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mission4.出会いを大切にしよう。

更新遅くなりました!



少年が落ち着いてきた頃、少年に集中していた私の耳に、変な雄叫び?が聞こえてきた。


「うぉおおお!ティターニア様の降臨だ‼︎」


「なんと慈愛に満ちたお方だ‼︎女神様に違いない‼︎」


「うぉおおお!奇跡だ!俺たちは今奇跡を見たぞ‼︎」


いやいや、うぉおおおって…


「女神のもたらした奇跡…か。」


「イグニス⁉︎あれは奇跡なんかじゃなくて、」


「分かっているさ。蹄が当たる直前、何かが力を霧散させたのが分かった。貴女の魔法なのだろう?」


「しょうがないよ。一般市民には奇跡にしか見えないからね。手でも振ってあげたら?女神様。」


「ギルベルト…貴方今物凄く怒ってるわね。」


「もちろん。怒ってないわけないよね?イグニス。」


「もちろんだ。」


え、笑顔で怒られるって本当に嫌だ…

そりゃ危なく見えたかもしれないけど、緊急だったんだし、あれが一番手っ取り早くて自然に見える方法だったんだから許して欲しい。


「お前ら!姉ちゃんを泣かせたら許さないぞ‼︎」


「ははっ、もう泣き止んだか?坊や。」


「坊やじゃない!俺の名前はリーヤだっ‼︎」


「リーヤ、素敵な名前ね。私の名前はルミリア。彼らは私を泣かそうとしてるわけじゃないから大丈夫よ。ありがとう、小さな騎士さん。」


チュッと額にキスすると、リーヤは真っ赤になって私を見つめた。

どうやら幼くても、ちゃんと男の子らしい。


「リーヤ?」


「ルミ…リア…ルミリア…」


「命の恩人を呼び捨てるなど無礼だぞ!」


「ルミリア‼︎すっげぇ綺麗な名前だな!姉ちゃんにピッタリだ!」


「ふふっ、ありがとう。」


「…決めた。俺、大人になったらルミリア姉ちゃんと結婚する‼︎」


「な、なに⁉︎小僧、なにを馬鹿な‼︎」


「ははは…とんだマセガキだね〜…」


「俺はガキでも小僧でもない‼︎ルミリア、俺約束するよ!これからは命を大切にする!父ちゃんと兄ちゃんも大事にする!強い男になる!だから俺と結婚してよ!」


なんて真っ直ぐで純粋な瞳だろう。


「…思わずときめいてしまったわ…」


「「ルミリア‼︎」」


「兄ちゃん達は邪魔するなよな‼︎」


「あはは、邪魔するまでもないよ。…それより、いつまでうちの(俺の)お姫様にくっ付いてるつもりかな?」


「別にいいだろ‼︎な、ルミリア!」


う〜ん、仮にもプロポーズされた相手に抱きつかれたままなのはどうだろう。

しかも命の恩人を呼び捨て。

しかし…さっきリーヤは「父ちゃんと兄ちゃんも大事にする」と言っていた。

ならお母さんは?

もしかしたら、リーヤには母親がいないのかもしれない。


(まだ幼いのに…それはどんなに寂しい事だろう…)


前世も今生も、私は家族に恵まれている。

優しい両親は沢山の愛情を惜しみなく注いでくれた。


「…もちろん構わないわ。」


ぎゅっと頭を抱き締めてやると、胸に顔を埋めたリーヤが嬉しそうに笑った。


「でも、プロポーズを受ける事は出来ないの。ごめんなさい。」


「なんで⁉︎俺がまだガキだから?」


「違うわ。私が責任ある貴族の娘だからよ。」


「ルミリアは貴族なの?」


「えぇ。だから私の結婚は、国や領民の利益になるものでなければならない。それが私の義務なの。」


「義務ってなんだよ!俺まだ難しい事分かんねぇけど、姉ちゃんさっき言っただろ?『幸せにならなくてはいけない。』って!姉ちゃんは義務で結婚して幸せになれるのか?」


子供は本当に素直で純粋だ。

だからこそ、嘘を返すことは出来ない。


「領民の幸せは私の幸せ。それは間違いないわ。だから良い縁談があれば、お受けするでしょうね。でも、恋愛結婚を諦めているわけじゃないのよ。」


リーヤの髪を撫でながら、真っ直ぐな瞳を見つめる。


「私の両親は恋愛結婚だけど、どんな政略結婚より有意義な縁談だったわ。それにね、約束は出来ないけど、将来、素敵に成長したあなたと恋に落ちるかもしれない。でもリーヤに好きな女の子が出来るかもしれないし、私が誰かを好きになる可能性もある。色々な可能性がある以上、責任ある貴族の娘として、簡単に口約束など出来ないわ。分かる?」


「…うん。」


「…ごめんね。でも、プロポーズ嬉しかったわ。ありがとう。」


泣きそうな顔で頷くリーヤを強く抱き締める。


「リーヤ、お前なにやってんだ?」


不意に聞こえてきた背後からの声に、私より先にリーヤが反応して声を上げた。


「兄ちゃん‼︎」


見上げた先に居たのは、浅黒く焼けた肌に、精悍な顔立ちのマッチョ系イケメンだった。


(か、カッコイイ…)


【フェア恋】は攻略対象者が騎士のゲームだが、体格的にはみんな細めだ。

元々この制作会社は王子様系ゲームが多く、マッチョキャラはモブくらいなもの。

【フェア恋】ファンの傾向的にも、マッチョ需要はなかったらしい。


が、しかし!ありとあらゆるジャンルを網羅してきた私的には、マッチョキャラも大好物!

一時期ハマっていたストリートファイト系アクションゲームは、全キャライケメンの上に細マッチョからゴリマッチョまでを取り揃えたマッチョ好き女子にはたまらない一作だった。


(ひゃ〜…本当にカッコイイ。前にやった海賊の乙女ゲームに似たキャラがいたなぁ…)


短い灰色の髪に、少し上がった切長の眼。

全身に隆起する厚い筋肉は、騎士達とは違うワイルドさを漂わせ、年上ならではの色気も感じる。


けど必死に事情を説明するリーヤに向ける眼差しも、頭を撫でる大きく逞しい手も優しい。


(素敵なお兄さんなんだね。)


リーヤの全身から兄に対する好意と尊敬が伝わって…


「馬鹿野郎がっ‼︎」


「イッテェ‼︎な、何すんだよ兄ちゃん‼︎」


「この姉ちゃんの言う通りだ‼︎自分の命を大事に出来ねぇ奴が、求婚なんざ十年早ぇ!」


拳骨に涙ぐみながらも、反論出来ないリーヤは素直に頷いていた。

そこには兄への信頼が見えて、きっとお兄さんはとても立派な方なんだと思う。


「お嬢さん、愚弟が世話になった。ありがとう。俺の名はジェイド。海運業をしているもんだ。」


「初めまして、ジェイドさん。私はルミリアと申します。リーヤさんを助けられたのは、ティターニア様のご加護です。私にお礼の必要はありません。気になさらないでください。」


「お嬢さんは貴族なんだろ?しかも愚弟の命の恩人だ。敬語なんてやめてくれ。」


ジェイドさんこそ、私が貴族と分かっていても口調が変わらない。

そんな彼に親しみやすさを感じて微笑むと、ジェイドさんの瞳が僅かに大きくなった。


「どうかしましたか?」


「…いや、リーヤもなかなかやるなと思ってな。」


「?」


「こんな美人に求婚するとは、我が弟ながら審美眼がある。」


「なっ、」


「ははっ、真っ赤になると可愛いな。思わず俺まで求婚しちまいそうだ。」


綺麗とか、可愛いとか、そんな免疫のない言葉を並べられ、多分耳まで真っ赤になっている。


だってしょうがないじゃない‼︎

こんなセリフは普通2次元限定なんだよ⁈

リアルでイケメンから言われるなんて、普通にないからね⁉︎

能力はチートでも、恋愛スキル1だから‼︎

突然のヤンデレとか天然タラシとか、この世界怖い‼︎


「それいい‼︎兄ちゃんと結婚したら、ルミリアが

本当の姉ちゃんになるんだろ⁉︎」


「まぁそうなるな。」


ニッと笑いあう兄弟に絶句していると、ふと黒い影が視界を塞ぐ。


「ならん‼︎」

「ならないよ。」


「イグニス、ギルベルト?」


「ルミリア嬢には騎士が二人もついてるからね。君達が付け入る隙はないよ。」


「ルミリア、ここには探していたものはなかったのだろ?ならば戻るぞ。フィオナ達も心配している。」


フィオナ達の方を見ると、泣きそうな顔でこちらに走ってくるのが見える。


「そうね。ではジェイドさん、リーヤ、私達は…


「お嬢さんは何か探し物をしてるのか?」


「え?えぇ、実は干して燻製された魚を探していたの。でもこの国では見たことがないって魚屋の方が言ってたから…」


「干して燻製に?そりゃ…こんな感じか?」


さっきジェイドさんが担いでいた箱の中から、茶褐色の塊が引っ張り出される。


「そ、それは鰹節⁉︎でもこの国に鰹節は存在しないって魚屋の方々が…」


「かつ…ブシ?これは俺が作ったもんだ。今度の長旅に長持ちする食い物が欲しくてな。試作品だが、なかなかの香りだろ?」


よく見ると、それは鰹節ではなく生節で、鰹の旨味が香りとなって鼻孔をくすぐる。


(これで出汁を取ったら、絶対美味しいお味噌汁と肉じゃがが出来るわ‼︎)


欲しい‼︎

喉から手が出るほど欲しい‼︎


「ジェイドさん‼︎是非一本お譲り下さい!」


「あんたは弟の命の恩人だ。これくらいかまわねぇが、まだ試作品で商品じゃねぇし、味の保証はできないぜ?」


「構いません!むしろ商品化に協力させて下さい!」


安定供給が出来れば、これから先の和食ライフも夢じゃない!

一般の市場に広まれば、和食のお店なんかも出来るかもしれない!


「私はルミリア・ランフォートと申します。是非生節の量産化に投資させていただきたいのです。」


「ランフォート⁉︎なんでまた貴族のトップがこんな燻製を…」


「ランフォート家ではなく、私個人のお願いです。ジェイドさん、貴方の生節は私にとってどんな宝石より価値あるもの。私の夢見る生活の必需品なんです。だからどうしても完成させたいのです‼︎」


思わず大きくて硬い手を両手でぎゅっと掴み、ジェイドさんを見上げる。


「…なんだか熱烈なプロポーズを受けてる気分だな。」


「お前の味噌汁を毎日飲みたい。なんてプロポーズが存在するくらいですから、近からずも遠からず…いやいや、違います。プロポーズではなく、ビジネスです。」


「はは、残念。だが、お嬢さんの頼みなら喜んでお受けしよう。俺も作ってみたはいいが、扱いはこれからだったからな。」


「なら和食を作った時は、ジェイドさんとリーヤにも持ってきます。一緒に開発していきましょう!」


半ば強引に本物の鰹節作りに手を出してしまう事になったが…うん、これは乙ゲー特有のご都合展開に違いない。


(ああ、妖精王様、感謝致します!)


今日はとても有意義で楽しい1日になった。

前世からの願いを叶えたい…なんて思いつきだったけど、お友達と放課後に町へ出て買い物をしたり、買い食いしたり。

新しい出会いもあった。

欲しい物は手に入ったし、嬉しい事ばかりだ。


(あとはコルネット商会に美容液を買いに行くだけね。楽しみだわ!)




人間…楽しい時や舞い上がっている時は、気付かないものだ。

背後から忍び寄る不穏な気配には。


それは、人間である私も同じだったらしい。


未だにティターニア様!女神様!と叫ぶ声がやまない中で、確かに、ハッキリと、名前を呼ばれるまでは気付けなかった。


「…ルミリア…」


「っ…な、何故…ここに…」


気付いた時にはもう遅い。


私の視界は闇に覆われた。










6/5





















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