ガリューVSギルベルト
戦いものは苦手で、うまく伝えきれなかったらすみません。
ガキィィンッ‼︎
その衝撃に、会場中の誰もが身を竦ませた。
一撃で総てを粉砕し、破壊する。
そんな大剣の渾身の一撃。
だがそれを、ギルベルトは左腕に装備した比較的小さな盾で受け止めて見せた。
「ほう、これを止めるか。」
「っ、なんて重さだよ。だが、正面から受け止めるのは今ので最後だ!」
腕の痺れに眉を寄せながらもニッと笑ったギルベルトの姿が消えて、ガリューが体勢を崩す。
瞬間、ダガーがガリューのふくらはぎを裂いた。
「チッ、浅いか…」
「ダガーだと?そんなおもちゃで、俺の鋼鉄の身体を傷付けられると思ったか‼︎」
バックステップで距離を取るギルベルトに、大剣の連撃が放たれる。
まるで重力を無視するようなスピードは、ギルベルトに攻撃の隙など与えない。
辛うじて盾とダガーでいなしつつ避けてはいるが、布は裂かれ、鎧に傷を刻み、腕には赤い筋が伝う。
(上手い!総て紙一重で避けてる。)
一瞬の隙をついて距離を取ったギルベルトは、あれだけの攻撃を受けたにもかかわらず、ニヤリと笑った。
「あ〜ぁ、やっぱり強いな。」
「ふん、降参でもするか?」
「なわけないだろ。ただまぁ…生半可な覚悟じゃ勝てないと思ってさ。」
会場にどよめきが広がる。
フィオナも愕然としていた。
「な、なんで鎧を脱いじゃうんですか⁉︎」
ギルベルトの鎧は、他の騎士と比べてもかなりの軽装だ。
それは剣のみでなく四肢を使う戦闘スタイルの為だが、それでも連撃を致命傷なく耐え切ったのは、鎧のおかげでもある。
しかし、ギルベルトは左腕の盾以外の装備を脱ぎ捨てた。
それは彼なりの覚悟だ。
より速さを、より可動域を広げる事を選んだ結果。
己の四肢を使い戦うギルベルトのスタイルを最大限に発揮する為に。
そしてその効果はてきめんだった。
大剣の間合いを取れないようガリューの懐に飛び込み、ダガーや体術で与え続けるダメージは、ガリューから余裕の笑みを消した。
「ちょこまかと‼︎鼠風情が‼︎」
「窮鼠猫を噛むって言うだろ⁉︎」
ダガーは的確に急所を狙い、そこに意識を持っていけば、思わぬところから蹴りを喰らう。
一撃必中ではないものの、相手の体力を削る様な攻撃はガリューを苛立たせた。
「では相手が猫ではなく、獅子である事を思い知らせてやろう‼︎」
瞬間、空気が揺れた。
いや、正確には魔力の流れが変わった。
(やはり使ってきたわね!)
歪な魔力。
大剣の柄に埋め込まれた黒い宝石は、改良された魔石に違いない。
思った通り、魔法探知能力だけじゃなく、魔力を増幅しコントロール出来るようだ。
その証拠に、今まで感じなかった魔力をガリューの体内から感じる。
(魔力を持ち得ない筈の彼がどうやって魔力を得たのかは分からないけれど、今のガリューは確実に魔法を行使出来る。)
そしてコントロール出来る事を確信している表情…
「身をもって知るがいい‼︎」
魔法を付与した大剣が、威力を増した連撃を放つ。
「グァッ‼︎」
パワーもスピードも桁違いな攻撃は、ギルベルトの薄い服を裂き、所々が赤く染まっていった。
「ギルベルト様‼︎」
立ち上がり叫んだフィオナは、震える拳を握り締めた。
「ハッハッハッ、さっきまでの威勢はどうした?」
満身創痍のギルベルトを見下して笑うガリューは、大剣を肩に担ぎ更に魔力を込めている。
次の一撃で決めるつもりらしい。
「…ハァ、ハァ、ハァ…」
「もう言い返す気力もないか。」
「…流石にキツイ。けど、言っただろ?俺には女神の加護がある。」
息を整えて立ったギルベルトは、破れボロボロになった服を脱ぎ捨てた。
斬り刻まれた逞しい身体。
その胸に、琥珀色のペンダントが光る。
私がプレゼントした、魔法探知用の魔石。
「大丈夫よ、フィオナ。」
「ルミリア様…」
「ギルベルトを信じましょう。」
ガリューの剣が、遠目にも分かるほど魔力を高めていく。
剣の纏う禍々しい黒い魔力に、女生徒達からは悲鳴が上がる。
魔力のない男子生徒は、見る事も感じる事も出来ない為に状況が理解出来ていないようだった。
ペンダントを着けている五人を除いては。
ギルベルトは当然魔力を感知している。
そしてその一撃の威力も理解しているだろう。
冷静に息を整えて、真っ直ぐにガリューをみつめている。
「消し飛べ‼︎鼠‼︎‼︎」
大剣の纏う闇が、獣の爪の様な五本の刃へと変化する。
振り下ろされる五本の刃。
いくらギルベルトの機動力が高くとも、巨大な魔力の刃からは、逃れる術がない。
悲痛な悲鳴が響き渡る中、ギルベルトの唇がニヤリと口角を上げた。
「そんなもの…ルミアの一撃に比べればぬるいんだよっ‼︎」
魔法とは事象を操ること。
以前、そう皆にルミアとして話した。
そしてギルベルトはそれを覚えている。
振り下ろされる大剣の本体を両手に握ったダガーで弾き飛ばし、その回転のままに他の刃を紙一重で避ける。
魔法はガリューの意思でギルベルトを狙う。
魔力の流れを感じられる今、戦士としてのガリューの魔法は、騎士であるギルベルトには実物の剣と大差ないと言えた。
(そしてそこにガリューの油断が出た。)
戦士としての絶対の自信を持つ彼にとって、魔法など威力強化程度の認識しかしていない。
もっと魔法を知っていれば、この結果は違っていたかもしれない。
まさか魔法付与した一撃をかわされるとは思っていなかっただろうガリューは、全ての刃を交わしたギルベルトの拳を顎に喰らい、ガクッと片膝をついた。
「ギルベルト様の…ギルベルト様の勝ちですわ!」
フィオナの声に、会場中から歓声が上がる。
それに応えるように、ギルベルトが右腕を掲げた。
だが、
「あはは…やっぱ全部は躱しきれなかったか…」
グラリと身体が揺れて、フィオナが悲鳴を上げた。
ギルベルトの脇腹から背中にかけて裂かれた傷口から、大量の血が流れていたのだ。
「ギルベルト様っ‼︎」
人混みを掻き分けて、フィオナは倒れたギルベルトの元に走る。
そして医療班と共に、治癒魔法を展開させた。
淡く朗らかな太陽の陽射しを思わせる、フィオナの癒しの光。
(ヒロイン力高すぎよ。流石はフィオナ。)
あの子の強力な治癒魔法なら、私の出る幕はない。
例え一瞬で跡形もなく傷を癒せても、皆を驚かせてしまうだけだ。
こんなチートな能力がバレれば、厄介ごとの予感…いや、確信しかない。
今の私に出来るのは、信じていた騎士の勝利に微笑む事だけ。
(あ…)
幾分痛みが和らいだのか、ギルベルトがこちらを見て苦笑した。
そして目を閉じて、何かを呟いた。
魔法をやめていた私には聞こえなかったけれど、そのまま意識を失っただろうギルベルトの穏やかな表情だけで満足だった。
(良くやりましたね。ギルベルト。)
「ははっ…かっこ悪りぃけど、そっちはお前らに…任せた…ぞ…」
その言葉に、四人の騎士は頷いた。
2/7
最終的な勝者をまだ決めていないので、次はどうしたものか悩みます…




