第三話 小さな町のプチ伝説
裸足登校のうち四日を消化し、土、日を挟んで明日の月曜日が最終日となる。
しろとくろは連れ立って街へと遊びに来ていた。
普段ゲームばかりしているがやはり女子高生。当然ファッションにも興味がある。まずは服屋へと寄り服を見たり、マネキンの着こなしを参考にしたり。
靴下コーナーへと来た時には、
「あ…学校用の靴下…」とくろが言うと、「いらないよね?」としろにあっさり却下されてしまう。
結局何も買わずに店を出ると二人はゲームセンターへと向かった。
ここには最近では少なくなってきた乱入台が設置されていて、くろは格闘ゲームの台に着きしろは後ろで見守っている。
「今日こそは誰か来てくれるかしら」
CPUをボコしながら対戦相手を待つくろに、しろはゲームセンターを見回しながら、
「今日はお客さん多いし誰か来るかもね〜」
オンライン対戦が盛んな昨今、ゲームセンターでの対戦が実現する機会が減りくろは少し物足りなさを感じている。
世界中の人と対戦するのも良いが、地元でしか知られない知る人ぞ知る猛者との勝負をしてみたい。そんな事を幼少の頃より想い続けていた。
「まあ、そんな強い人都合よく居るわけないけどね…っと」
あっさりとCPUを全て倒し席を立とうとした時、しろが肩をちょんちょんと突いてきた。
「ねね! 向かい側に誰か座ったよ!」
「え! 本当⁉︎ よ〜し! いいとこ見せちゃうわよ!」
くろは肩を回して気合いを入れて画面に向かい、しろはそんなくろの足元を見て、
「あ…今日は靴だった…」
ボソっと残念そうに呟いてから対戦を見守り始める。
次々とコンボを決めるくろになす術の無い対戦相手。しろは一方的なその試合を見て改めてくろの実力に驚くと共に、疑問が芽生えた。
「こんなに上手なのに、なんであたしとゲームすると負けるの? もしかして手加減してくれてる?」
「そんな訳ないでしょ! 私はいつでも全力よ!…よし! これで決める!」
くろの超必殺が炸裂しあっさりと勝負は決した。あまりの実力差に敵わない事を悟った対戦相手はこの一戦で席を離れたが、しかしその戦い振りに刺激されたか他の客が乱入しくろの勝負は続行する。
「いいわね! 燃えてきた!」
「頑張れ! くろちゃん!」
しろの応援にも熱が籠りぴょんぴょん小さく跳びはね、それを背に受け無双するくろ。
盛り上がる女子高生二人に、次第に他の客も引き寄せられて少し腕に自信がある人、女子高生とお近づきになりたいと下心丸出しの不埒者等々が次々とくろに勝負を挑みそして散っていった。
「すごいくろちゃん! 負け無し!」
「いやあ…危ない試合もあったけど何とか持ち堪えたわ。どう? 少しは私の事見直した?」
「うんうん! やっぱりゲーム上手! もう応援しすぎて汗かいちゃったよ!」
そう言うとしろは向かい側の席に着き小銭を入れて乱入。
「そんなくろちゃんに大サービス! ここであたしに勝ったら今までの分全部返してあげちゃう!」
「本当⁉︎ それは…負ける訳にはいかないわね…!」
唇をぺろりと舐め集中するくろ。見物客も二人の勝負を固唾を呑んで見守る。
そして…当然のようにあっさりと負けてしまうくろであった…
この試合を見た客は興奮冷めやらぬ様子で語る。
『黒髪の子はそれまでの対戦相手同様の戦い方をしていたんだ。白髪の子はそれを感覚で避けて翻弄しているようだった…あの試合…まさに伝説級だったよ…!』
しろとくろは二人の知らない所で地元でしか知られない、知る人ぞ知るプチ伝説として語り草になる。
そして対戦台から離れた二人はクレーンゲームへと移動し、
「ね! くろちゃん! これテン! テンのぬいぐるみ!」
「あ! シマエナガのぬいぐるみもあるわ!」
「取ってくれたら〜…月曜日あたしも裸足登校に付き合ってあげる!」
「それは…取る以外の選択肢は無いわね!」
お互い好きな動物のぬいぐるみを見つけてどちらもゲットし、お互いの好きな動物とは逆のぬいぐるみに交換して嬉しそうにもふもふするしろ。
「この鳥さん、ノワールちゃんにしよっと」
「じゃあ私はこの子の名前ブランシュにしとくわ」
くろもぬいぐるみを見つめながら、しろの裸足登校をもぎ取った喜びを噛み締め二人はゲームセンターを後にした。




