女神降臨
「皆さん、練習お疲れ様です!これ、私とルミリア様で作ったんです。良かったら召し上がって下さい!」
キラキラした笑顔でバスケットを見せるフィオナ…
マジ天使‼︎
マジ女神‼︎
可愛すぎる‼︎
「うわぁ、とっても美味しそうです!フィオナさん、ルミリア様、ありがとうございます!」
ミスティもマジ天使‼︎
け、決意が揺らぐ…やっぱりここは現実世界ではないのでは⁉︎
天使舞い飛ぶ天界なの⁉︎
騎士特待クラスの実技授業の後、私とフィオナは大量に作ったクッキーを持って教室を訪ねた。
「特待クラスの皆様、この度は私の家の事情に巻き込んでしまい、申し訳ありません。婚約の事は気にせず、どうぞご自身の為だけに剣術大会に臨んでください。」
生徒たち一人一人に、小さなクッキーの包みを渡して回る。
これは迷惑をかけてしまったお詫びの気持ち。
「ミスティアナ様、次の時間は自習ですよね?私達これからサロンに行くんですが、良かったらご一緒にいかがですか?」
「わぁ!嬉しいです!実は剣術大会で使える魔法について相談したかったので、是非ご一緒させて下さい!」
確かにこの二人は友情枠確定みたい。
「ルミリア嬢、俺もお供して良いかな!」
「もちろんよ。実は他にも色々なお菓子を作ったから、お茶のお誘いに来たの。」
瞬間、グゥっとイグニスのお腹が鳴って、思わず吹き出してしまった。
「やっ、こ、これは、」
「ふふっ、実技の後はお腹が空くものね。イグニスの好きそうなお菓子をたくさん用意したわ。良かったら、シルフィード様もご一緒にいかがですか?」
「わ、私ですか⁉︎」
「はい、いつもルミアから話を聞いていますので、私もお話ししてみたいと思ってましたの。」
「光栄です、ランフォート嬢。私の事はライラックとおよび下さい。」
「では私の事もルミリアと。出来ればルミアと同じ様に接して頂きたいわ。」
「そ、それは不敬で…いえ、ルミリアの望むように。」
「ありがとう、ライラック。」
困った様な笑みを浮かべるライラックに微笑み返し、視線をフィオナに向ける。
フィオナはクッキーの包みを持って、アレクティスの元へと走っていた。
やはり私が知らないだけで、あの二人には親しくなるだけの接点はあったらしい。
微笑み合う姿から、仲が良さそうなのが伺える。
「ルミリア様、アレクティス様もご一緒して下さるそうです!」
「良かった!では参りましょう。」
他の生徒たちに挨拶をして、私達は学園の奥にあるサロンへと移動した。
そこは高位の貴族をもてなすためだけに用意されたサロンで、一般の生徒たちは存在さえ知らない。
色とりどりの花が咲く広い庭を眺めながら、ゆっくりお茶をするには最高の場所だ。
大きなテーブルの上には、私達が作ったお菓子が並べてあり、タイムの魔法を解除すれば、焼きたての香りが部屋中に漂う。
「まさか時間操作魔法を使えるとは…」
ライラックの驚きに曖昧な笑みで応え、とっておきの紅茶を振るまう。
「良い香りだ。」
アレクティスがふわりと微笑む。
ゲームでも彼はこの紅茶を好んでいた。
「気に入っていただけたら嬉しいです!実はこれ、ルミニス領で採れたものなんです。是非皆様に飲んで頂きたくて、実家から取り寄せました!」
「そうか。ありがとう。とても美味いよ。」
「ふふっ、でも、こんなに美味しいのは、きっとルミリア様が淹れて下さったおかげです!」
「ありがとう、フィオナ。さぁ、皆さん召し上がって。」
焼きたてのアップルパイに、生クリームたっぷりのフルーツロールケーキ。
フィナンシェにタルトにマカロン。
甘い香り漂うお茶会が始まった。
「美味い!姫、これ美味いよ!」
「このサクサク感が良いな。」
「フルーツとクリームの絶妙なバランス…計算されている。」
「わぁ、このマカロン屋台のものより美味しいですね‼︎フィオナさんもルミリア様も、本当に凄いです!」
それぞれに感想を口にしながら、フィオナを中心に穏やかな時間が流れる。
最近ますます可愛くなったフィオナは、陰湿なイジメを受けている事など感じさせない笑顔で笑う。
そんな彼女の言葉を、みんなも笑って聞いている。
そんな優しい空間に、一緒にいられる事が幸せだと思う。
「ルミリア様、ルミリア様?聞いてますか?」
「えっ?あ、ごめんなさい、何だったかしら?」
「ルミリア様は、スフィア王子とガリュー王子をどう思ってらっしゃるのか気になって!」
フィオナの質問に、イグニスが盛大にむせた。
「フィオナちゃん、容赦ないね。」
「…同感だ。」
呆れた様なギルベルトとライラックに、フィオナは「気になりませんか?」と首を傾げている。
「…私も気になる。ルミリア、貴女は今回の件、どのように思っているのだ。」
急な話に戸惑ったものの、アレクティスの真剣な瞳に思考を巡らせる。
「…そうですね。まずスフィア王子ですが、事前の情報収集は抜かりないでしょう。あの身体から見て、俊敏性は高いと思います。こちらの弱点を的確に突いてくるでしょうから、自身の弱点を理解した上での対策をこうじなければなりませんね。」
「え?えっ?」
「ガリュー王子は、見た目の力技に惑わされてはいけません。彼の目…実戦経験が豊富だと言うだけあって、よくこちらを観察していると思います。型通りの剣術は通用しないタイプかと。大柄ながら、野性の様なしなやかな筋肉ですから、柔軟性と俊敏性は高いと思います。」
「ルミリア様?」
「加えて…王子達は魔石を身に付けていました。あの気配は多分魔法探知用の魔石ですが、同時に自分自身の魔力をコントロールしやすくします。もし王子達が魔力適性があるとしたら、剣に魔法付与効果があるかもしれません。」
「他国の王子に魔力適性があるのですか?」
ライラックの疑問は当然だ。
フェリス王国以外に魔力を扱える国は近隣にはない。
だが、最近ではフェリス王国から密輸される魔石を使った魔道具が出回っているという報告がある。
「その魔道具を使えば魔法を使えると?」
「まだ噂の範囲でしたが、お二人から微量な魔力を感じました。可能性はあるかと。」
それぞれに思案の表情を浮かべて、王子達の認識を改めている。
剣への魔力付与はそれ程効果が高いのだ。
気弱で体力のないミスティが剣術大会で優勝するシナリオでは、水属性の魔法効果が決め手になっていた。
剣術大会で使える魔法は、自身の持つ魔力を剣に付与させる事だけが許可されてる。
魔道具の使用は違反だが、そもそも存在すら知られていない魔道具を理由に王族を疑う様な真似は出来ないだろう。
(やはりみんなには渡しておいた方が良さそうね。)
「皆さんにお渡ししたい物があります。」
空間から宝石箱を取り出し、テーブルの上に置く。
「空間…魔法?貴女は一体…」
「いつも私やフィオナを守って下さってありがとう。これは私からのプレゼントですわ。」
隣に座るギルベルトの背に回り、逞しい首に琥珀色の魔石が輝くペンダントを掛ける。
イグニスには真紅の魔石。
ミスティには水色の魔石。
ライラックには緑の魔石。
アレクティスには銀色の魔石。
フィオナにはピンク色の魔石を掛けた。
「わぁ…素敵…」
「これは私が加工した魔石なの。純度の高いものだから、より精密に魔力を感知できるわ。混沌の森討伐隊や騎士団は持っているものなの。」
「しかし、この輝きと純度からしてかなり高価な品です。受け取るわけには…」
「ふふっ、流石は魔法省を管轄するシルフィードのご子息ね。でも安心して。魔石はルミアが討伐で得たものだし、ペンダントは私がクリエイトで作ったもだから。それに、とても便利な効果もあるのよ。」
にっこり笑って瞳を閉じて、六つの魔石に魔力を送る。
『こうしてテレパスが使いやすくなるの。長距離でのテレパスも可能だし、そちらからの信号もキャッチ出来るわ。』
『わぁ‼︎凄いです!』
『以前よりルミリア様を鮮明に感じます!』
『ね?とっても便利でしょう?イグニス達も…』
あれ?
あれれ?
どうして四人とも額を抑えているのかしら。
まさか魔力酔い?
「あの、ごめんなさい!大丈夫⁉︎」
「ルミリア嬢、た、頼むから不意打ちはやめてほしいな…」
「同感だ。覚悟をしていても…慣れない…」
「あははっ、お〜い、大丈夫か?ライラック、アレクティス。」
返事がない。
そう言えば、二人には了解を得てなかった!
「ご、ごめんなさい!私ったら勝手に…ライラック?アレクティス?」
「こんな可憐な…いや、清廉な…女神…まさか実在するのか…?」
ライラック?顔が真っ赤よ?
「魔力は本質を表す…か。」
アレクティスもそんなに困った顔…
いや、なんか深く突っ込んじゃいけない気がする。
ここはサラッと流すのが正解だわ。
話を変えなきゃ…
「と、とにかく、このペンダントがあれば、スフィア王子達の魔力を感知する事が出来るわ。流れを感じられれば、魔法攻撃を回避出来る。」
「でも、弱点の克服をしなければ、確実な対策とは言えないのでは?」
フィオナ…やっぱり侮れない子‼︎
流石は攻略対象者達を優勝させてきた手腕だわ‼︎
「確かに王子達は侮れない。先日の様子からして、我々と同等かそれ以上の実力がある事を確信していたようだった。」
冷静なアレクティスの言葉に、イグニス達も頷く。
「それにはまず各自の弱点を洗い出す必要がある。自分自身では気付かぬ事だ。この機会に是非意見を交わしたいがどうだ?」
「俺もイグニスの意見に賛成かな。本来ならライバルって立場だけど、今回はあの二人にだけは負けられない。」
「異論はない。」
「僕も賛成です!絶対にルミリア様を他国になんて渡せません‼︎」
(みんな…)
「だが、現実問題時間がない。剣術大会までに間に合うかどうか…。」
まだ知り合って間も無い私の為に、みんなこんなに心配してくれている。
私には何が出来るだろう。
どうやって気持ちを返す事が出来るだろう。
(私に出来る事…それは…)
「…イグニス、少しお庭にでませんか?」
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