ライラックVSミスティアナ
悩みながらの執筆が遅くすみません。
読んでいただけて感謝しかないです。
「俺はガリュー王子とは違う。魔法を付与した剣との戦いの攻略法…見せてやろう。」
「ぼ、僕は……いえ、僕は負けません。ルミア様の大切なルミリア様を、僕の大好きなルミリア様をお守りする為にも、絶対に負けません‼︎」
「す、好き⁉︎お前はルミリア様を、いや、そ、そうか。な、ならば私を倒してみろ。倒せるものならばな!」
第2試合の開始が宣言され、二人が距離を取る。
剣術大会での魔法使用は、武器への魔法付与と肉体強化が許されている。
通常の模擬戦ならば魔法の使用は可能だが、あくまで剣術を競うこの大会では、ミスティの得意な攻撃魔法は使えない。
だから私よりも華奢で小さなミスティが準決勝まで進む事など、私達以外想像もしていなかっただろう。
だが、今のミスティを見れば誰もが思い違いだった事に気付くだろう。
いつも自信なさげにおどおどした、華奢で可愛い仔犬の様なミスティアナは、魔力を持って生まれた女の子の様な男の子。
ではなかったことを。
「はぁっ‼︎」
鋭い剣先がライラックの長い髪を掠める。
そして反撃の切っ尖から目を逸らさずに紙一重で避けた。
小柄な身体を活かした動きで、一撃一撃に魔法を込める攻撃。
大きな瞳に一切の怯えは無く、真っ直ぐに相手を見据えていた。
(ミスティ、貴方は立派な騎士だわ。)
そして、対峙するライラックもまた、以前の彼ではない。
予想を上回るミスティの成長に、明らかに押されている現状でもライラックの瞳は冷静に活路を見出している。
撃ち込まれバランスを崩しても、攻撃が回避されても、その瞳には焦りや諦めは見えない。
「ハァ、ハァ、魔法付与とは厄介なものだ…」
「っ、僕には魔力しかないから!」
「もしお前が魔法を行使していたなら、私に勝ち目はなかった。だが‼︎これは剣術大会‼︎そして私にとっても負けられぬ戦いだ!」
正面から駆け出したライラックに、ミスティが水流の斬撃を放つ。
あの威力ならば、盾での防御ごと吹き飛ばされてしまうだろう。
躱すにしても、ミスティの魔力コントロールはもう完成している。
流れを変えてライラックを逃す事はない。
「うおぉぉぉっ‼︎」
(嘘っ、)
逃げない。
避けない。
自殺行為にすら見えかねない特攻に、会場中から悲鳴が上がる。
(ライラック、貴方…)
走るスピードを上げるライラックに斬撃が直撃する。
かと思われた。
だが、それが届く直前、ライラックはスライディングで地面を滑り、ミスティを間合いに捉えた。
「女神よ‼︎私に力を‼︎」
「負けないっ‼︎」
激しい爆音と共に、会場が水蒸気に包まれる。
「ごほっ、な、なんだ⁉︎魔力の暴走か⁉︎」
「何も見えない!どうなってんだ⁉︎」
「落ち着いて!皆その場から動かないように!」
皆が混乱する中、私はじっと二人のいる場所を見つめた。
風魔法でこの霧を晴らす事は容易いが、それはしなかった。
いや、したくなかった。
「ハァ、ハァ…っ、うっ、僕、うぅっ、」
「ハァ、ハァ…泣くな。」
「僕は…僕を助けてくれたルミリア様を…僕が…守って差し上げたかった…」
「………」
ライラックの捨て身の一撃を前に、ミスティアナはなす術がなかった。
放った斬撃のコントロールに意識を向けていた為に、予想外の至近距離に対応出来なかったのだ。
だが、諦める事も出来なかった。
ミスティアナにとって、剣術大会で優勝する事は目標や夢などではなく、果たさねばならない誓いだからだ。
ルミアが剣術大会に出場しないと聞いた時、心に誓った。
恩人であるルミアとルミリアの為に、必ず自分が優勝し、ルミリアを守るのだと。
もしかしたら、この日の為に自分は男の身でありながら、魔力を持って生まれたのかもしれない…とさえ。
だから咄嗟に剣へ魔力を込めた。
負けたくない。
負けられない。
もっと強く…力が欲しい‼︎と、
だが、結果はどうだ。
コントロールを失った斬撃はライラックを追って暴発。
剣へ込めた魔力もコントロールが利かず、二つに分かれた水の魔力は衝突して霧散。
魔力はすっかり空になって、起き上がる事すら出来ない。
「ルミリア様をお守りするのは、僕でありたかった…」
暴走した魔力同様、暴走した想いまでも散ってしまった。
そんな自分が情けなくて、恥ずかしくて、涙が溢れて止まらない。
「泣くなと…言っている。私とて、同じ気持ちなのだから。」
まだ深い霧の中、仰向けに倒れたままの二人はポツポツと言葉を紡ぐ。
「…何故私はもっと剣を握ってこなかったのだろう。自己満足の盤上遊戯など、何の役にも立ちはしない。もっと土に塗れ、痛みを受け入れるべきだったのだ。型に囚われず、勝利を目指す者であるべきだったのだ。」
ルミアとの初めての模擬戦で、私は己の無力さを思い知らされた。
実戦に机上の空論など通用しない事を。
だが、理解してもなお、己の矮小なプライドが素直に従う事を拒み、時間を無駄にしてしまった。
あの時、意地を張る方向を間違えていなければ、今自分は床に転がる事もなかったかもしれない。
敬愛する方を、お守り出来る自分でいられたかもしれないのに。
そんな後悔ばかりが押し寄せる。
だが、ルミリアから見て、ライラックは大きく成長したと
感じていた。
分析力、判断力、知略家として才は、そこに自身の力量を知ることで、より発揮される様になった。
(誇りなさい。)
弱さを知った二人の成長は、これからも続くのだから。
霧の晴れた先に、共に倒れる二人を見つけ、勝敗は決した。
「ライラック、ミスティアナ、両者戦闘不能により引き分け‼︎」
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次はどうしようかな…




