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笑顔の先に




(今日は…一体何だったんだろう…)


自室のベッドに寝転び、天井を仰いで盛大な溜息をつく。


混乱する頭を整理する為に念写したスチルを、ベッド一面にばら撒いた状態で。


(フィオナちゃんのトゥルーエンドを成功させたい…って…考えていただけなんだけどな…)


カサリと指先に触れたスチルを拾うと、そこにはスフィア様とガリュー様の睨み合う姿が写る。


「恋…なんて、望むから…」


良い縁談だ。

北と南、お父様がどちらを選んでも、フェリスに有益な縁談になるのは間違いない。


ルミリアとして、冷静に対処出来ていれば、アレクティス様とあんな話になる事もなかった。









「あ…アレクティス…様…なにを…」


「あ…いや、すまない。婚約の話しが正式に来ている貴女に、私はなにを…」


気不味い沈黙の中で、目の前のカップに口を付ける。


「あ、アレクティス様の紅茶、本当に美味しいです。」


「…喜んでいただけたなら良かった。」


お互いに言葉が見つからない。

けれど、ふと、以前の会話を思い出した。


「…ふふっ」


「ルミリア?」


「ふふっ、すみません。以前のお話を思い出しておりました。私とアレクティス様との秘密…。」


「…ふっ、そうでしたね。」


「ロマンチストなアレクティス様のお言葉だと思えば、お気持ちも分かります。」


「すみませんでした。」


「いいえ、とても嬉しいお言葉でした。」


ニッコリと微笑みかけると、アレクティス様も優しく微笑み返してくれる。


…私達は理解しているのだ。

例え幼い頃に読んだ物語りに憧れていようとも、恋に焦がれていようとも…

私達二人が恋をするなんて、誰にも望まれず、許されないのだと。


フェリス王国三大公爵家は、ここ数代力の均衡を保っている。

…が、実際には違う。

実際には、ランフォート家が頭一つ飛び出しているのが現状だ。

代々宰相として仕えるランフォート家は、国王の信頼も厚く、男子は皆「オベロンの愛し子」であり、王国騎士団を支える礎となっている。

権力と武力と財力を併せ持ち、民からの信頼も厚く、当代では家族全員が「愛し子」であるランフォート公爵家。

しかも、国の英雄であるグリフィスとの縁も得て、その権力は王族に匹敵するとまで言われている。


それでも王族から牽制や圧力がないのは、現国王とお父様が幼き頃からの親友であり、宰相としての絶対的信頼を得ているからだ。


当然、他の貴族はそれを快くは思っていない。

三大公爵家と呼ばれるロクレーヌ公爵家と、トニトルース公爵家は、尚更のことだろう。


この現状下でロクレーヌ公爵家の跡取りがランフォート公爵家の令嬢と婚姻となれば、三大公爵家の均衡は大きく崩れてしまう。


それは国内に争いの火種を生む事にしかならないのだ。


「ルミリア、貴女ならきっと、素敵な恋をすることが出来るだろう。」


「アレクティス様…」


「アレクティス。そう呼んではくれないか。互いに立場は同じ。私は貴女が名前で呼んでくれた事を、嬉しく思った。」


「あ…」


言われてみれば、はじめからロクレーヌ様ではなく、アレクティス様とお呼びしていた事に気付く。

アレクティス様もまた、私のことをランフォート嬢ではなく、ルミリア嬢と。


「…アレク…ティス」


「あぁ、ルミリア。」


「っ‼︎」


嬉しそうな笑顔を向けられて、一気に顔が赤くなる。

そんな私を見て、アレクティスも僅かに赤くなりながら、でも楽しそうに瞳を細めた。














「本当に、なにやってんだか。」


あんなの自爆行為だ。

やっとアレクティス様への想いを断ち切れたのに、未練がましいったらない。


「それより今は、剣術大会が重要‼︎どうせ婚約のことはお父様がお決めになる事だもの。私が悩んだところでどうしようもないわ。」


勢いよく起き上がり、魔法で散らばったスチルを集めてスチル集へと納めていく。


すっかり厚みを増したそれは、ファンなら誰もが欲しがる一品だろう。


それをギュッと抱きしめて、よし!と立ち上がる。


「ルミリア・ランフォート‼︎しっかりなさい‼︎私は私の役目を果たし、友人や家族の為にも、幸せにならなくてはならないのよ!」


大きな鏡に映る自分に言い聞かせるように声を出し、笑顔を浮かべてみせる。


フィオナちゃんのように可愛くはないけれど、前世の自分よりは数十倍は綺麗な顔立ちだ。

権力、財力、武力、愛する家族、素晴らしい友人、健康な身体。

すべてを持って転生した。


「やりたい事もまだまだあるし、青春を謳歌しなくっちゃ!絶対幸せになるわよ!ルミリア!」


気の強そうな笑みに勇気づけられて、スッキリとした気持ちでベッドへ入った。





これから始まるはちゃめちゃな日々など知る由もなく。





10/7



















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