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騎士達の決意



「凄いわ、ミスティ!もう魔法付与は完璧ね!」


剣術大会まであと10日。

大会での魔法使用制限内でいかに攻撃力を上げるかの特訓も、ミスティの努力によりかなりの成果を上げていた。


「ルミリア様の指導のおかげです!僕…絶対勝ちます!」


「ミスティ…うん、頑張ってね。」


「ルミリア様は本当に素敵です!フェリスの戦女神様です‼︎」


先日のお茶会でやらかしてしまったせいで、フィオナとミスティの認識が女神から戦女神へと上書きされてしまった。


なんでルミリアのまま戦っちゃったかな⁉︎

って、のたうち回るほど後悔したものの、私がルミアだとバレなかったのは本当に助かった。


しかも怪我の功名というか…守るべき者にあっさり弱点を突かれて負けたっていうのが、イグニス達のプライドを傷付けてしまったらしく、みんな驚異の成長を見せている。


(結果オーライだったけど、気を付けなくっちゃ…)


フェリス王国で女が剣を握る事は、かなりの非常識だ。

ティターニアのように淑やかであれとの教えを真っ向から否定しているようなものだから。

誰も私を軽蔑したりはしなかったけど、他の生徒たちは違うだろう。

ランフォートの名誉の為にも、うかつな真似は控えなければならない。


「そういえば…最近ルミア様をお見かけしませんね。」


「えっ⁉︎あぁ、ルミアは混沌の森での討伐任務に行っているの。ちょっと苦戦してるみたいで、いつ戻れるか分からないらしいわ。」


まだミスティ達には話していないけど、ルミアの剣術大会参加はお父様に禁じられている。

婚約者選びの大会に本人が参加してどうするって話だ。


「…二人ともどうしたの?顔色が悪いけど…」


「だ、だって、ルミア様が苦戦だなんて…どんな恐ろしい魔獣が…」


「えっ⁉︎大丈夫、大丈夫よ!」


青褪める二人を宥めて、小さく溜息をつく。

最近、フィオナはずっとミスティの練習に付き合っている。

ミシルの情報は確かだから、現状ミスティとの友情ルートまっしぐらな気がしてならない。


(トゥルーエンドどころか、ハッピーエンドにも行けないんじゃ…)


10日後、誰が優勝するのだろう。

フィオナの恋の行方は?

自分は一体どうなっているんだろう…


二人と別れて中庭の噴水に腰掛けると、優しい風が頬を撫で、まるで慰められているようだと苦笑した。















「イグニス、もう少し下段に注意を払った方がいい。」


「あぁ、ありがとう、アレクティス。」


実戦形式での練習を終えた二人は、鎧を脱いで額の汗をタオルで拭った。

優秀な騎士特待クラスの生徒でさえも、ついていくのがやっとだと言われる訓練を平然とやってのける二人が、肩で息をする程の実戦練習だ。

どれだけハードだったかは言うまでもない。


「…はぁ、情けない。」


「…ルミリアの事か?」


「ああも簡単に弱点を見抜かれ、身をもって己の未熟さを知らしめられたからな。まさか剣も扱えるとは思っても見なかった。」


烈火の騎士と呼ばれる男の浮かべた表情は、なんとも言えない微妙なものだ。


「驚いたのは私も同じだ。が、不思議と違和感はない。」


「それは俺も感じた。女性が剣を持つなど、考えた事も無かったが…スピアを構えた彼女を見た時、正直美しいと思った。」


「同感だ。」


フェリスの至宝と呼ばれる公爵家令嬢は、凛とした美しさを持ちながら、誰よりも懐が深く、慈愛に満ちている。

誰もが心を寄せるフェリスの華。

だが、そんな彼女が振るう剣は、どの騎士よりも鋭く美しいものだった。


「実力でも、俺はあの方に敵わないかもしれない。だが…俺はルミリア様の剣だ。あの方の笑顔を守る為にも、もっと強くならねばならん。」


「そうだな。少なくとも…あの王子達にルミリアを渡すわけにはいかない。」


互いに見つめ合い、再びその手に剣を取る。


「「絶対に負けるわけにはいかない。」」


















「だからぁ、お前は型にハマりすぎなんだって。」


「分かっている!だが、基本の疎かなお前にだけは言われたくない!」


汗でグッショリと濡れたシャツを脱いで肩に担ぎ、逞しい上半身を露わにしたギルベルトは隣の堅物に肩をすくめた。


「お前、ガリュー王子と当たったら、相性最悪で大変だぞ?」


「貴様は自分の心配をしていろ!」


「俺は大丈夫!ルミリア嬢のくれたペンダントがあるからね〜!」


「あの場にいた者は皆頂いた物だろう!」


ギルベルト同様、ライラックのシャツの中にも、煌めく深緑のペンダントがかかっている。


「戦女神様の加護があるからね。負ける気しないよ。」


「貴様はそうやってすぐ軽口を…」


「絶対に負けないよ。」


真剣な声に、ライラックが振り返る。

そこには誓うようにペンダントトップを握り、決意する騎士の姿があった。


「姫はさ、強過ぎるんだよね。剣の腕も凄かったけど、魔法だって常人の域を超えてると思う。」


「多様な武器を手足の様に扱う巧みさと速さを持ち、

時間と空間を容易く操作する魔術師など聞いた事もない。」


「でもさ、剣より魔法より強いんだ。気高くて、優しくて、強い。姫の心は…さ。」


ポスッと拳をライラックの胸に当てて、見た事も無い優しい笑みを浮かべる。


「そんな高貴な姫を守るのは、俺たち騎士の役目だろ?」


「っ…そんな事は貴様に言われなくても分かっている!私は…私の意思で、ルミリア嬢を守ると決めたのだからな‼︎」















「あ、いけない。次の授業が始まっちゃうわね。」


噴水のへりから立ち上がった瞬間、チャリっと胸元のペンダントが揺れた。


虹色の石が、陽射しを浴びてキラキラと輝く。


それをそっと握り、みんなに渡したペンダントを想う。


前世で集めていた、キャラグッズのペンダント。

あの時は真っ白な病室の壁を、色鮮やかに飾ってくれた。

でも今は、それそれの胸で輝いている。


「妖精王様…どうか私の大切な人達をお守り下さい。」











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