし、スフィアは笑った。


「俺の勝ちだ。」


スフィアの言葉に、審判が一歩前に出る。

だが、アレクティスは剣でそれを制し、深く腰を落として構えた。


(あの構えは‼︎)


「…この程度の傷など、彼女の未来を諦める理由にはならない‼︎」


白銀の一閃


瞬きする一瞬で踏み込んだ一撃。

それはあまりに速かった。


そして気が付けば…スフィア王子は右手から剣を手放し、片膝をついていた。

大量の流血と共に。


(あの技は…ヒロインへの好感度が高い時だけ、ランダムに発動する激レアスチルと同じ技…)


私の戸惑いをよそに、大歓声が湧き上がり、審判がアレクティスの勝利を宣言した。









3/4













やっとバトル終了!

なので、次からは乙女な展開へ移ります!

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