電話
着替えを済ませ、今に戻る。そういえばまだストーブを付けてなかったことに気づき、ツマミを回す。チッチッチッチッと音は鳴るが一向に火が付かない。「んん?」と見渡してみると、油が切れていた。「はぁ」と、また大きなため息を一つつき、缶を持って玄関に向かう。軍手をはめて慎重に蓋を開け、灯油ポンプの先を入れる。シュポシュポとポンプを押し、灯油が流れる様をぼぉっと眺めていた。また蓋を閉めていると、すりガラスの向こうが少し明るいことに気づいた。戸をガラガラと開けてみると、ブワッと冷気がかかる。なるほど、寒いはずである。軒先まですっかり雪が積もっていた。
「明日、学校行けるかなぁ」と思いながら居間に戻ろうとすると、ジリリリッと電話が鳴った。電話に出ると、聞き慣れない少女の声が聞こえた。どうやら弟に用事があるらしい。「ちょっと待ってね。」と言って、大声で弟に「電話ー!」と呼ぶが反応が薄い。そこで、先ほど聞いた少女の名を付け加えると、ドタドタと慌ててこちらに向かう足音が聞こえた。「電話は?」「そこ」と短いやり取りのあと、弟に引き継ぐ。まったく、灯油を持っているんだから、少しは気を付けてほしいものである。「うん、うん、うん、え?あぁ、姉ちゃん。うん、うん、分かった。ありがと。」ほとんど相づちしか打たない弟の反応を気にしつつ、その様子を眺め、電話を終えた弟に「彼女?」と聞くと、「ううん。連絡網。明日休みだって。」と、返ってきた。「そっか。で、次は?」と聞くと、側にある紙を見て名前を出す。そちらの名はよく聞く名前だった。うちによく遊びに来る子だ。弟は慣れた様子でダイヤルを回し、引き継ぎを頼んでいた。また居間に戻る時、後ろで弟が明日遊びに行く約束をしているのが聞こえた。学校が休みなのは雪が原因だろうに……。




