トゥルーエンドを目指して!
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「え?ミスティアナ様?ん〜…失礼だと思うけど、可愛い弟…かな?」
(でかした‼︎ミシル・プロヴァイド‼︎)
フィオナちゃんの気持ちが知りたい‼︎
だがどうやって聞き出そうか?
素直に答えてくれるだろうか?
なんて悶々と考えていた私の前に、今まさに神が降臨した!
神の名は「ミシル・プロヴァイド」。
フィオナちゃんの友人であり、【フェア恋】においては攻略対象者のプロフィールから愛情度までを教えてくれる情報屋だ。
彼女には前世で大変お世話になったので、親近感が半端ない。
「そうなの?あなた達いつも一緒にいるから、婚約直前なんて噂も流れてるわよ?」
「えぇっ⁉︎ないない!絶対ないから!どうしてそんな噂が…」
哀れミスティ…。
「フィオナに嫉妬してる令嬢達が心配してるのが噂になったんでしょうね。」
「心配ってなに?」
「そりゃあなたが権力を持つ事への心配よ。貧乏男爵家の令嬢が生意気にも魔法特待クラスに入り、しかも成績優秀で素直で可愛いときてる。そんな気に喰わないあなたをネチネチと虐めてる令嬢達は焦ったでしょうね。まさかルミリア様と親しくなるなんて。」
ニコッと私に微笑みかけるミシルの顔は、ゲーム内で見た彼女とまったく同じものだ。
平凡な容姿に鼻周りのそばかす。
毒舌とも呼べる遠慮のない言動。
(懐かし〜!)
「でもまぁ、ルミリア様と親しくしていただけても、結局あなたはただの貧乏男爵家の令嬢。自分達より格下だと見下していた。でも!ミスティアナ様と恋仲になれば話しは別。オンディーヌ侯爵家は由緒ある名門の一族で、ミスティアナ様は唯一の男子。つまり結婚すれば、貧乏男爵家の令嬢が侯爵家次期夫人となってしまう!」
「ミシル…チョコチョコ貧乏男爵家の令嬢って言うのやめてくれる?ルミリア様の前で恥ずかしいわ。」
「重要な事よ。あなたを見下して虐めていた令嬢達にとってはね。だって彼女達があなたに唯一勝っていたのは家柄だけなのよ?それが玉の輿に乗って一気に侯爵夫人!自分達より優秀で賢くて、素直で可愛いだけでも悔しいのに、更にお金と権力まで手に入れて幸せになるなんて許せない!そんな焦りが噂になったんでしょうね。」
ドヤ顔の考察に、フィオナちゃんは顔を青くしている。
「大丈夫よ、フィオナ。貴女には私もミスティ達もついているわ。」
「ルミリア様…ありがとうございます!」
花のように微笑みながら抱き着いてきたフィオナちゃんは、すっぽり私の腕の中に収まって、可愛くて、儚くて、とっても愛しい。
思わず男心を理解してしまった。
「で?真相は?フィオナは誰が好きなの?」
「ちょ、ミシル⁉︎」
「いない。とは言わせないわよ?あなたが騎士特待クラスの方達と親しいってネタは上がってるんだから。」
聞き出し方が悪徳記者みたいになってますけど?
…でも私も気になる!
「そんな…。騎士の方々は素敵だけど、私なんか…」
「そういうのは聞いてないから。あなたが誰を好きなのか聞いてるの。心配しなくても、秘密は絶対に守るわよ。他言無用。余計な手出しもしない。」
「もぅ…いつも強引なんだから…」
そう言って笑いながらも、フィオナちゃんの頬が少し赤くなる。
って事は…いるのね⁉︎
意中の相手が‼︎
「で?誰なの?」
「それは…その…」
ちらっと私の方を見て、パッと目をそらす。
もしかして、私の騎士になるとか言い出した二人のどちらか⁉︎
「す…好きとかじゃないんだけど、気になる方が…その…」
「はっきり言いなさい。」
「る…ルミア様…」
…え?
「ルミア様って、あのルミア・グリフィス様?あなたよりによって…これが知れたらミスティアナ様より大事になるわね。」
「違うよ!そんなんじゃなくて…いつもミスティアナ様がルミア様の素晴らしさを話して下さるから、素敵な方だなって…」
ミスティ!そんな事ばかり話してるから、恋愛対象から外れちゃうのよ‼︎
けど、ルミアの姿でフィオナちゃんと会う事は極力避けてきた。
強い魔力を持つフィオナちゃんには、幻術が見破られる恐れがあったからだ。
なのに何が素敵だと思われているのか分からない。
「フィオナ、ルミアはやめておいた方がいいわ。」
「まぁ、ルミリア様。やはりルミア様はルミリア様の特別な方ですのね?」
「ミシルさん、話しを脱線させないで下さる?私は誰よりルミアの事を理解しているから申し上げているだけです。フィオナ、彼は恋愛対象にはなり得ないわ。」
「えっと…それは何故ですか?」
「ルミアの頭の中には、女性との恋愛願望が一切ないからよ。ルミアにとって大切なのは、混沌の森の謎を解き、魔獣の発生を根絶する事。この国の民を守ることだから。」
その為に作り出した、偽りの存在なのだから。
「そう、ですか。でも、本当に違うんです。憧れであって、恋じゃない…。と言うより、まだ恋愛ってよく分からなくて…。」
「えっ…」
「この学園で出会った方々は、とても素晴らしい方ばかりです。尊敬していますし、憧れでもあります。でも私にとっては雲の上の方々ですから。」
純真無垢な笑顔に、私は自分の思い違いに気付かされた。
あんなに繰り返しプレイしていたのに、私はフィオナちゃんの事をまったく理解出来ていなかったのだ。
(そうよ…フィオナちゃんは、初めから恋愛感情で攻略対象者と接していたわけじゃない。彼女の純粋な優しさや、思い遣り、気遣い、素直さが、自然と攻略対象者との距離を縮めていった。彼らとの恋はその心の繋がりの先に芽生えたもの…)
ガッツリ攻略対象者を落としにかかっていたプレイヤーの私の思考と、慈愛に満ちた物語りのヒロインの思考はまったく違う。
そんな単純な事すら忘れていたなんて…恥ずかしい…
(でも、ゲームではこの剣術大会がトゥルーエンドへの分岐点になるのは事実。ゲームでは高い愛情度が集められず、1周目でトゥルーエンドを迎える事はまずない。つまり、現実でもトゥルーエンドを迎える事は難しいの?)
それが現実だと言うなら、それが自然の流れなのかも知れない。
だが、それなら何故私はこの世界に前世の記憶を持って転生してきたのだろう。
大好きなヒロインと友達になれたのに、その力になれないなんて…
「…フィオナ、変な事ばかり聞いてごめんなさい。そうよね、いきなり恋愛なんて言われても戸惑うわよね。正直、私にもよく分からないもの。」
「ルミリア様もですか⁉︎ふふっ、なんだか意外です!」
「ふふっ、私達貴族の結婚は家のためが基本だもの。自由に誰かを想う事は難しいわ。でも、やっぱり恋愛結婚に憧れてしまうのよね。」
「はい!私も叶うなら恋愛結婚がいいです。」
「なら、二人で素敵な恋を見つけましょう!」
「はい!」
う〜ん、単じゅ、いやいや、純粋だ。
剣術大会までにはまだ猶予がある。
幸いに「練習中の差し入れイベント」は、攻略対象者全員に差し入れする事が可能。
まずはここで様子を見るとしよう。
大会前に全員の愛情度については、こまめにチェックしなくてはならない。
「ミシルさん、ご協力お願いしますね。」
「…ルミリア様って案外…」
「ご協力、お願い出来ますね?」
「喜んで。」
互いにニッコリと微笑みながら、ガシッと握手を交わす。
ミシルはゲームでも現実でも、安定のミシルのようだ。
ヒロインの親友でありながら、行動原理は好奇心。
そのネタはどっから仕入れてきた⁉︎と突っ込みたくなる攻略対象者のプロフィールや裏話。
この隠しきれない…隠す気がない?腹黒さが、私は結構好きだった。
純真無垢過ぎるヒロインには、このくらいしたたかな友人が必要だ。
けど、ミシルのこの笑顔…。
「ルミリア様って案外、エゴイストなんですね。」と続いたに違いない。
まぁ「素敵な恋を見つけましょう」なんて、普通に考えたら余計なお世話だと思う。
トゥルーエンドという素晴らしい未来を知っているからって、導こうなんてエゴ以外の何者でもない。
(そうだとしても、私はフィオナちゃんに幸せになってもらいたい。)
「フィオナに対する騎士様達の愛情度は、現時点では横ばい。ミスティアナ様については、完全に友情度ですね。」
「ミシルさん…あなた驚くほど優秀な方ですわね。」
「まぁ、親友には幸せになってもらいたいですから。それに私…ルミリア様にも興味津々ですし。…ふふっ」
細められた瞳が楽し気にこちらを見つめる。
全て暴いてみたい…そんな好奇心の気配に、私は背筋を震わせながらも微笑みを返し、早々に退散した。
「もう!ミシル、ルミリア様に対して不敬だわ!」
「ふふっ、つい…ね。」
パタパタと小走りでルミリア様を追いかける親友の背を見送り、手にした手帳をパラパラと開く。
「二人で素敵な恋を見つけましょう…なんて、正気かしら。『ルミリア・ランフォート』、フェリス王国の三大貴族の筆頭、妖精王に愛されし一族、ランフォート家長女。長い海外留学からの突然の帰国。異例の2年生からの編入。容姿端麗、頭脳明晰な上、強大な魔力に緻密なコントロール能力。社交界ではたった数回の出席にもかかわらず、模範とされる程の優雅さと、非の打ち所がない振る舞い。…貴族令嬢の鏡とされる完璧な存在。」
だが、それでも深窓の令嬢と呼ばれているうちは良かった。
「ルミリア・ランフォート嬢は高嶺の花」
まさに雲の上の存在だったから。
しかし、今はどうだ?
貴族階級による権力を振りかざす事もなく、誰に対しても平等に優しく、親しみやすい笑顔を見せる彼女は、今や全生徒の憧れと言っても過言ではない。
「素敵な恋への最大の障害が隣人だなんて、フィオナも災難ね。」
パタンと閉じた手帳をしまい、教室に戻るべく席を立つ。
「えぇ、ご希望通りに協力いたしますよ。フィオナの想いが成就するように。」
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